5.出発
やっぱりサーボさんは物知りだな。一緒に旅をして僕もたくさんのことを知らなきゃ。
...自分が何者なのかも。
「さあ、そろそろ出発するぞ!荷台に乗れザット!ニルド、また頼むぞ。」
「ブルルゥ!!」
僕はサーボさんに急かされ、慌てて馬車の荷台に飛び乗った。荷台はそれを曳くニルドの体格に劣らず、非常にしっかりした造りをしている。
「よし!出発!」
僕が乗り込むや否や、馬車が急発進する。僕は振り落とされそうになりながらも遠ざかっていくサーボさんの家の方を見た。
「いってらっしゃーーーい!」
アンナさんがこちらに手を振っている。
「いってきまーーーーーす!!」
僕は吹き抜ける風の音に負けないよう、叫んだ。
これから僕の旅が始まるんだ。自分が誰なのか、何を感じるのか、楽しみだな。
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「サーボさん、今向かってる街ってどんなところなんですか?」
僕とサーボさんはギラギラと照りつける太陽の下、馬車に揺られていた。
馬車は荒地の一本道を進んでいく。周りには僕たちが進む道以外には何もなく、ところどころに枯れているようにも見える木がポツポツと生えているだけだ。
僕は荷台に座っているだけなのに、この暑さに額の汗が止まらない。
「これから向かうのは、サンドラって街だ。いま俺たちがいるのは見ての通りの荒野だがな、ここからもうしばらく進めば砂漠に入る。他の街の奴からは、砂漠の街サンドラなんて呼ばれてるな。」
「砂漠の街ですか...。こんな土地で食べ物が作れるんですか?」
「わっはっは!当たり前だが作物なんか育つわけがないからな。俺たちみたいな行商人を介した、ほかの街との交流で成り立ってるんだ。その代わり、サンドラはかなり発展した街だぞ。交流の場として人が世界中から集まるからな!街の目玉はでっかい市場だ!色んなもので溢れかえってるからな。見てるだけでもかなり楽しめるぞ。」
サーボさんの言う通り、それからしばらくすると周りの景色が砂だらけになった。気温も更に上がってきたようだ。ニルドは変わらぬペースで馬車を曳いているが、この暑さにバテたりしないのだろうか。
190215 投稿