一幕 始まりの村 ~エピローグ~「創世神」
一幕終了です。ここまで読んでくださった方々、本当に、ありがとうございます。
「ぁ、駄目だって、ん……」ん? なに? いつもの様にイアリロに抱きしめられて、気持ち良く眠った筈だけど。
「ヒュプノス様、タナトス様、来ましたよ」
「タナトス様、いい加減にしてくれ」
「……」イアリロは呆れてるし、クヴァシルは頭を掻いて、ベスタは頬を赤くして横を向いてる。
なるほど、こういうことね。
「兄神さまのせいですよ!」ヒュプノス様、なんだろうなぁ。
真っ赤になって怒っていても全く怖くないけど。細く薄い金髪に優しい茶色の瞳、白い肌に白い翼。ふわふわとした綿菓子の様な天使。
タナトス様は黒髪に金環の浮かぶ黒瞳、浅黒い肌に翼だけが白い美青年で、見るからにクールだ。
ヒュプノス様が慌てて衣服を整えてるのをじっと見てるだけで、こちらを気にする様子もない。
「ごめんね、僕がヒュプノス・眠りの神で、こちらは死の神・タナトス。君たちの力の生みの親だよ」咳払いをして、話しかけてくる。
可愛いなぁ。と見てたらタナトス様の視線が怖い。あらら、本当に溺愛してるのね。
「君が次代の白虎だね、成人おめでとう。皆も、ありがとうね」温かな風が吹いたから、祝福を受けたんだろうな。
きらきらした目で俺達を見てる。けど、そんなだとまた……
「兄神さま、まだ話し始めたところですよ」ほらね。
抱き込まれて抵抗するけど、離して貰えず諦めたヒュプノス様。そりゃ、逃げられませんね。いくら新しい世界を造っても駄目でしょ。
四聖獣の視線を受けて、創造神様が続ける。
「君達に謝らなきゃいけないんだ。ちょっと前にまた、かなり厄介な存在が此方に紛れ込んじゃったんだよ」ヒュプノス様が手を合わせてる。
「かなり厄介って、どういうことです?」クヴァシル師匠が落ち着いて訊いてくれた。さすが三百才!
「七つの大罪って聞いた事ある?」ヒュプノス様、上目遣いは可愛いけど……
「そりゃ、厄介ですね」三人でため息を吐く。
「え? 何? 皆知ってるの?」ベスタは聞いた事がない様だ。女性の読む物には余り出てこないかな。
「暴食、色欲、強欲、憤怒、怠惰、嫉妬、傲慢、だったな」
「そう、それに対比する美徳が、節制、純潔、救恤、慈悲、勤勉、忍耐、謙譲でしたね」相変わらずの、クヴァシルとイアリロ。その知識と記憶力に感服する。
「それらと対決して貰う為に、黄龍が夢見た物語を次代白虎に届けたらしいんだ。そのままが起こる訳じゃないけど、参考になるようにって」
父のことは、どの程度現実化するのかな……憂鬱な顔をしてるんだろう。イアリロが頭を撫でてくれる。
「黄龍自身も力になれるようにと、麒麟を生み出している筈だよ」
「それがウェルク王子、ですか?」クヴァシルが訊くけど。
「そろそろ帰るぞ」タナトス様が声を掛ける。
「色々制約があるんだ。でも、君達に幸せになって貰えるよう、僕達も頑張るからね」
手を振るヒュプノス様達の姿が薄れ、視界もボヤけて消えて行く。
あぁ、目覚めるんだね……
こうして、俺達の冒険が始まったんだ。
ご覧頂き、ありがとうございます。もう一話、二幕のプロローグを投稿します。
賢い筈の聖獣たちがバカなのは作者のせいです、すみません。
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