17話 開花してはいけない才能
「おっ、なんかわかってきたぞ。」
ラド
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痩せたボ〇サップみたいな風貌をしている、どこにでもいそうな黒人。
10歳まで親、というより他人に銃の扱いを教えられ、動物を殺したりしていた。
10歳になってからは、山へ捨てられた。
戻ったら命はないことはわかっていたため、2年間山で暮らす。
最初は動物を殺して生きようとしていたが、山で鹿を探していたある日、木の小屋を見つける。
そこには老人夫婦が暮らしていた。
そこでラドは老人夫婦を殺した、服、家、道具、電波、家畜、全てほしい物がそこにあったからだ。
最初の殺しは10歳と数ヶ月だった。最初の殺しで得た報酬は生きるのに必要な物だった。
それから2年経ち、山を下山する。
町へ戻ったラドは、戻って最初に着いた地区を仕切っていたギャングのボスを、愛用しているモシン・ナガンM1891/30を使い、鹿の頭を打ち抜くように殺した。
報酬は、驚いたギャングの部下の顔と自分のパンツを汚せた事だった。
それからギャングを暇つぶしに殺し、そして自分が住んでいた山へ死体を運んだりして遊んでいた。
普通は開花しない才能、殺しの才能、隠蔽する才能、非人道的行為を平然とこなす道徳心の欠如。
そんな才能を持った子供が毎日ゲームのように人間を殺していれば、いやでも殺すのが上手くなる。
ラドは平凡な外見とは裏腹に、平凡からかけ離れた考え方、才能を持っている。
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圧倒的な才能、というより、本質を理解する速度が圧倒的にラドは早かった。
人生で繰り返していた事が殺し関係なだけで、全ての事に応用できる才能を持っていた。
近接武器を使い慣れる事も、もちろん、圧倒的に早いスピードでマスターしていった。
「おおっ!こうか!相手がガードした箇所を避けて相手の背中とかにも当てれそうだぞ!すげえ!」
「おいおい、ラド、お前嘘だろ!?俺が物資の確認をしてワインを持ってくるまでにフレイルの使い方を覚えたのか!?」
目を真ん丸く開け、危うくワインをこぼしそうになっているフラネリーが叫んだ
「自分をぶん殴らなくてすむくらいには慣れたぜ、よっし、戦ってみよう」
「わかったわかった、チェーンメイル(くさりかたびら)を着てくれ、防具をつけた状態でも慣れないとな」
ラドは手間取りながらもなんとかチェーンメイルを装備できた
「おお、着心地悪いな、肩がこりそうだ」
「布に組み込まれてるチェーンメイルは軽いのが多いんだが、鎖が表に見えるようになってるのはしっかり作られているから重いんだ。それは7キロくらいあるな」
「それでも7キロなのか、もっと重く感じるんだが」
「プレートアーマーみたいに腰に重量を分散できないからな、分散できてないから肩に重さが集中して重く感じやすくなるんだ」
「まぁいいや!戦ってみようぜ」
「わかった、俺の武器は盾と木の棒だ」
「木の棒?そんなので大丈夫なのか?」
「大丈夫だ、気絶するか降参したら負けだ。じゃあいくぞっておおおおおお」
始まりの合図など関係ないと言わんばかりにラドが先制攻撃を仕掛ける
フラネリーは左手に小型の手持ち盾を装備していた
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手持ち盾はその名の通り、手に持って使う盾。
前に構える、身を隠す、攻撃を弾く、殴るなど、使用者の使いようによっては無限の可能性を秘めている道具。
盾を持つのは手で、腕を補助的に使い盾を動かす。
小型で防御面積が少ないが、その分小回りが利く。
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右手にはその辺で拾った木の棒を持っている
