8.部活、作ろうぜッ☆
Q.部活を新しく作るのに必要なのは?
「...早く着きすぎたか」
規則正しい生活をしているふゆちゃんとゆきちゃんにつられて俺も朝早く家を出てきた。そのせいで、まだホームルームまで結構時間がある。
そういえば昨日は光輝とノノに誘われてゲームを始め、下校時間ギリギリまで熱中してプレイしてしまった。まぁ、楽しかったのでしょうがない。
また、一緒にゲームをしたいな。
「よっ、茜」
「光輝か。おはよう」
そう思っていると、光輝が登校してきた。
それから先生が来るまで2人でPUBCをやることになり、色々教えてもらいながらプレイしていると、台風の様な勢いを持つ彼女が教室の扉を開いて入ってくる。
「アカネ、コーキ、おはよー!」
「おう、おはよう」
「おはー」
はつらつとした笑顔でこちらへ走ってくるのは派手な金髪をゆらゆらと揺らすノノ。俺と光輝がPUBCをやっていることに気がついたらしく「次のマッチからは混ぜてね!アカネ、少しは上達したー?」と楽しそうに輪に加わってきた。
約20分、意外にも3位という好成績を残すことが出来て俺はかなり嬉しいんだが、正直俺はほとんど何もせずキャリーされただけで、2人はあと少しで勝てたことをかなり悔やんでいる。
んー...たかがゲーム、なんて言えないな。遊びだとしてもこうやって光輝やノノみたいに本気で遊んでるからこそ楽しいんだし。それこそ仕事でゲームをやる人達がいるし。
これは、俺もちょっと燃えてきた。やり込んでしまうかもしれない。今はただのお荷物でせいぜい肉壁になるぐらしいか出来ない俺だが、いつか活躍してみたいものだ。
2戦目を始めるか!となった直後、教室の前のドアから湯上先生が入ってくる。
「今日は1時間目が多目的室で教科書各種の受け取り。2~4時間目が部活動の紹介、見学です。この学校は部活動が大変多いのが特徴ですが、その分迷ってしまうこともあると思います。出来れば今日中にある程度決めてみてください。それでも決まらなければ、来週の金曜日までは見学期間が設けられているので焦らなくても大丈夫ですからね」
ホームルームで今日の簡単な日程を聞いた後、そのまま渋滞しないようクラス順に多目的室へ教科書を受け取りに行き、全部の教科書に名前を書いた所で1時間目の終わりを知らせるチャイムが鳴った。
湯上先生に連れられて体育館へと向かい、新入生全員が集合したタイミングで部活動紹介が始まる。
体育館の半分より前、ステージ側で各部活の紹介が始まり、それを見る生徒達の喧騒がいっそう大きくなっていった。
サッカー部。最初は簡単なパス練をして、次にドリブルの披露、シュート、ゴールキーパーのセーブ、リフティングなどの基礎に繋がる小技etc...一通りの紹介が終わったところで部長と思われる男子が募集を呼びかけて終わる。
同じように運動部ではバスケ部や野球部、テニス、卓球、弓道、バトミントン、バレー......その他にも多くの部活が紹介を進めていく。
「アカネは中学の頃部活何やってたのー?」
「ん?俺はバスケ部だったぞ」
すると、自由に座っていい先生に言われて固まって見学していた俺と光輝、ノノは中学時代の部活は何をやっていたのか。という話題になった。
俺は中学1年から中学3年までバスケットボールをやっていたが、恥ずかしながらお世辞にも上手いと言える技量はなかったし、部員も多かったので補欠ばかりだった。そんな3年間だったけどなぜか3ポイントシュートだけは得意だったのが小さな自慢だ。
高校では何か別のスポーツをやってみても良いかもしれない。文化部も一考だ。
そして、ノノのターゲットが俺から光輝へと変わる。
「コーキは?」
「俺はサッカー部。せっかくたくさん部活があるんだ。どうせなら高校では違うことやってみたいなと思ってる」
光輝はサッカー部に入っていたらしい。
光輝も俺と同じく高校では中学時代にやっていなかった部活に入ってみようと思っていたようだ。
俺達に続いてノノも中学時代の部活について喋り出す。
「私は自分で部活立ちあげるのも面白そうだなーって思ってるよ。あ、ちなみに剣道部だった。ぶい!」
「剣道部...なんか意外だな」
「カッコイイなぁーって思って入ったんだけど、結構辛くて大変だったよー...」
へぇ、かなりの数の部活があるのにまだ新設が認められているのか。
しかもノノが剣道部とは...意外すぎて何だかあまりイメージが出来ない。普段は緩い感じがなんとなくするが、剣道をやらせてみたら案外キリッとしていてかっこいいのだろうか?
