18話 森の殺し屋集団
「フラネリーもワインを運びに来たんですか?」
「クリスか、俺はもうワインは運んだ、それよりな、ラドはヤバイぞ、覚える速度が半端ない。
さっきまで戦って訓練していたが、セオリー通りじゃない動きをしたり、いきなり合理的な動きをされると対応するのが難しい。
戦いの雰囲気はクリスみたいだった。」
「私と似ている戦い方ってことは、ラドにはフレイルがピッタリかもしれないな」
「あれ、あなた達、もう訓練は終わったの?」
「サラ、今ワインを持っていこうと思っていたんですが、遠距離組はどんな感じですか?」
「とんでもないわよ、クロスボウの方はそこまでセンスが必要なわけじゃないからよくわからないけど。
ショートボウを練習してるイントはとんでもない才能よ。環境にもよるけど、もう距離70mの的には必中になったわ。」
「十分戦力になるな、ラドももうゴブリンくらいなら軽く殺せるだろう」
「私のほうは・・・、エリーは教えを理解し、すぐに調整ができる、才能溢れる天才だと思います
しかし、バーヘフトはダメかもしれません。
理解してるかわからないですね。
話を聞いてるかよくわからないボーっとした顔してますし・・。
仕込み杖の教え方を私が知らないってのもありますが、そもそも仕込み杖に戦い方なんてあるんですかね」
「今はどんな感じで教えたんだ?」
「レイピアを使った時の動きを教えましたけど、正直あってるかわからないですね」
「まぁ、一応エリー、ラドが近接戦闘をしながらケンズ、ハインツ、イントの遠距離攻撃で大体倒せるだろ、もし倒せないのがでたら俺達が倒せばいいしな。
あ、そうそう、資源を少しだけ書き写しておいたから見ておいてくれ、ところで霊薬はどこにある?」
「霊薬は調合しないとダメそうだわ、ついでにあの子達にも作り方を教えてあげましょ」
「どうせ、魔物を殺していくなら霊薬の存在は絶対に知っておかないといけないしな、知識ないまま放り出したら人間を殺せるだけの怪物ができあがりそうでこえぇわ」
「霊薬はフォレの回復薬と、黄迅の毒薬だけでいいかしら」
「最初はそんなもんでいいだろ、殺そうとしてるのゴブリンだしな。あとは毒の製造方法を教えてやるくらいか」
「黄迅を使って大丈夫だろうか・・・、毒耐性を取らせないといけないから少し後になりそうだな」
「毒耐性・・・、まあ、フォレの回復薬を少しづつ飲ませればいつか耐性はつくでしょ」
「サラは女だからいいよなぁ、フォレは本当に怖いんだって、目がやばいんだよ!目が!!」
「最初ハインツもフォレの副作用がでてたよな」
「そうね・・・、まあその話はまた今度でいいわ、私は黒狼神を聖域に連れてこようと思うから、拠点を作ったりするのは任せるわね」
「わかりました、とりあえず私はワインをあの人達に渡しに行ってきますよ」
「俺は盾を手入れして、ラドにチェーンメイルの手入れ方法を教えてくるかな」
「「「じゃ、解散!」」」
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黒狼神の家に行きましょうかね、全く、幼少期なのにこれほど強いオーラを出し続けるなんてね。
近づくたびに体が震えるわ・・・
「なんのようじゃ」
そこには体長70cmにも満たない小さな狼が喋っていた。
声変わり前の少年のような綺麗でかわいらしい声で。
「こ、黒狼神様、聖域へと案内いたします」
もし黒狼神と出会ったのが、経験豊富なサラではなく、クリス、フラネリーだったならば、発狂し気が狂ってもおかしくないほどの存在感、威圧感がサラを襲っていた。
「あぁ、よろしくたのむぞ」
「黒狼神様、オーラを隠してもらわないと、私以外の仲間が全員死んでしまいます」
「そうじゃろうな」
「そ、それは隠してくれるということで・・・?」
「別に死んでもよいではないか」
「ここにいる仲間は皆、黒狼神様を守護するためにいます。なにとぞ御慈悲を」
「はぁ、私と相性の合う者達が召還されるんだ、死ぬわけなかろうに」
「私の部下の命にかかわるのです」
黒狼神から見てサラはハエのような存在、近くにいても少し鬱陶しいだけで怒るようなことではないが、だからといって殺さないと決まった訳ではない。気まぐれで殺されてもおかしくないのだ
だが部下の命のために、自身の命を懸けて
黒狼神のイジワルに付き合っているのだ。 ただのイジワルに
黒狼神は捨てられた人間を育てたり、動物を治癒したりして、一生感謝されることもあるが
遊び感覚で一生怨まれるようなことを平然としたりもする
「対価は?」
交渉とは、ある程度対等な者達との間でしか存在しない。
我々人間が野良犬を蹴り飛ばすのに理由はいらないし、犬が尻尾を丸めてようがなんだろうが、蹴りたくなるのが人間というものだからだ。
だがもし交渉を受けたとすれば、相当偏ったトレードになるだろう。
サラは黒狼神とある契約をした。これは召還された者ができる契約ではなく。禁術とされている契約である
「感謝します、黒狼神様」
背中に新しいタトゥーをつけたサラが感謝を伝える
「聖域はそこか、全くなにもないな。」
オーラを抑え、ただ後光がさし、ただ存在感が大きく目をそらせなくなるだけで済むようになった黒狼神ががっかりした表情をする
「聖域にいるほうが、心地がよいとボスから伝えられていたので、何もない状態でも聖域にいるほうが
と思いましたので」
「まあそうじゃな、眠くなってきたから少し寝る」
こんなことなら連れてこなければと思うかもしれなが、連れてこなかった場合に突然来られるほうが危険
それに不機嫌になれてもこまる
「承知しました」
なんとか機嫌を損ねないよう、それでいてある程度の希望を通す
それを神相手にやってのけたのだから、かなりの素質、資質を持っている。
ファミリーのボスにだって成れるであろう女、サラ。
気苦労はまだまだ絶えそうにない