木剣を作る時間すらないほど早くラドがフレイルを使いこなし始めたため、仕方なくである。
決してフラネリーがめんどくさがり屋だったからからではない。多分。
フラネリーが左手の盾でラドの先制攻撃を受けようとする
が、ラドがさっき覚えた鎖の部分を盾に当て、相手に巻きつけるように振る
「そうくるか」
フラネリーが状態を後ろへ反らし、左手の盾で穀物を弾く、弾くために体を捻った動きを利用して右足でハイキックを蹴る
「マジかよ」
ラドは弾かれた反動で体勢が崩れる、そこへハイキックが飛んでくる
ハイキックを柄の部分で受け、盾で弾いたために空いた脇へ肩からあたりに行く
フラネリーはハイキックを受けれた事に驚き、対応が少し遅れたが、柄の上の部分を蹴っている足を使い、柄を上から押さえつけるようにして蹴る、柄を即席の足場としてラドの横へ移動する
「うおっ」
体全体を利用して攻撃しようとしていたラドの攻撃が完全にかわされ、ラドの体勢が前のめりになる
そこへ柄を蹴りつけ死角へ移動したフラネリーがラドの首筋に木の棒を突きつけ・・・
「まいった、ギブアップだ」
ただの木の棒から冷たい殺気を感じたラドは汗だくでギブアップを宣言する
(なんだこの感じ、クーラーの効いた部屋にいるのに、サウナで長時間粘ってる時くらい汗がでてるぜ)
ラドが降参し、フラネリーとラドの戦いはフラネリーの勝利となった
(初めて持った武器、それも殆ど独学、たいした練習時間もなく、ここまで戦えるなんてな・・・)
( 化け物が )
「すごい才能だ・・・、バカみたいに殺気を出してしまったのは久しぶりだ。」
「いやぁ、フラネリーはすごいな。全く歯が立たなかった。受けた柄を足場にして横を取られるとは思いもしなかった・・・。」
お互いに怖がり、畏敬の念を抱くという不思議な空間が生まれた。
それから休まず合計13戦連続で戦った
結果はラドの13敗0勝利という結果に終わったが、毎戦ラドは戦い方を模索し、体の動かし方を調整していった。その結果、驚くべき速度で成長していったのだ。
下手にカカシ相手に攻撃するのではなく
フラネリーという経験豊富な、同じ人間と戦っていたということ、そして経験豊富な人間が殺気を出しながら戦い、ラドが安心して殺す気で戦えたことが功を奏した
「少し休憩しよう、他の人達がどれくらい訓練できたかも知った方がいいだろうしな。
もうゴブリン数匹くらいなら一人で簡単に殺せるだろう」
(もしラドが生物を殺しなれていなかったとしたら、ここまで早く成長できなかっただろう。それに、技術的に殺せても、実際戦った時に殺せなくなるなんて事がなくて本当によかった。
殺すために生まれてきたような奴だ)
「それに喉も渇いた、ワインがあるだっけか?」
「あぁ、強いワインもあったぞ、あとはミードとかだな」
「ワインは高かったんじゃないか?水でも全然よかったんだが」
「水?水なんて買って飲んだら死んじまうぞ」
「そんなに悪い水なのか・・・」
「あぁ、だから海賊は水分補給のためにワインを持っていくし、そのせいで全員アル中なんだぜ」
フラネリーが笑いながら言う
「そうだったのか、しらなかった・・・。まあいいや、飲もうぜ!」
「あぁ、ラドのはこれな」
ライオンの紋章が入った銀のゴブレットをラドに渡しながら言う
「銀のゴブレット?俺は貴族様なんかじゃねえぞ」
「そうじゃない、贅沢のためではなく、毒殺されないように自分のゴブレットを一つ持っておくといい。
もし毒が入っていたら、変化するからわかる。
晩餐会とかでも銀食器が多いのは毒は入っていないってことを伝えるためでもあるんだ。
あと、手入れして磨かないと変色するからな、ピカピカな状態にしておく方がいい。」
「そうだったのか、ありがとな。」
「それじゃあ、ラドの今後を祈り!」
「「乾杯!!!」」