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三幕~花の墓標~プロローグ「ライラックの花」

 ご覧頂き、ありがとうございます!

 三幕スタートです。東の祠を出発するのに、何かが始まる予兆があります。

 白いライラックが咲き誇っている。春だね。

 誰かが歌っている。優しい声、甘いかおり。


「起きて。ご飯できたわよ」引き寄せて、口付けした。

「もう。せっかく早起きして作ったのに」怒っても可愛いだけ。

「美味しかったよ」クスクス笑って抱きしめる。


 あぁ、夢だって分かってる。だから、起きたくない。

 あの子のいない世界なんて……


 ――――――――――――――――――――


 うーん? 不思議な目覚めだなぁ…… 


 前世で俺に食事を作ってくれたのは、母親だけ。朝は忙しいから、物心ついた頃には、自分でパンを焼いて食べてた。


 まだ男の身体なんだけど、女性化して、しかもユリっぽい妄想? なんだか、自分の深層心理が心配になるなぁ……

 ぼんやり考えてたら、碧い目に見つめられてた。


「せっかく、受け入れて貰えそうだったのに」イアリロが俺を抱きしめて、ため息を吐く。

「始めようか」イアリロの言葉に頷く。女性化かぁ。何が変わるのかな。


「目を閉じて」イアリロの声に、辺りが静まりかえったように感じた。 

「自分の胸に手を当てて。ゆっくり、女性をイメージしよう。誰がいいかな? ベスタ? 前世のお母さん? 彼女?」前世の母親、かなぁ。


「優しい声、笑顔、どんな人だった? 手を繋いで歩いたかな? 抱きしめて貰ったよね? やわらかな温かい胸、安心感。お腹にいる時は、海の中でたゆたうような心地なんだってね」胎児の時の記憶はないけど、動画は見たよ。子供の全てを包み込んで育む、海のような存在。


「自分がそんな人になるとしたら、今の姿はどんなだろう。まだ十八才だものね、小柄な方かな。でも、胸は膨らんできたよね?」まだ高校を卒業するくらいの頃だよね。

「お尻は小さめ? しっぽが似合うね」はいはい、しっぽがほしいんだね。

「うん、可愛いね。触っていい?」ダメ!


 ゆっくり目を開けて、自分の身体を見る。あんまり変わらない気がするなぁ。

「雨が降る前に、泉に行こうか」鏡、無いもんね。


 抱き上げようとするイアリロに、首を振って歩き出す。跳んだり、小走りしてみる。

 やっぱりバランスが狂うな。付いてないのは、あまり気にならないけど。しっぽで微調整してる感じ。

 筋力はちょっと弱まったかな。敏捷性はかえって増してるかも。武器の調整前で良かった。


 泉にはリュドミラがいた。

「ルー! 可愛いわ!」挨拶もなしで抱きしめられた。リュドミラって、興奮すると「……の」が無くなるんだ。ベスタもだけど、婆役を楽しんでるんだなぁ。


「確かに可愛い」泉に映る姿を見て、思わず呟いた。耳の先が覗く薄い金髪、黒いメッシュは同じだけど、ちょっと髪が伸びたかな。浅黒い肌は艶やかさを増して、目が大きくなった。光で瞳孔を調整する青い瞳が強調されてる。唇もちょっと厚くなってプル艶だ。胸は小振りだと思ったけど、小さい手には余るくらい。横を向くと、白黒縞のしっぽが踊るお尻も魅力的だ。


 イアリロが手をワキワキさせてるのを見て、しっぽの先を上腕に掛けておいた。やっぱり女性化しない方が良かったかも……?

 

 ちょうど朝食に呼ばれたから、イアリロの魔手から逃れられたけど。これからどうしよ?


 ルーは可愛いです。山村で年寄り達に育てられたので、かなりの箱入り……色々心配です。

 ご覧頂き、ありがとうございます。ブックマーク頂いている方、続けて読んでくださっている方々、少しお待ち頂きすみませんでした。今月中は毎日投稿、続けますね!

 よろしければ、ブックマーク&評価を頂けますと、とても励みになります。宜しくお願い致します。

✳十八才以上でムーンOKの方は、二幕のR部分を投稿してますので、そちらも合わせてご覧下さい✳

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