お、次は吹奏楽部か。おぉ〜、有名な曲だから知っている生徒も多いらしい。何人かは歌っている。
「自分で部活の立ちあげ...ね。1年でもそれってOKなのか?」
「ユガミちゃんに聞いたけど、部員が最低5人と顧問が1人見つかれば、あとは使用可能な教室を見つけて許可取って、部活設立の申請をすればいいんだってー」
「人さえ見つかれば案外簡単なんだな!」
「人を見つけるのが1番難しいんだろ」
吹奏楽部の演奏を聴きながら3人で部活の設立について話し始めた。
にしてもノノはもう湯上先生に確認とってきたのか...行動力パネェな、おい。
要は人数、顧問、場所の3つが見つかれば設立の申請は出来るらしい。顧問だったらまだやってない人が部活紹介の冒頭で名前を言っていたし、活動場所となる教室や運動スペースがそれなりに残っていることは説明されていた。
この学校はグラウンドがアホみたいに広い上に体育館も第1~第3まであるビックな施設範囲。そりゃあ、まだまだ余裕はあるわ...
なので顧問と活動場所ぐらいなら割とすぐに見つけられるだろう。だが問題は初期部員5人というところだ。
部員を5人集めるだけと考えたら簡単に思えるだろうが、まだ入学して2日目の新入生がいきなりその人数を集めるのは難しいように思える。もう少し時間が経てば問題ないだろう。でもノノはどうしてもすぐに設立したいらしい。
「早い方が色々得するっしょー!」なんて楽しそうに言っている。まぁ、それは一理あるが、どうやってノノは自分以外の4人を見つけるつもりなんだろう。実はもう見当がついているのか?
───そう思っている時期が俺にもありました。ノノの中では5人中の3人がすでに決まっていたらしい。
「ねね!2人共さ、私と部活作ってみない?」
「「え?」」
そこからは、早かった。それはそれは異常に...早かったんだ。部活動紹介が終わり、体育館から出た後、今日は午前中のみなので午後からは自由。
ノノに引っ張り回されて俺と光輝は無理やり走らされた。
「ユガミちゃん!まだどこの部の顧問にもなってないって言ってたよね?私の作る部活の顧問になってよ!」
「「「え?」」」
困惑する俺と光輝の状況把握を置いてけぼりにして湯上先生を顧問に誘う。先生も唐突な顧問のお願いに戸惑いながらも答える前にノノに連れていかれる。
「いたー!ねね、昨日アカネと話してた子達だよね?部活作るのに残り2人必要なの。入って!あ、そっちは...へぇ、アカネの妹?じゃ入って!」
「「「「「「え?」」」」」」
さらには薫とふゆちゃんの顔を覚えていたのかしらみつぶしに探して勧誘。ついでに一緒にいたゆきちゃんも連れ出した。
そして呆然とする俺達は何が何だかわからないままノノの言う通り名前を書かされ...
ぽかんとするノノ以外の6人を引き連れて職員室に着くと、部活動総合担当の教員へ記入を済ませた申請書を持って行く。
「部活見学初日に部活設立申請に来たのは君たちが初めてだなぁ」
「そうなんですかー?ま、いいじゃないですか!やる気、有り余ってるんですよー!」
「はは、若いってのは良いなぁ。ま、申請書は預かっておくから、受理されて活動するのはどんなに早くても来週からだからね。あと、最初は同好会からだからこれから先実績を積むことも考えておいて」
「了解でーす!」
そして問題なく確認を終え、書類は提出された。
「はい、ゲーム同好会のみんなよろしくね!」
「「「「「「えぇ...?」」」」」」
台風かよ。
A.音乃「勢いっしょー!GO!GO!GO!」