15話 ハインツ ケンズ イント クロスボウの訓練
「さて、クロスボウ、ショートボウを教えるのは私よ。よしくね」
「宜しくお願いします。」
「うん、よろしくね」
「よろしく」
「まずクロスボウだけど、使い方は簡単よ。ロングボウとかと違って、簡単に訓練できることから軍人に好まれて使われているわ。まぁ、慣れればロングボウの方が強いんだけどね。
クロスボウを下、地面に向けて。そして先端に足を引っ掛ける器具があるでしょ。それに足を引っ掛けて、弦を引っ張って、カチっとはまったら弓矢をセットしてちょうだい。そしたら敵に向けて引き金を引くだけよ。ね?簡単でしょ?」
「結構引くのが大変ですね・・・」
「うん、結構腕の力を使うよ」
「30秒に1発撃てれば戦力になるわ。最悪1分に1発でも十分よ。フルプレートの騎士もサクサク殺せて、簡単に戦力になれるわ。
あとは、戦う時以外は弦をはずしておいてね、そうしないと伸びて使い物にならなくなっちゃうわ。
もう教えることはそれくらいかしら、木の的を用意したから。100m先にある30cmくらいの大きさの赤い的に連続で当てれたら、もう十分よ。それができたらモンスターを殺して経験値を集めましょう。時間がないからなるべく早くね。はずして接近された時用の近接戦闘も少しだけ教えないといけないから」
「次は俺か?」
「ええそうよ、ショートボウはロングボウより簡単に使えるけど、それでも難しい武器よ。
ショートボウって名前だけど、威力は少なくないわ。剣士がサブウェポンとして背中にしょってるのはよく見る光景ね。」
「剣士なのに、なんで弓なんか持つんだ?」
「バレてない時に先制攻撃として味方と一斉射撃したり、あとは空を飛んだりする魔物もいるのよ。その時に斬撃を飛ばすスキルを持ってないとただ突っ立ってるだけになっちゃうのよ」
「ちょっとまってくれ、斬撃を飛ばすスキル!?冗談じゃない、そんなのと俺は戦うのか!?」
「スキルは皆が持てる物よ、まあ、斬撃を飛ばすスキルを持っているなんて、かなり強いはずだから、スキルを使わないでも殺されるから関係ないわよ」
「半笑いでよくそんなこと言えるな・・・、まあいい、とりあえずショートボウを使えるようにならないと話にならなそうだ」
「よくわかってるじゃない、使い方を教えるわね。
まず持ち手の位置よ、ちょうど真ん中になるようにしてね。
それから弦の真ん中くらいに矢を引っ掛けて、右手で弦と一緒に矢を引いて、ギリギリまで引いたら離すのよ。あの木の的に撃ってみてね。」
ドスッ
「こうか」
「え、なんで最初から当てれるの!?普通じゃないわよ」
「俺は普通じゃないからな、風があまり吹いていないのもよかった。赤い的の左下に刺さったからな、もうすこし風が強かったら外れていた。」
「無風だったとしても、最初から70m先の的に当てるなんて、本当に才能があるのね」
「これくらいじゃ納得できない、もう少し慣れたらハインツ達を誘って、魔物?を殺しに行こうと思う」
「それがいいと思うわ、相手のLvが高くても、技術があれば殺せるわ。でもLvが上がっているにこしたことはないもの。それに的より動く魔物の方が練習になると思う。最悪私が対処するから、死なないと思うしね」
「他人が倒しても経験値が入るのか?」
「"経験"値、だからね、倒す経験はしなくても、戦った経験、傷を負わせた経験が経験値として蓄積されていくのよ。そして、Lvが上がるとスキルが覚えれるようになったり、土地神の関係とか、ステータス画面が充実してくるわ。加護が見えるようになったりね」
「加護?」
「ここの土地神は黒狼神だから、黒狼神の加護がついているはずよ、黒狼神の加護は自然治癒力大幅強化とかじゃないかしら。あんまり深くはしらないけどね。」
「加護の能力を知られるのはまずいんじゃないか?」
「そうね、でも黒狼神は死なずに、いえ、生き返って、何千年も生きているから、能力がバレてもしかたなかったようね」
「森に近寄った者殺していくという伝承は、自分の能力を教えないためだったのかもね。
まあ、今はもう知られている事を知っているから私を殺さないんだろうしね。」
「黒狼神は幼少期になっているんじゃないのか?それでもサラを殺せるのか」
「幼少期といっても神よ?簡単に封印されるわけないじゃない。そんなのだったら何千年も生きていないわ。」
「てことは敵はかなりの大人数か・・・」
「なんで大人数だと思ったの?強い達人が一人かもよ?」
「強い達人相手なんだったら、いちいち俺達なんか訓練しないだろ?」
「あははっ、それもそうね」
「・・・」
「逃げても無駄よ、Lv10になったとしても、森を抜けてどこへ行くのよ。私達の仲間が必ず殺しに行くわ」
「あんた達には攻めてくる敵全員を殺してほしいよ・・・、詮索するのは好きじゃないしもうしないが。
