1:2人はエンジェル☆
Q.世界で一番可愛いのは?
「この世にはルールがいくつも存在する」
生活をする上で人々は大抵の場合常に何かのルールを守って生きている。それが自分の中で決められたものなのか、家の中でなのか、社会の中でなのか。
枠組みに違いはあれど、生きている限りは多かれ少なかれルールが自分の周りにはあるもの。
「じゃあ、その中で最も大切なルールはなんだと思う?」
人を殺してはいけない、当たり前だ。そもそも体にしろ心にしろ傷つける行為自体がよろしくない。
道路交通法、これを守らなければ大きな事故が起こることも目に見えている。
父親に逆らってはいけない...これは、そうでない場合もあるな。自分の意見、意志は大事にしよう。
母親に逆らってはいけない...イケナイ、ダメ、ゼッタイ。学校で食べる2段のお弁当の中身が全部白米だった時は震えたね。白米美味しい。
まぁ他にもルールは沢山あるが、国や地域によって差が出てくる。だが、1つだけ全世界...全宇宙で決められたルールがある。
「それはな────」
俺───東雲 茜は紡ぐ言葉に一瞬の空白を作って、深呼吸をした。
少し唇を舐めて潤いを、よし、カサカサじゃないな。口臭は...大丈夫。寝癖もないし、真新しい制服だから襟もちゃんとしてる。
ちょっとした身だしなみのチェック直ぐに済ませ、目の前にいる美少女2人と目を合わせた。今の俺に出来る最高の微笑みと一緒に再び口を開く。
「俺の姉と妹は宇宙一可愛い、これだ」
そう、俺の姉と妹は宇宙一可愛い。えっ...宇宙一って言ってるのに2人いるじゃないかって?
はぁ〜...まったく分かってない、分かってないな、分かれよ!
姉と妹=天使、天使=宇宙一可愛い。はい、QED。おい、中身スカスカとか言うな。いやまぁ端折り過ぎたとは思うから改めて姉と妹の宇宙規模天使力について少し語ろうじゃないか。
まずは姉の冬華。通称ふゆちゃん。はい、可愛い。なに、冬華...ふゆちゃんって、反則でしょ。もうそれだけで可愛いじゃん。
名前の由来は母さんが好きなシクラメンが冬の花で、冬華の生まれた時が冬だったからそう付けたそうだ。安直すぎやしないか?と思わなくもないが、最高に可愛い姉に最高に可愛い名前が付けられた。母さんGJ。
可愛いのは名前だけじゃない。整った顔立ち、光を反射する艶やかな黒髪、豊かな双峰、美しい曲線を描くくびれ、しなやかなでほっそりとした脚。どこを見ても黄金比率でまさに完璧な天使。
性格は穏やかで言葉遣いも悪くなく、面倒みの良い性格のため多くの人達に好かれている。ま、一番好いているのは俺だけど。俺以外にありえない。
続いて妹の白雪。通称ゆきちゃん。はい、かわ(割愛)
白雪の名前の由来は、彼女の生まれた日の真っ白な雪が降り積もるように清く美しく育ってほしいという意味で付けたそう。これまた安直な気もするが、まさに天使に相応しい名前と言える。母さんGJ。
白雪も可愛い所は名前だけじゃない。顔立ちは勿論、母譲りの茶髪に大きくてくりっとした目、首元から覗くまるで芸術品の様に白くてすべすべな鎖骨周り、少し寂しいが愛らしい双丘、程よく筋肉のつく健康的なお尻と脚。幼さの中に力強さを感じる完璧な天使。
性格は少し気が強いが、風邪を引いた時などに見せる昔のまんまなお兄ちゃんっ子な反応が可愛らしくて堪らない。彼女もまた多くの人に好かれているが、俺が一番好きだ。
余談だが俺と冬華、白雪は3つ子の"きょうだい"である。雪の降る真冬に産まれた俺達だが、俺だけ特に冬や雪とは関係ない名前で、小さい頃に「なんで?」と聞いた時は、生まれた時間が夕方だったからという安直な理由だと教えられた。雑すぎやしないか?
そんなこんなで2人の天使っぷりを理解してもらえたと思うが、俺の言った世界的宇宙規模ルールを聞いて、冬華と白雪が履き終えたローファーの感覚を確かめつつゆっくりと家のドアを開いて外に出た。
振り返った2人は俺を見る。冬華は若干引いた困り顔で、白雪は嫌悪感丸出しの顔で。そして言った。
「うっさい死ね」
「この世のルールで宇宙一を持ち出すあたりちょっと...ね」
ドアが音を立てて閉まり、キッチンの方から「いってらっひゃーい」とご飯を食べている父さんと母さんの声が聞こえる。
取り残された俺は今さっきの2人が見せた俺へのマイナスの感情に体を震わせてその身を両手で包む。
「ご褒美っ!」
さ、今日から高校生だ。
A.茜「姉と妹です」




