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2:バットエンディングルート☆

Q.この世で最も恐ろしいのは?

俺達3人は特に道に迷うこともなく、無事に入学先である高校へと辿り着くことが出来た。すでに多くの新入生とその家族で校門付近が溢れかえり、クラス分けを表示している掲示板の前はごった返しになっている。


人の波を掻き分けながら少しずつ前に進んでやっと到達した掲示板の前で見逃しの無いように自分達の名前を探し始めた。


だが、なかなか見つからない。さ行の"し"で始まる名前の人多いなっ!


おしくらまんじゅう状態で探しているからかなり疲れる。2人は俺よりも早く名前を見つけただろうか?隣にいるふゆちゃんに聞いてみよう。


「ねぇ、ふゆちゃん」

「……」


おかしい。何がおかしいってふゆちゃんが俺の言葉に反応を示さない。これは家を出てから始まった現象で、何度話しかけてみても身振り手振りを加えて声をかけてみても返事をしてくれなかった。


無視をしているなんて事はまずありえない。高校入学初日という事で緊張してしまっているのだろうか?


出来るならば俺が気の利いた言葉でふゆちゃんの緊張を(ほぐ)してあげたいところなのだが、今頃きっと自分でも心を落ち着かせているだろう。


無理やり意識を逸らさせようとして驚かしてはいけないな。何の力にもなってあげられないのが歯痒いが今はそっとしておこう。


ゆきちゃんは......


「ねぇ、ゆきちゃん」

「……」


おかしい。何がおかしいってゆきちゃん()俺の言葉に反応を示さない。これも家を出てから始まった現象なのだ。小さい頃は俺から話しかけなくても「にぃに!にぃに!」って抱き着いてきたためなんとも悲しいものであるが、最近は恥ずかしがり屋さんになってしまったのかほとんど話してくれない。


今回はそんな感じで俺と話すのが恥ずかしいうえにふゆちゃんと同じで新しい環境に緊張しているのが原因なのだろう。そうだろう。


きっと頭の中では「にぃに…」と俺に涙目で頼っていてくれるはずだ。


ゆきちゃんの事もふゆちゃんと同じでそっとしておいてあげたかったのだが、時間を確認してみたらそろそろクラスごとに並んでの入学式が始まってしまうのに気が付いた。


2人には悪いが早くクラスの確認を終えて体育館へと向かわなくてはいけないので俺は胸を痛めつつ声をかける。


「もう自分達の名前見つけた?何組だった?俺と同じクラスだった?でも、そろそろ時間になるから急ごうか」


時間厳守は大事だ。まぁ入学式よりも2人と同じクラスであることが1番重要なのだが。


……まずいな。俺のことが大好きなはずなのにまだ反応をしてくれない。そ、そこまで緊張しているのか?でも本当に時間の方もやばくなってきた。


どんなに緊張していてもさすがに肩を叩けば気が付いてくれるだろう。そう思って俺は目の前に居るふゆちゃんの肩に手を伸ばした。


「ねぇ、ねぇってばぁ~」

「茜くん、静かにしてください。あと、学校ではふゆちゃんって呼ばないでください」

「クソ兄貴、こっちくんな。学校で私の事をゆきちゃんって呼んだら殺す。それと、話しかけてきても殺す。目を合わせても殺す。半径5m以内に居ても殺す!」


くっ……ミスった!落ち着けない状況+恥ずかしがり屋である2人が公衆の面前で愛称を呼ばれたら怒るのも頷ける。


だが!


「せっかくなんだから仲良しきょうだい3人で同じクラスになりたいじゃんか!」


クラス分けで緊張しているのは俺も同じなんだ!だってこれからの1年間2人と離れ離れなんて考えられないし考えたくもない。もしそんなことになったら想像しうる限り最悪の事態。


同じ教室で同じ授業を隣同士の席で勉強するのがずっと夢だったのだ、だから………っ!!!


「てか、違うクラスだったら学校に来る意味、ない、し…」


俺はそう喋りながら同時進行で自分達の名前を探し続けていた。人が減ってすでに残っているのは十数人。


そして、1組から順に見ていった最後の方で俺は見つけてしまう。


「あ、私は5組ですね。白雪は6組ですか」

「クソ兄貴は…7組。よし、完璧」


は?はは...ははははは、HAHAHAHAHAHAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!?


「嘘だ、そんな馬鹿な…」

「じゃぁ白雪、私はもうクラスの列に行きますね」

「ん。また終わったあとね」


クラス分けの采配に絶望する俺に目をくれることもなく、まるで「この人とは他人です」なんて言うかのような雰囲気で2人は足早にそれぞれの集合場所へと走って行ってしまった。


残されるのはただ1人。


「嘘だぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


入学式開始時刻を知らせるチャイムの音と共に俺の絶叫がどこまでも晴れ渡る空に響いた。

A.茜「最愛の姉と妹と別クラスになること」

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