全員で戦った方がいいんじゃないか?」
「無理ね」
「そうか」
ドスッ
もう赤い的には雨のように矢が刺さっていた。赤い所のほうが矢の面積より少なくなっていた
「よし!もう十分だ。時間をとらせて悪かった。魔物を殺しに行くか」
「魔物を殺すのには準備が必要なのよ、矢に毒を塗ったりね。それに他の武器の訓練を練習したりしてる人の訓練がまだでしょうしね、あなたが早すぎるのよ。
それよりも、刺さった矢を回収してきて、修理の方法を教えるわ。」
「たしかに、使い捨てにしてたら金がいくらあっても足りなさそうだ」
「そうよそうよ、高かったんだから」
「金はいろんな国でも流通しているのか?」
「えぇ、さすがに物々交換じゃないわ。通貨自体にも国によって価値が分かれてて、全部の国、地域、価値が一緒なのはゴールドだけね。」
「早く街、というより人に合いたいね。自分で働くのは好きじゃないんだ。早く他人に労働させたいよ」
「この国、帝国には奴隷が存在するわ。奴隷を買ってみたり、奴隷を他の国へ移動して売ったりしてみてもいいかもね」
「商品を売るのに労働させたりはするが、労働できる者を物にするのはもったいない気がするな。
奴隷を買って労働させるのは結構アリかもしれないな」
「普通、異世界の人達はそういう事を嫌がるらしいけど。本当にあなたは普通じゃないのね」
「資本家だったからね、労働も趣味でしていたけど。」
「資本家?」
「ん?資本家とは呼ばないのか。自分以外に労働させて、自分に価値ある物を集めるシステムがないのか?」
「まるで貴族ね、民からお金を搾り取ったりしているわ」
「商店はないのか?ご飯を食べるところは?」
「あるわよ?」
「店員を雇ったりしないのか、自分の体以外の資本で労働生産していたらそれは資本家だ」
「そういうことね、私は店員役か・・・」
「私がお金を集めれたら、君を雇うよ」
「私は今の場所からは離れないわ(というより離れれないんだけどね)」
「そうか」
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ファミリーには血の掟がある。
その中には、脱退しようとしたものには暗殺者が差し向けられ殺されたり、生け捕りにされ拷問されたりする。
また、家族がいる場合、その家族を殺されたりもする。
ファミリーから逃げるという事は、全てを捨てるということだからだ
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「君は若く見えるが・・・何歳なんだ?」
「女の人の年齢を聞くのは失礼なのは知っているわよ?」
「すまない・・・」
「早く回収しましょ」
「木の部分が曲がったり折れたりしたら、他の木と交換しましょ。弦をはずしておいてね」
「もう外してるよ」
「鏃が潰れても、回収してね、また溶かして鏃の鋳造に使う材料にしたりするから」
「わかった。この木はもう折れたから、木を交換したい」
「鏃、羽、木、で矢はできているわ。木に鏃と羽を付けるのはロープを巻けばいいわ」
「1本1本が結構重いよな」
「1本30~40グラムくらいあるわ」
(重さの単位はグラムなのか)
「何本も持つと、結構重そうだな、弓自体は1キロもしなそうなくらい軽いのに」
「矢を運ぶのは意外に大変だったりするわ、馬が疲れたり、襲われた時に遅くて逃げれなかったりね」
「山賊とかもやっぱりいるのか」
「いるわよ、よく村を襲ったりしてるわ、警備兵が到着するまで時間がかかるし、警備兵に賄賂を握らせて見逃してもらったりね。奪うのは布とか、家畜とかよ」
「意外にしょぼそうだな」
「そんな事ないわ、村人にとっては立派な財産ですもの。特に家畜がいなくなると一気に食事事情が悪くなったり、家畜の美味しい部位を売ってお金を作っていたり、家畜はちゃんとしたお金儲けの一種なのよ」
「自警隊みたいなのを作って、守る代わりに毎月金を貢がせたりできそうだな」
「それはマフィアがやったりしているわね」
(私のファミリーも結構広くやってるのよね・・・)
「やっぱりそういうビジネスをやっている奴等はどこの世界でも一緒か・・・」
「どこの世界でも、戦争、争って稼ぐために平和を作って準備するのかもね」
「なんか深いな」
「適当に言ってるだけよ。
ほら、あとは修理しておいて。ここら辺には魔物は近づかないから」
「なんで近づかないんだ?ゴブリンは近づいてきたぞ?」
「召還された場所は聖域って呼ばれて魔物は近づけないのよ、余程大きな力を使わないとね」
「じゃああのゴブリンは操られたりして俺達のことを攻撃したってことか!?」
「そうだと思う、とりあえず、黒狼神を聖域に連れてくるわ」
「あぁ、わかった」
なぜか挿絵が逆になっちゃう(´・ω・`)
足をひっかけて引く。
地面。手で引く。 クロスボウむずかしいって書いてますw