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3:ルート分岐は慎重に☆

Q.高校に通う意味とは?

「オワリだ…」


今の俺の心情を表すならば、ただ一言、絶望。付け加えるとしたら虚無。


まさかの全員別クラスという悲劇によって愛し合う俺達3人きょうだいを引き裂くとか高校って最悪だよ...校長先生の陰謀だよ、悪魔だよ魔王だよ禿げろ!


はぁ...ふゆちゃんとゆきちゃんの居ない教室で1年間も過ごすなんて無理。むしろやることなくないか?


勉強...2人が居ないと捗らない。

スポーツ...2人が居ないとやる気が出ない。

昼食...2人が居ないと美味しくない。

部活...2人が居ないと入る意味がない。

放課後...フユカニウムとシラユキニウムが不足=死。


あれ、姉と妹の居ない学校って何するところ?(哲学)


もう学校とか息吸って吐いて目を開いておけばいいのでは...いや、流石に言い過ぎたな。昼寝を忘れたら昼寝に失礼だった。






うん、違うな。今度こそ言い過ぎた。


「はぁ...でも、実際モチベーションは下がるもんな。学校が大事なのはちゃんと理解してる、理解してるけど!けど、ずっと楽しみにしてたのに」


頭では理解していても心が追いつかないのが不快感を煽る。


「どうしたんだ?」

「ん?」


使い込まれてはいるもののしっかりと磨かれている机で頭を抱え唸っていると、すぐ側から聞き慣れない声が聞こえてきた。


俺に向けた言葉じゃない可能性も勿論あったが、この距離感で声をかけられたのが間違いだともあまり思えなくてそのまま顔を上げる。


「俺は安達(あだち) 光輝(こうき)だ。隣の席になったよしみで仲良くしてくれると嬉しい」


安達 光輝。鬱陶しくない程度の長さでサラサラな髪の毛、ぱっちり二重で長身細身の彼はそう名乗りながらゆっくりと右手を差し出してきた。


おー...爽やかイケメンってやつだな。


「......東雲(しののめ) (あかね)。よろしく」

「あぁ、よろしく。で、東雲君は──」

「茜でいいよ。それとタメ口でOK」

「そうか、なら俺も光輝で大丈夫だから」


いきなりの事で戸惑って応じるのが遅れたが、入学初日でそこまで馴れ馴れしい訳でもなく気さくに話しかけてくれるのは個人的に嬉しい。


ふゆちゃんとゆきちゃんが居ないクラスというだけでマイナス点だが友達...親友と言えるような存在が出来ればその考えも少しは変わるのだろうか?


そう思って俺は彼の右手に自分の右手を出して握手を交わす。あんまり硬い口調で話すというのも苦手だからタメ口で良いだろう。彼──光輝もそれで良いらしいから問題ない。


「で、茜。高校初日から項垂れてたのはなんでだ?」


俺の隣の席に腰を下ろした光輝が机に突っ伏していた理由を聞いてくる。


「それがな──」


なぜ絶望していたのか、これまでの約1時間であった事を光輝に説明した。いかに酷い事件が起きたのかを。


「という訳で、正直学校に通う意味を見つけられない」

「大袈裟な...それに、来年は同じクラスかもしれないだろ?」

「1年…1年だぞ!?1年間も2人と違うクラスだなんて耐えられない!それに2人は天使みたいに可愛いというか天使そのものだから下種な考えを持ったゴミが近づいてくるかもしれない。百歩譲って多少まともな奴だとしても2人の可憐さに心を奪われて遠くない未来に好意を抱くのは必至だ。ふゆちゃんにもゆきちゃんにも俺以外の男が近づくのは許せない!というか羨ましい!!」

「お、おう。てか、絶対最後のが本音だろ」

「全部本音だ」

「これは重症だな…」


確かに重症だ。俺の心のライフポイント...ハートポイントは2人と別クラスになってしまった悲しみで0に等しい。これを重症と言わずなんと言う。光輝、お前は俺の苦しみを理解してくれるのか!


そうか、これが親友...!


友達はまぁまぁいる方だが親友ともなると本当に限られてくる。その1人を高校で早速得られたのはありがたい。


そうして親友になった光輝はその後も俺の姉愛と妹愛を苦笑しながら聞いてくれた。はぁ...少しは鬱憤を晴らす事が出来てすっきりした。彼が居るならこのクラスに通う意味があるかもしれないな。


しばらく2人で話していると、教室の前にある扉をガラガラと音を立てて開き1人の若い女教師が入ってきた。


「皆さん、入学おめでとうございます。入学式中にも説明がありましたが、私は7組の担任になった湯上(ゆがみ) 千鶴(ちづる)です。1年間よろしくお願いしますね」


湯上 千鶴。俺達7組のクラス担任となった彼女は小柄で童顔の女性。


ゆったりとした口調で改めて軽く自己紹介をし、クラス内の生徒全員を見渡すようにして今日この後の予定を話し出した。


「高校生活初日の今日は午前中に自己紹介と書類配布、校内の主要施設をいくつか案内して終わりです。午後からは一応自由時間で校内を歩き回ってみてもいいですし帰宅しても大丈夫ですが、今日からこの穂波高校の学生になった事をしっかりと自覚して相応しい行動を心がけてくださいね」


自己紹介か...少し恥ずかしいが入学してすぐの今は大事なイベントと言える。これでクラス内の立場が決まったりもするだろう、目立ちたくはないけど隅っこで静かにするのもつまらないな。


ふむ...結構いきなりで話したいことが上手くまとまらない。友達と過ごす楽しい高校生活か、1人悲しく過ごす高校生活か...くっ、これは重要なルート分岐イベントだ。


「では、5分後に名前の順で自己紹介を始めます。それぞれ話したい事、伝えておきたい事を考えて下さい」


お、考える時間をくれるのか。


......何を話そうかな。


よし、ここはやっぱりシンプルに────!

A.茜「姉と妹と一緒のクラスで高校生活を送ること」

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