9.同類三銃士と金髪銃士☆
Q.「ゲームの対戦相手に送るべき言葉は?」
「おい、クソ兄貴」
「ねぇ、茜くん」
俺は危機に瀕していた。
学校から帰ってきて数時間。リビングでのんびりしていた俺の元へ突貫してきたふゆちゃんとゆきちゃんにより、手足を麻縄で縛られ床に横たえられている。
これはこれで...はっ、違う違う。まずはなんでこんなことになったか聞かないと。まぁ、十中八九あのことだよな...
「なにか...用でしょうか?」
「部活のことだよ!ぶ・か・つ!てかあの人誰?」
「いきなり連れて行かれたかと思ったら部員として登録されたんです。説明くらいしてください」
「痛い!?」
恐る恐る聞いてみたが、案の定ノノに半ば無理矢理入部させられたゲーム同好会の件だった。
身動き取れない俺の腹をグリグリとゆきちゃんが踏みつけ、遮るもののない俺の耳をふゆちゃんが思いっきり引っ張る。
説明するのにさすがにそのままだとあれだからやめてもらって、早速何がどうなってああなったかの説明を俺は始めた。
「えっと、あの台風みたいな女子は龍堂寺 音乃。高校初日の昨日にちょっとしたきっかけで仲良くなって、一緒にゲームして遊んだりしてる。で、仲良くなった友達がもう1人いるんだけど、3人で部活動紹介を見てたらノノが急に部活作ろう!って言い始めて流れであんなことに...」
ひとまず、こんなところか?
友達になったとは言ってもまだそんなに詳しいことは知らないから、説明するとしてもこれぐらいになってしまう。
「...ノノ?」
「呼び捨てなんですね」
「あ、はい」
え、そこ?
「まぁ、シスコンでぼっち予備軍だった茜くんに出来た高校での初女友達です。とやかく言うのはやめましょう。それで、ゲーム同好会でしたっけ?あれは何をすればいいんですか?」
酷い言われようだけど否定出来ないのがまた悲しい。しかもふゆちゃんに悪びれた様子がないのがこれまた...気にしたら負けか。
言葉にしなくても早くしろと目で言っているのが分かる2人の視線に促され、俺は続きを話す。
「ノノが言ってた分には、アナログもしくはデジタルのゲームで遊ぶのがメイン。場合によっては大会も目指したい。部への昇格を目指すために実績を積んで部費を確保したい...とかだったかな」
カードゲームやTRPG、FPS、格ゲー。ゲームとひとくちに言っても数え切れないだけの種類がある。それこそトランプやすごろくのアナログゲーム、パソコンやCS機を使ったデジタルゲーム。
ノノは色んなゲームをやっているらしいが、得意なのはデジタル方面らしい。その理由を聞いたら「え、だって面と向かってゲームしたらなんか負けるんだもん」と言っていた。ポーカーフェイスが苦手で心理的要因のある場合はだいたい負けてしまうみたいだ。
それと、始まりは同好会。部に昇格するには実績が必要になってくる。分かりやすい実績では大会等での入賞だろう。ノノは絶対部に昇格すると言っていたから大会にも出る気があるはず。うちの学校は部に昇格するまで部費が出ないから、早く昇格して部活用のゲームを買うと息巻いていた。
「ふーん、意外と考えてるんだ」
「なるほど。適当じゃないなら別に良いです。中学からやっていたテニスを高校でもやろうかと思ってましたが、他の部活にも興味があったのは確かなのでこのまま入部します」
「じゃあ、私もそうする。冬華以外とペア組む気ないし、特に入りたい部活ないし」
ポッ
「ん?」
ふゆちゃんもゆきちゃんもゲーム同好会に入ることに決めてくれた。良かったとひと安心していたら、俺の持っているスマホにLINEの通知が来た。
誰だ?と思って確認すると今年から地元に帰ってきた幼なじみ、薫からのLINEだった。
『【薫】
アノオンナ、ダレ?』
『【茜】
ん?ノノの事か?昨日仲良くなった友達だよ』
『【薫】
トモダチ...本当に、友達?』
『【茜】
うん』
『【薫】
そっか。なら良いよ。許す。多少の接触も目を瞑る。でも、ずっと友達でいてね?』
『【茜】
まぁ何があるか分からないけど、喧嘩しない限りは問題ないと思う』
『【薫】
なにがあるか分からない!?ダメダメダメダメ!絶対に友達でいて!じゃないとナニスルカワカンナイヨ』
なんで片言なんだよ...と思いながらも薫の質問に答えると、毎回10秒もしないうちに返信が来た。
「え...なんかこわ」
いや、普通に怖い。返信の速さもそうだけど、別に何も悪いことしてないはずなのに何故か許されてるあたりが怖い。しかもレスポンスの速さが最初よりスピードアップしているだと!?
