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しろ組短編集  作者: しろ組
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ハットトリック?

「歯下駄選手、見事なハットトリックでしたね〜。優勝、おめでとうございます!」と、女性アナウンサーが、マイクを向けた。

「ええ、まあ…」と、歯下駄は、右を見やり、後ろ手にしながら、どや顔で頷いた。満更でもないからだ。

「あの五〇メートルからのゴールは、芸術的でしたね」と、女性アナウンサーが、絶賛した。

「いやぁ〜。自分も、あれが決まるとは、思っていませんでしたよ」と、歯下駄は、右手で、後頭部を掻いた。人生一度切りのまぐれかも知れないからだ。

「謙遜しないで下さいよ。最年少でも、今日の主役は、あなたなんですからね」と、女性アナウンサーが、ウインクした。

 その瞬間、「デヘヘ〜」と、歯下駄は、顔を赤くして、鼻を伸ばした。そして、「僕から、ちょっとした手品を披露したいと思いますが、宜しいでしょうか?」と、申し出た。

「ええ。今日の主役は、歯下駄選手ですから、構いません」と、女性アナウンサーが、快諾した。

「じゃあ、帽子の手品を一つ…」と、歯下駄は、口元を綻ばせるなり、シルクハットを持つ左手を前へ出した。ようやく、お披露目の時が来たからだ。そして、「ひい、ひゅう、みっ! (いた)っ!」と、舌を噛んだ。

 次の瞬間、シルクハットの中から、一羽のキジ鳩が飛び出すなり、瞬く間に、何処(いずこ)かへ飛び去った。

「歯下駄選手…。今のは、鳩の手品で、鳩トリックでしょうか?」と、女性アナウンサーが、場を取り繕った。

「は、はい…」と、歯下駄は、項垂れたままで、返事をした。ここ一番で、失敗(やらか)してしまったからだ。

「これで、全日本ゲートボール優勝MVPの歯下駄選手のインタビュー中継を終わります」と、女性アナウンサーが、締めくくるのだった。

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