# 028
「ぐあぁ!」
それから数分戦ってようやく2人目の敵を手に入れた木棒で倒し終える。
が、カスダメも積もれば大ダメージとなり得るものですでにダメージは半分を切った400となっていた。
(これからスーデルの復権派の中核として戦わないといけない俺等がこんな山賊どもにここまで削られてちゃ世話ないな……)
あえて長期戦になったことによる戦果としてはひとまず相手の人数を完全に把握できたというのがひとつあるかもしれない。
今現在俺が倒した1人を合わせて倒したのは2人。そして今俺と戦っているのが7人だ。
後ろではメリルと花がなんとか山賊の1人と必死で戦っているが苦しそうだ。
だが、ここでさらに状況が悪化する。俺と対峙していたうちの1人がまたしても花たちの方へと行ったのだ。
俺はそいつを行かせまいと行く手を遮ろうとするのだが、そうするとほかの6人が攻勢になるため助けに行けない。
「くそっ!花ちゃんたちの方にまた1人いった!」
「えぇーマジで!?」
もはや万事休す。1人の相手ですら手間取っている花たちがこれ以上持ちこたえられるわけも無く俺のHPも残り300を切ったところで倒されてしまうのかと思った時だ。
突如俺の背後で風を切る音と、同時に
「ぐあぁ……!」
といううめき声が聞こえる。
ついに花がやられてしまったのかという懸念とともに振り向くとなんと山賊のうちのひとりが血だらけになってもがいていたのだ。
右腕の二の腕のあたりには矢が刺さっている。
「……な、なんだこれ?」
っと、驚く暇もなくまたしても風を切る音とともに今度は俺と戦っていた方の6人のうちの1人の背中に矢が刺さり、やはりうつぶせに倒れた。
浮き足立つ山賊たちだが、山賊らをさらに困惑させる音が聞こえる。
パカッ、パカッという馬の乾いた足音である。
しばらくまるで近づいてくるかのように馬の足音は大きく鳴り響いていたが、突如山賊たちの背後から姿を現す。
それと同時に馬上の男がグラディウスのような短いサーベルのようなもので山賊の1人を切り払う。
だが、山賊もなかなか諦めが悪く、その馬上の男の剣を持っている逆の方から襲いかかろうとしたが、今度はその男の左のホルスターに指してあった拳銃が火を噴いてやはり倒れる。
この音に完全にパニックになった山賊集団。
一斉に蜘蛛の子を散らすように森の中へと消えていった。
「ふっ……やはりこの武器は使いにくいものだな」
そう言ってまだ煙が立っている拳銃……。手持ち式のマスケット銃のような重厚な銃を眺めながらそのように独り言を言うその男性。
年齢は初老……に近い年齢。50歳ほどであろうか?髪の毛、特に鬢のあたりはほぼ真っ白な白髪。それに立派な、だがよく整えられた口ひげは確かに老練な戦士を思わせるものだが、だが50ほどの男がこのように馬に乗り次々と山賊をなぎ倒していけるものなのだろうか。
そしてその服装はイメージ的には中世、いや近世のヨーロッパスタイルというイメージで前に映画やドラマで見る三銃士に登場する銃士服に近い服装で革ジャンに大きいグローブ、そして足もやはり革製のブーツだ。前述のように左にホルスターがあり、そこに拳銃型のマスケット銃も差されていて利き手であろう右にはグラディウスに近いサーベルも装備している。
「あ、あの!」
まるでこちらに気づかないかのように何事もなく銃や剣の点検に勤しみ始めるその銃士服の男に俺は忘れられてないかと心配になり声をかけると、その男性は口ひげをこちらに向ける。
「助けてもらってすいません。助かりました」
「……あぁ。まぁあまり気になされるな。少々狩りをしただけのこと」
「あなたは……」
「私の名はキハール。ただのしがない貴族くずれよ」
キハールと名乗るその男は馬を降りる。
「ところであなた方は見たところ……奴隷の子供に奴隷商。それにそちらは……狩人にしては随分戦闘慣れしておらぬようですな」
「あぁ、えっと俺たちはなんていうか……」
どう自己紹介をしたものかと悩んでいるとメリルがすかさず前に出てきた。
「こちらは僕のパパとママです!俺はメリルっていいます」
そう言って胸を張るメリル。
それを見て訂正するどころかくすくすと笑う花に俺は突っ込む気すら起きなかった。
「……ふむ。つまり家族でお出かけというわけかな?このような郊外の山奥を」
「ま、まぁ……」
キハールの切れ長な目に俺はまるで職務質問でも受けているかのように緊張してしまうが、キハールは次の瞬間には破顔して笑顔を見せる。
「旅行好きなのは結構ですが、山奥は山賊も多い。用心しなければなりませんぞ?」
とアドバイスまで頂いて俺が「あ、ありがとうございます」と返事をすると、またしてもあたりの草薮からがさがさと音がして、俺は一体今度は何かと思い身構える。
が、草陰から顔をのぞかせたのは先程先行していたシーナのあどけない顔だった。
「なんだか先程銃声とか聞こえたんですけど大丈夫でした!?」
そう言ってからシーナは今度は全身を藪の中から現し、そばにたっているキハールに見向きもせず俺のもとにまっすぐ駆け寄ってきて俺の顔をぐいっと両腕で引っ張る。
「大丈夫ですか聖さん!怪我とかないですか!?」
「あ、ありがとうシーナちゃん。でも大丈夫だから……」
「!?これ大丈夫じゃないですよ!なんだか体中アザだらけでぼこぼこですし、あぁーここなんか切り傷になってるじゃないですか!一体何があったんですか!?」
「ね、ねぇシーちゃん!お姉ちゃんは?お姉ちゃんもほら、さっき戦ってこことかちょっと打ち身になっちゃったんだけど!」
俺の体中をこれでもかというほどにベタベタと触りまくって怪我の具合を確認するシーナ。そのシーナに手の甲についた小さい傷をシーナになんとか差し出す花。
その様子をキハールは見ていて、
「……あなた方。本当にどういう集まりなのだ?」
ともう一度尋ねるのであった。




