気持ちが集まる場所
すみません、作者…… 夏風邪を拗らせました。
風邪薬のせいもあり、うまく集中が出来ずにこの時間に成りました。
なんとか書いたので宜しければ読んでください。
夕暮れ……寂しく夕日が沈んでいく静かな街並み……
この一刻は朝から賑わっていた飲食店が閉まり、代わりに飲み屋の提灯に火が灯りだす。
御飯処の釜に火が入れられる。夜の繁華街の営業が開始する。
この時間を過ぎると街中を竜馬に乗っては抜けられない。コウヤとワットは急ぎランプが代わり始める街中を駆け抜けていた。
「ゴメンねワット、あと少しだから頑張って」
「クワックワアァァァ!」
コウヤとワットは街中を一筋の風の様に走り抜けていく。
コウヤ達が街を抜け、屋敷についた頃には皆が仕事を終えて、一日を互いに労っていた。
そんな中、コウヤが凄い勢いで屋敷の中に入ってきたものだから皆は慌てた。しかし、コウヤは息を切らせながら皆が集まるその場で買ってきた品を広げた。
其れはマトン達がよく話す御菓子屋の朝限定の焼きがしの詰め合わせ、紅茶のパック、皆の話に度々出てきた品ばかりであった。
「コウヤ、どうしたんだ? こんなにたくさん買ってきて?」
使用人達はコウヤに尋ねるとコウヤが笑った。
「母さんが言ってました「ありがとうを形にするのは難しい、だからこそ、渡す人の事を考えて良いものを渡しなさい、きっと渡された方も自分も嬉しい筈だから」って。だから、僕なりに皆の事をいっぱい考えて選んできました」
次から次に並ぶ御菓子の山を見て皆が眼を輝かせる中、コウヤの後頭部を軽く“ ポンポン ”と叩かれた、その次の瞬間。ゴンッと音が鳴り凄まじい痛みが脳天から背筋に抜けて駆け抜けた。
「いったぁ!」とコウヤが口にして振り向くとマトンが後ろに立っていた。
マトンを見て皆が静まり眼をそらした。
「コウヤ、いきなりですまないが流石に使いすぎだ? 無駄遣いはシアン様に私も叱られてしまう」
マトンにそう言われたがコウヤは今回、間違ったことをしたつもりは無かった。況してや怒られるなんて思ってもいなかった。
「皆に食べて欲しかったんだ……皆と食べたかったんだ、僕はまだ半人前だし、皆に迷惑かけてばっかりで毎日毎日……足手まといにならないように頑張ってるのに空回りで……」
今にも泣き出してしまいそうなコウヤを見て皆が何かを言おうとしたが、マトンはその言葉を簡単に打ち砕いた。
「10歳の子供がたった一ヶ月で同じ様に仕事が出来るわけがないだろうッ!! コウヤ。その為に俺や皆がいるんだ。もし、一月で其れが出来ると考えていたのならば其れは自惚れでしかない。賢いコウヤならわかるな?」
マトンの言葉はキツく、コウヤは心に刃が突き刺さる様な感覚に襲われた。
笑顔になるはずだった。皆の笑顔を考えて皆と笑えるに選んできた。コウヤの中で様々な感情が飛び交う中、マトンはコウヤの頭を優しく撫でた。
「コウヤ、お前は賢い。人並み以上に気を使う事は悪い事じゃないんだ。今回も素直な気持ちなのだろうが新人は新人らしく学びなさい。いっぱい叱られて悔しさや辛さも含めて心のバネとして考えなさい。そして、全ての経験を活かして未来を描く活力にしなさい。我等は家族の様な物だ。行き過ぎた気遣いは無用なんだ、わかるな?」
マトンの言葉にその場にいて喜んでしまった者達がコウヤに謝った。
「ゴメン、俺……コウヤの行為に素直についてるって喜んでた」
「俺もだ、恥ずかしい」
そんなぎこちない雰囲気の中、マトンがキッチンに向かい歩き出した。そして、冷凍室から大量の “ ブリュレ ” を取り出した。
更にマトンがコウヤに「買ってきた焼き菓子をブリュレに添えてくれ」と言った。
其れを聞き皆が笑いながらテーブルをあける。そしてカップにソーサーが綺麗に並べられ次々にナプキンが並べられる。
余りに綺麗な身のこなしとリズムに乗った動き、軽やかなステップは1つの完成されたダンスの様にテーブルを皆が囲みあっという間に御茶会の用意が整っていく。
全てを用意が整うと同時にコウヤの買ってきた紅茶がカップに注がれていく。
前後から次々に注がれる紅茶は1滴のズレもないまま正確に次々グラスを潤していく。
「コウヤ、俺は余り口が達者ではない。だから辛く聞こえるだろうが、俺はお前を家族の様に感じている。今日はキツい言い方をしてしまった。すまない」
マトンが皆に聞こえないように小さな声でそう言う、マトンは気づいていなかったがマトンは声がもとより大きい、小さく喋っても皆に丸聞こえだった。
皆の方を向くコウヤ。その目線と眼を合わさないように気を使う使用人達。暗黙の了解だとコウヤにも理解できた。そんな最中、全てをカップに紅茶が注ぎ終わり、皆が席に着く。
「今回はコウヤの計らいもあり、いつもより豪華な “ 月の日の御茶会 ” になった。皆、コウヤに感謝だ!」
皆がコウヤに拍手を送る。コウヤは何がなんだか、わからないまま呆けていた。
マトン達は月に1度、給料日の日に休みの者が皆の御茶会の御菓子を買いに行き、皆で一ヶ月の疲れを癒そうと言う御茶会が開かれていた。
その為コウヤにも何が好きかを調べる為に皆が御菓子や紅茶の話を必要以上にふってしまっていたのだ。
結果はとても素敵な御茶会になっていた。マトンの優しい気持ちと他の使用人達の暖かさが確りと詰まった御茶会は皆の笑顔のままに終了した。
そして、コウヤは別館に寄っていた。目的はラシャとミーナにプレゼントを渡す為であった。
ミーナには綺麗なブレスレットをラシャには美しいブローチを買っていた。
二人は包みをあけるなり、互いのプレゼントを見せ合い笑っていた。
「そろそろいくね。明日も仕事があるから、二人ともおやすみ」
「たまには泊まればよいのに?なんなら私の部屋で一緒に寝ても良いのだぞ?」
ラシャの発言に顔を赤くするコウヤ。
「まったく、コウヤも本気にしたらダメよ? ラシャはコウヤの何十倍も年上なんだからね?」
「ミーナとて! 年齢的にコウヤの上であろうが抜け駆けなど赦さぬぞ!」
訳の分からない喧嘩を始めたので慌てて外に出たコウヤは空を見上げた。
星が空一面に輝き、まるで全てがちっぽけな存在だと言わんばかりの眩しさに明日も頑張ろうと心に決めたのだった。
明日も書けたら更新します。
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↑此方の更新も出来れば頑張ります。
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