10.我が天使を信奉する剣☆
Q.「あなたの妹が悪漢に絡まれています、どうしますか?」
部活動申請から早くも数日が経ち、日々の生活が大きく変わったことに戸惑いつつ少しずつ高校生としての生活に慣れ始めた頃。
俺と光輝、ノノの3人がメインとなって活動することに決まったゲーム同好会が本格的に動き始めた。
無事に見つかった空き教室で集まった部員達、ただ湯上先生だけはまだ書類仕事があるらしくて遅れているが、とりあえずは部員全員がちゃんと集まっている。
「さて、無事に部活動申請が通ってゲーム同好会の活動が開始されることになりましたー!」
「お、おー」
「よかったなぁー」
「あれ、全然乗り気じゃない!?」
どんどんぱふぱふ!と様々な音が出るアイテムを個人で持ち寄って盛り上げようとする俺ら。が、リズム良く鳴る音とは裏腹にテンションは思いっきり置いてけぼりにされている男子2人。
がーんという効果音が聞こえてきそうなほどに落ち込むノノに思わず笑ってしまい、今度は「なんで笑うかなぁー!?」と怒り始めたのを見てまた笑ってしまった。
「ん"ん"!...それで龍堂寺さん。まずはどんな活動をするんですか?」
「もぉーふゆっち、私のことはノノでいいって言ったじゃーん」
「冬華です。龍堂寺さん、いい加減その呼び方はやめてください。あなたのその見事な髪の毛をお粗末なものに変えますよ?」
「あはははは!いやぁー、やっぱアカネとふゆっちはきょうだいなんだねぇ〜。考えることが一緒だよ!」
「ふっ、当たり前だろノノ」
「名誉毀損で訴えますよ?茜くんには精神的苦痛を与えられたのでそちらも訴えます」
「「なんで!?」」
「ぶはっ!」
くっ...光輝、お前はなに笑ってるんだよ!
「...龍堂寺とクソ兄貴は随分と仲がいいみたいだな?」
「そうだとも!ゆきっち、私とアカネは魂の友!死線をくぐり抜ける戦友!もうね、マブダチだね!」
「マブダチって今日日聞かねぇな...てかおい、ファンメの事忘れてねぇだろうな?次があったら覚悟しておけよ?」
マブダチ煽るってお前おかしくねぇ?いや、むしろマブダチだから許される範囲内なのか?いやいや、ファンメは許されないだろう。許せねぇ、次は絶対泣かせてやる!
「次もGG」
「ふざけんな」
跳弾でカウンター喰らった。
なんなのこいつ。首洗って待っとけ的な事言ったら煽り散らされたんだけど。怒っていいよね?いいよな。
ゆきちゃん、ぼく、こいつにいじめられてるのぉ!
「ちっ、いちゃつくな死ね」
味方がいない。
「それで、龍堂寺。さっそく第1回目の活動になる訳だが......なにすんの?」
「よく聞いてくれたね、コーキ!」
現実に打ちひしがれる俺を無視して光輝が今日は何をやるのかノノに聞き、待ってましたと言わんばかりの笑顔で彼女はセルフドラムコールを始める。
「第1回、ゲーム同好会の活動内容は......これだよ!」
ぷぅぅるるるるるしゅこぉーーん。と、某有名なのYouTuberからインスピレーションを受けたであろう効果音を口で出しながら大きめの箱のような形の物を机の上に置く。
「Fantasy Life Games!通称FLG、要はファンタジーな世界をテーマにした人生ゲームだねー!結構有名で面白いらしいよー」
ノノがゲーム同好会最初の活動内容として持ってきたのは人生ゲームだった。
話を聞いてみると普通の人生ゲームとは少し違い、起きるイベントだったりがファンタジー仕様になっているらしい。
例えば事業が成功して1000万円もらうというマスが普通の方なら、FLGの方はドラゴンを倒して報酬で金貨1000枚といった風になる。
他には結婚マス以外に魔法を覚えるイベントだったり、なにかしらのモンスターと戦ったりなど、その全ての内容がファンタジー準拠だそうだ。
「へぇ...意外と面白そうですね」
「でっしょー!」
お、なんとふゆちゃんが乗り気だ。早くやってみたいのか既に説明書の読み込みを始めて───あれ、なんか急に顔色が悪く...
「あの、龍堂寺さん」
「んー?」
「この、説明書にですね、書いてあるんですけど...キャラのなりきり必須とは...?」
「あー、それ?簡単だよ!」
なりきり必須?なんだそれ。ふゆちゃんの一言で全員が同じような疑問顔になった。
ノノに関しては最初からそれを聞かれると思ってたのか、特に驚いた様子もなく淡々と説明を始める。
「このゲームには職業とか簡単なストーリーがあったりするから、自分が登場人物になりきってプレイするんだよ。例えば...
げっへへへ、おいそこの兄ちゃん。いい女連れてるじゃねぇか、あぁ?ちょっと片方、いや両方寄越してくれよォ?天国へ連れてってやるぜェ?」
「すまないが断らせてもらう。2人共俺の嫁だ!潔く悪は滅びろ....."我が天使を信奉する剣"!!」
「ぐあぁぁぁぁ!?」
「ふっ、悪は滅した」
「って感じ」
「いや、いくら絡まれたとはいえ初対面のやつにいきなりイロモノ系チートスキルで攻撃するなよ」
「マジきめぇ」
もしや神ゲーかな?
レッツ・カリバー☆
A.茜「愚かな行いを後悔しながら逝け...カリバァァァァ☆」