『【薫】
大丈夫、私は怖くないよ。安心して、何もないなら何もしないから』
なんでおれのかんがえてることがわかるの。
「はは、薫は相変わらず俺の考えてる事が手に取るように分かるんだな。さすが俺の幼なじみと言うか恐るべき幼なじみと言うか」
若干引いてるが、薫は昔からこんなやつだったな...と少し懐かしく思いながら俺は苦笑する。
「それは違う」
「それは違いますよ」
「え?」
「それに、多分そろそろ来るんじゃないですか?」
「え?」
ピンポーン
「こんばんわ、あっくん!」
「どうしたんだ?こんな遅くに」
「あー...えっとね、部活のこと直接話したくて!」
リビングから出て玄関へ向かう。鍵を開けて外に出ると、そこにはつい今さっきまでLINEでのやり取りをしていた薫が立っている。
そうだった。薫もふゆちゃん達と同じでいきなり連れていかれたんだ、色々気になってるだろう。
そう思って俺は薫を家に上げる。
ふと、薫の服装に目がいった。
「そうか。って、その格好寒くないのか?」
「急いできたから薄着のままだったや」
「ほら、俺のパーカー貸すから着てろ」
いくら春でもさすがに夜は肌寒い。随分と涼しそうな格好をしていたから俺は自分の着ていたパーカーを脱いでそのまま薫に着させる。
「ふふ、ちょろ」
「なんか言ったか?」
「いや、なんでもないよ。ありがと!」
そのままリビングへ行くと、薫に対して敵意を隠さない2人がこちらを睨んで立っていた。
「ちっ、何しに来たんだよ犯罪者。てか!そのパーカーッ!」
「住居不法侵入は立派な犯罪ですよ?110番しますね」
「あ"?黙ってろよ負け属性共が。てか不法侵入じゃないし。パーカーもあっくんから借りたんだし。家族って時点で負け確のお前らがしゃしゃり出んなよ。こちとらあっくんの高音質録音された『さすが俺の幼なじみ』ってフレーズをASMR化するためにマイクの回収に来てんだ邪魔するな」
「「幼なじみキャラの方が負け属性だって界隈では有名」」
「死ね」
会って1分もしないうちから口撃しあうなんて、なんて仲が良いんだ。嫌よ嫌よも好きのうち。喧嘩するほど仲がいい。まさにこの3人のことだ。
「はは。相変わらず3人は仲良いな」
「は?目ん玉取り出して塩素で洗っとけ」
「茜くん、眼科に行くなら土曜日が都合がいいのでそうしましょうか」
「あっくんが望むなら...嫌だけどこいつらとも仲良くしてあげる」
「「あ"?」」
「お"?」
はは...また喧嘩が始まった。俺は関わらない方が良さそうだな。
俺は静かにソファーへ腰を沈め、PUBCを起動する。アバターはノノが作ってくれたイケメンキャラにレベルアップ報酬で貰ったそれっぽい衣装、好きな色である緑色にメタルカラーリングした銃を持つ【Madder】でログインした。
ふふ、レベルアップしたAIM力を見せてやる!唸るぜ...俺のM4がよぉ!!
「はぁ!?なんで先に撃ったこっちが負け...は?いや、なんでキルカメだとそっちから先に撃ってるん?うっわ、ラグで負けたわ〜〜。ん...?このアカウント名は...」
ポッ
『【NO.Ⅱ】
GGEZ』
『【茜】
ふざけんな』
A.音乃「GGEZ」
茜「煽るとか最低かよ...」
音乃「屈伸死体撃ちされた後ににファンメ来たことのあるプレイヤーはみんな闇堕ちするんだよ」
茜「俺リーチだったうえにお前からファンメ貰ったんだが」
音乃「GG」