# 025
アインの街を逃げ出して近くの茂みへと逃げ込んできた俺とシーナと花に奴隷の少年を加えた4人。
シーナによる傷の手当ても終わり一時は200を切って100前後になっていたHPもようやく600まで回復し、一安心する俺たち。
「ふぅ、ひとまずこれで大丈夫ですね」
「はぁ……しっかしあいつ強かったなぁ。スキピオとか呼ばれてたけど」
「スーデルのカッタス?とかってのはもっと強いのかな」
「大丈夫ですよ。結局今回もみんなで力を合わせてあんなに強そうなふたりを追い返したじゃないですか!」
と、初めての戦闘に興奮をしている俺たち3人。その俺達をその奴隷の少年がじっと見ていた。
「あ、あの……!」
ずっと見ていたかと思ったら突如大きい声を出す奴隷の少年に一同は自然と視線が向いた。
「その、みなさんがいなかったら僕…………。本当にありがとうございます」
そう言って地に額を擦りつけない勢いで平伏する少年。
その勢いに俺たちは面食らい、慌てて頭を上げさせる。
「ちょっ!やめてくれよ。別にそこまでかしこまらなくても……」
「いえ!だって、みんな僕のせいでレギオンから追われて……。大怪我までして」
「ま、まぁまぁ」
そう言って俺はその子の方に手を当てる。
「男なら多少の怪我は勲章みたいなもんだよ。それより君は大丈夫だった?」
「は、はい!」
少年はそう言って元気よく答える。子供は元気が一番だ。
「ぼ、僕はえっとメリルって。親は戦争で、で歩いてたら奴隷になって……」
「そっか、それはとても大変だったね」
そう言ってメリルの横に座って頭を撫でるシーナ。
シーナも非常に小柄な少女であるがその少年はそれ以上に小さく、小学低学年ほどではないかというほどの背丈だった。だがハキハキと良く喋る様は最低でも小学高学年程はあるように見える。髪の色は茶色で
栄養が足りてないせいで背が低いのだろうかと俺が勝手に推測しているとメリルが頭をまたしても深々と下げ頼み込むようなポーズになる。
「お願いです、僕も一緒に連れて行ってください?」
この提案に俺も花もシーナも驚く。
「僕、自由になったはいいけど行く場所もないし、アインの街には戻れないし……。家で家事をよく手伝ってたので料理とか作れます!足でまといにならないから……!」
「すごい!まだこんなちっちゃいのに料理とか作れるの!?それなら……」
そういって軽々しく返事をしようとする花を俺は手で制し、先ほどのシーナの真似をしてかがみ込み、メリルの目を見る。
すると俺の真剣な顔にメリルの方も驚いたのか目を見開くが目をそらすことはしなかった。
「メリル?ちょっと真面目に話を聞いてもらってもいいか?」
「は、はい……」
「俺たちは別にプロの冒険家でもなければベテランの戦闘集団とかでもない。さっきは確かにあのレギオンの軍人連中を追い払うことはできたけどあれはシーナがうまく相手に当ててくれただけでいつもあんなにうまくいくとは限らない」
「はい……」
「それにこの先俺たちと旅に出れば危険な目に遭うかもしれないがまぁそういうことだから俺たちはメリルを絶対に守るって保証もできない」
「はい……」
「だけどもしそれでもメリルが付いてきたいって言うなら俺は君を止める気はない」
「え?」
どうやら断られると思っていたのかメリルの顔が明るくなる。
「それでも行くか?」
「はい!」
そう言ったとたん俺に抱きついてくるメリル。
気丈に振舞ってはいつつもやはりまだ年齢的には甘えたいさかりなのだなと思いつつあえて引き離さずにいるとメリルが突如耳元で信じられない言葉を発した。
「あ、ありがとうパパ……」
「え!?」
突然の信じられない言葉に俺も、そしてシーナも花も(花はどちらかというと面白そうな笑みをだが)驚きを隠せなかった。
「め、メリル。ぱ、パパっていうのは……?」
「あ、すいません。僕実は親を亡くしてずっと家族いなくてつい……」
となかなか強烈な言葉とともに上目遣いでこちらを見てくるメリルだったが次の言葉が殺し文句の本命であった。
「だ、ダメでしょうか……?」
「だ、だ……」
もはや尋ねられる体ではあったもののもはや答えは一択であった。
「だ、ダメなわけないだろ!あはは……」
「やったー!!」
そう言って改めて俺に抱きついてくるメリル。もうどうにでもなれと思っていたが、メリルは何やら今度はニヤニヤ笑っている花の方を見つめており、今度は花にいそいそ近づく。
「じゃあじゃあこちらは……ママ?」
「あら~」
「なに゛ゅ!」
このメリルの言葉に花はにんまりと笑い、シーナは毛を逆立ててメリルに迫る。
「ちょちょちょちょっとまって!それなら私は!?メリルくんわたしはどう?」
「え?えっと……お姉ちゃん?」
「……」
次の瞬間にはまるでスポットライトが見えるかのようにがっくりと足から崩れ落ちるシーナ。
そのシーナの様子に俺は
「花?なんでシーナはあんなに落ち込んでるんだ?」
と尋ねるが花はこれにまた一瞬驚いた顔をしつつまたしても先ほどの、いや先程以上のニヤケ顔になり、
「さぁ~なんでだろ~」
ととぼけるのであった。




