コウヤの魔界生活
魔王のシアンの登場はコウヤ達を更に成長させるのか?
そして、コウヤの人生初の挑戦が……
皆様、いつもありがとうございます。
たまに前書きの使い方を間違う作者です。
第二部の魔界編スタートしました。
これからもよろしくお願いいたします。
パンプキンとシアンの打ち合いは結局、決着はつかなかった。互いに笑いながら武器を収めると握手を交わし、互いに力を確めた事を実感しているようであった。
実際にパンプキンとシアンの戦いを見たコウヤは目が放せなかった。次々に繰り出されるパンプキンの大鎌をシアンの巨大な首斬剣で受け流し、パンプキンに斬り掛かる凄まじい攻防にコウヤは震えていた。
コウヤの興奮は試合後も収まらなかった。ミーナとラシャはそんなコウヤを見て、少しホッとしていた。
コウヤはソウマの死後、記憶を無くし記憶がもどるもコウヤは自身の変化に戸惑い、感情を余り出していなかったからだ。
今、試合を見ながら興奮するコウヤの姿は紛れもなく10歳の少年であり本当の姿なのだと二人は感じていた。そんなコウヤの元にパンプキンとシアンが姿を現した。
「どうだぁね? トーラス君、楽しめたかい?」
「はい、すごかったです! 目が放せなかったです」
それを聞きシアンとパンプキンも笑みを浮かべた。
「今日は私が魔界を案内してあげるぅよ、私が案内すれば魔界を何倍も知ることが出来るだろうからぁね」
コウヤ達は、シアンの申し出に感謝した。そして、魔界見物が始まったのだ。シアンが最初にコウヤ達に案内したのは服屋であった。
「先ずは此処で服を選んでくれ、大変言いにくいのだが、流石に人間の血の臭いがキツすぎるんだぁよ、魔族には余りに刺激的すぎるんだぁね」
シアンはなるべく言葉に気を付けながらそう口にした。事実、コウヤ達の服は人間との戦闘でかかった血液の跡がまだ落ちきっていなかった。
そんなコウヤ達の服を楽しそうに選ぶシアンは魔王と言うより、まるでお父さんと言う感じであった。
次々にコウヤの服を探していくシアン。
ミーナには、女の魔族が服を探し、ラシャの服はアルカが探していく。
ミーナはシンプルなワンピース。ラシャはアルカの強い要望でミニスカートにラフな上着。
コウヤはシアンの選んだスーツ風の服装になった。コウヤの服を見たミーナとラシャは驚いていたが、それ以上にコウヤが驚いたのは服の動きやすさであった。
シアンが選んだスーツ風の服は関節の部分に伸縮素材を使われていて走ったりしても何ら違和感がなかった。
「さあ、次は街を案内しようじゃないか」
シアンは街の中を案内していく。雑貨などを扱う一角には、コウヤ達が見たことの無いものがところ狭しに並び。鳩時計、シャボン玉、紙芝居、コウヤ達は歩きながら気になる物を見つける度に足を止めて見いっていた。
住宅街に入ると屋根はカラフルな色が使われており、まるで絵の中に入っているような不思議な世界が広がっていた。全てに驚き、眼を輝かせるコウヤ達をシアンは優しく見守っていた。
そんな時、住宅の中から一斉に音が鳴り出す。コウヤ達は警戒したがシアンはそれを見て笑っていた。
コウヤ達が『え?』と言う顔をするのを見てシアンが口を開いた。
「あれは午後の3時を知らせる音だぁよ、さっきの鳩時計と同じものだぁね」
コウヤ達は魔界の文化に驚かされてばかりだった。
魔界の時計は、朝6時、昼の12時、午後の3時、夕方の5時に鳴るとシアンに説明された。
「3時だぁね? 御茶にしようじゃないか? 皆は甘いものは大丈夫かぁね?」
皆が頷くとシアンは其のまま小さなお店に案内した。
看板には『カフェのコバヤシ』と書かれていた。
「カフェ?」
聞きなれない言葉にコウヤは不思議そうに首を傾げた。
「入ってみればわかるさぁ、さあ、入って入って」
中に入るとほろ苦い薫りがコウヤ達を出迎えてくれた。
シアンが六人掛けテーブルに腰掛け、人数分の注文をする。その際、皆に珈琲とココアのどちらにするかを尋ねた。
どちらも飲んだことがなかったコウヤが悩んでいるとシアンがマスターに2つ頼んだ。
テーブルに並ぶ、タルトと珈琲にココア、甘くほろ苦い薫りが鼻を擽るようように体の中に薫りを運び込んでいく。
シアンが「食べてみるだぁね」と優しく微笑み、タルトを食べる。クラッカの作ったタルトに負けないくらい美味しかった。そしてコウヤは珈琲を其のままで飲んでみた。
皆が「あ!」と言う顔をする。
コウヤは余りの苦さに渋い顔をする。
「あはは、駄目よ? コウヤ、初めは砂糖とミルクを入れないと苦いわよ」
ミーナが砂糖とミルクを足していく。そして再度、コウヤが珈琲を飲んだ瞬間、コウヤは凄く幸せな気持ちに包まれた。
「美味しい! 凄いや、さっきは苦いだけだったのに」
其れを聞きマスターもその場にいた皆も笑顔を浮かべた。コウヤはタルトに珈琲とココアを満喫した。
街の案内が大体終わった頃、大きな鐘の音が魔界の夕焼けに照らされた街に鳴り響く。
「おやおや、あっという間の時間だったねぇ? そうだ! 私の屋敷で夕御飯を一緒にどうかね? 私は君達が気に入ったぁよ」
そう言うと直ぐにシアンの屋敷に通された。シアンは魔王であるが魔界の城には住んでいない。
魔界の城は食糧などの貯蔵に使い、シアン本人は住宅街から離れた森の中に巨大な屋敷を有していた。
そして、夕御飯が出来るまでの間、コウヤの話を聞きたいと言われ話す事になったのだった。
次回はコウヤの話を聞いた。
シアンがある提案をします!
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