# 029
「それはそれとして……」
脱線しかけた話を戻そうと俺はひとまずシーナの顔を見つめ直す。
「この先はどうなっていた?」
この質問にシーナは思い出したように目を見開いて少々決まりが悪そうに答える
「はい、この先に村があるにはありました」
「おぉ!さすがシーナだな」
「ただ……」
シーナが決まり悪そうに目を伏せたため俺は少々不安になりシーナの顔を覗き込む。
「……ただ?」
→ → → → →
「む、これは確かに集落といえば集落なんだろうが……」
俺たち一行はシーナの案内により集落が見える藪の中へとやってきていた。
「盗賊村……てわけか」
集落には男ばかり。そして出入りしている男たちは机にふろしきのようにボロ布を広げ、そこに奪ってきたと思われる金目の物などをガチャガチャと乱暴に放り出していた。
「どうする?」
「いや、どうするもなにも……」
花の問い掛けに俺は手を振って返答する。
「こっちはケガだってしてるのに戦えるわけないだろ。撤退だよ撤退」
「なるほどねぇ~」
そうニヤニヤしながら軽く答える花だが本当にわかっているのだろうか不安である。
「ひとまずここをやり過ごすぞ」
「オッケー」
「わかりました」
ひとまず小声でそのように相談をして身をかがめてその場を離れようとしたその時だった。
「やぁ、ちょっといいかね」
なんと先ほどのキハールという男が突如その集落の中の盗賊たちの前に堂々と姿を現したのである。
盗賊たちのうちの数人などはキハールに対し凄みながら近寄ってきていた。
「ちょっとこのあたりを通りがかったもので補給がてら立ち寄ったのだ。あぁ、それとそこの藪の中に怪我をした仲間がいてね。助けてもらいたいんだが……」
(あ、あのおっさん余計なことを……!?)
キハールの発言に盗賊たちが今度はこちらに注意を向け、そのうちの数人がこちらにやってきた。
「ど、どうしましょうか聖さん!撃ちますか!?」
こちらにやってくる盗賊たちに銃を向けようか迷っているシーナに対し俺は首を横に振った。
「いや、どうせ逃げ切れないし余計な抵抗はやめよう……」
なにせこちらは俺がほぼ瀕死寸前の状態なのだ。となるとあとの戦闘要員はシーナ一人であるがこの状況を一人で打開しろというのも酷な話であろう。
「お前らか」
そういって盗賊の一人が俺の肩を掴んで立たせる。
残りの盗賊たちもほかの花、シーナ、メリルに出てくるよう促したため全員従順に出てくる。
「ほほう、こいつらか……」
盗賊たちは何やら品定めするかのように俺達一行を眺めていたが、奥から痩せこけた背の小さい男が出てくる。
「はいはい、どいてねー。どこかなそのけが人っていうのは……?」
なんだか盗賊にはおおよそ向かなさそうなひょろっとした体型のその男は俺の前にやってくると、俺の体のいたるところをベタベタと触り始めた。
手の届かない場所などは仲間を足場にして俺の体を診察したその男。
「うーん、随分打ち付けてるね。ひとまず打撲用の薬草、それに包帯だ。それでいいね?キハール」
「あぁ、頼むよ」
そう親しげにキハールの名を呼ぶとさっさと去っていくそのひょろい男。
かと思うと今度は先程まで凄んでいた盗賊たちがその表情を全く崩さずにキハールの肩を軽く殴りつつ、
「おうよキハール。久しぶりじゃねぇか」
「一体どうしたってんだぁ?」
などと親しげに声をかけている。
俺は何が起こっているのか理解できず、
「き、キハール?これは一体……?」
とキハールに状況説明を求めた。
「あぁ、失敬失敬。この男たちはまぁ古い知り合いでな。今もお互いこのように助け合う仲よ」
「盗賊が知り合い……?」
「ただの盗賊ではないぞ?」
俺の問いかけに対しキハールの声ではない低い声があたりに響いた。
それに伴い俺たちは反射的に声のした方を見たのだが、なぜかそこには誰もいなかった。
「こちらだよ」
っと今度は真後ろから声が聞こえたため全員ビクッとして振り返る形となる。
「やぁ、俺の名はギーシュ。この盗賊団の頭目だ」
「ぎ、ギーシュ……」
太い声に反して小柄な体。
髪は銀髪だが、それをフードで隠し、また顔の下半分もマフラー、いやボロ布のような布切れで隠している。
服装は軽装ながら靴は革のブーツであった。
いや、それよりも気になっているのが先程からギーシュが視界に入った途端に俺のメガネがその男のパラメータを赤く表示していることだ。
そしてよく見ると、赤く表示しているパラメータの上に『懸賞金:300デナリ(レギオン、クリルタイ)』と出ているのだ。
(もしかしてこれってこの男の首に懸賞金がかかっているってことなのか……?)
どうやらこのように懸賞金がかかっている人物のパラメータは赤く表示されるということに気づく。
にしてもどこまで行っても初見に優しくないゲームである。
「俺の名はギーシュ。ここはレギオンから逃げ出してきた逃亡奴隷らを救済する目的で作った盗賊団の集落だ。キハールとは俺が古い友人なんだ」
っと、そこまで話したときギーシュは俺たちの一番最後列に立っていた花の存在に気づいた。
「お前……その格好は?」
「?」
そういって花に詰め寄るギーシュ。それを見て俺は気づいた。
(あぁそうか!花はまだ奴隷商の格好のまんまだから、そんなやつが逃亡奴隷のキャンプなんかにきたら……)
だがそう気づいたときはもう遅い、ギーシュは既に凄みを聞かせた表情で花の目の前へとやってきていたのだ。




