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サラは夫に関心がない。


それだけ聞くと、紹介や親の決めた結婚だと思われるかもしれない。


しかし、サラと夫であるクロードは恋愛結婚である。

サラと夫のクロードは南の貿易拠点である、宿場町に住んでいる。

二人は大きな高級宿屋の次期跡取り夫妻だ。

跡取り息子のクロードが幼馴染みであるサラを見染めての結婚であった。


クロードは見目も良く二人が住む宿場町でも大層人気がある。

クロードは熱烈にサラを求めた。

サラは同年の男とは知り合いが殆ど居らず、何となくクロードと共にいる内に純潔を散らされ、気が付いたら結婚していたのだ。

しかし、この結婚はサラにとっては既定路線であり、年も近いクロードとの結婚に不満も無かった。

サラは傷物にされた事に対する周囲の人間の同情が気持良かった。

クロードも、サラを宿屋の女主人という立場よりは、壊れ物を扱うように二人の住む屋敷に閉じ込めて満足しているようだった。

そんな歪な二人の関係にサラは酷く酔い痴れていたのだ。


夫のクロードは、サラの歪んだ自己愛を知らないのだろう。

結婚を押し付けたサラがクロードを大事にすればする程、クロードは悲しい顔をする。

しかし、周囲の人間はサラの献身を見て、二人の真実の愛を疑うことはない。


サラが好きなのは、誰かに尽くす自分だけなのだ。










サラの一日はクロードの準備を手伝う事から始まる。

その日クロードが着る服を用意し、クロードの着替えを手伝う。

「今日は、王都から若い貴族の方がうちの宿に泊まるらしい」

クロードはサラに上着を差し出され、着ながら言う。

「そうなの。分かったわ、今日は一日屋敷から出ないようにします」

結婚してからもクロードはサラが若い男性と出会う事を酷く嫌った。

その為、宿屋の女主人がしなければいけない宿の雑事も、賓客を迎える事もサラには一切させなかった。

「そうしてくれるかい?俺だけのサラ。誰にも渡しはしない」

サラはにっこり笑って頷く。

「ええ。私はクロードのものよ」

クロードは苦しげに笑い、サラを抱きしめる。

「行ってくる」

クロードは名残惜しそうにサラに口付けしてから出て行った。











サラはその日午前中、広い庭でお茶をしていた。

この屋敷は全ての職を女性が担っており、男性は主人であるクロードしかいない。

若い庭師の女性二人が会話しているのが聴こえてくる。

「旦那様は少し異常よね」

「あまり悪く言ったら駄目よ。おかげで娘で後継に成り得なかった私たちが家業に携われるんだから」

異常と言った女性は溜め息を吐いて苦笑いする。

「そうね。でも、奥様が可哀想でね。これじゃ籠の鳥じゃない。昔からこの町に住んでる皆知っているわよ。奥様に近づく男が居ないようにして居たって言うんだから」

「愛されてていいじゃない。奥様も旦那様を大事にされているわ。お似合いのご夫婦よ」

女性たちは手際よく作業を進めながら、違いない、と笑い合う。

サラは黙って茶をすする。



ああ、なんて気持ちいいのかしら。





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