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力を望みますか?

皆様、少し早めの投稿になっております。


いよいよ、人間とエルフ、そして禁忌の森エレに住む全ての者を巻き込む戦いが始まる今回、読んでいただけたら幸いです。

「ランタン、直ぐにコウヤと子供達を王宮の地下に! アルカは直ぐに全員に戦闘準備をさせなさい! 急いで」


 いきなりざわめき始めた王宮内は直ぐに武装したエルフ達により臨戦態勢が整えられる。


「直ぐに森の住人達に王宮に向かう様に伝えなさい!私も出ます。ミーナ、ランタン、コウヤを頼むぞ」


 ラシャはアルカとセラと共に森から王宮に向かう住人達の元に向かおうとしていた。


「ラシャ? まさかアナタ」


「勘違いするでない! コウヤには、まだお説教が残っておる! 妾が帰るまで逃げないようにしっかり見ていろ」


 ラシャはそう言うと馬に跨がりエルフ達と共に戦場に駆け出した。本来ならばパンドラを使い人間を対象にすれば終わる戦いであった。しかし、ラシャはコウヤを巻き沿いにする可能性が否めない以上、パンドラを使わなかったのだ。


 ラシャ達が逃げてくる住人達を護衛しつつ、戦士の雄ゴブリン達は剣と弓で応戦する。

 しかし、人間は森を埋め尽くさんとする大部隊で一気に蹂躙じゅうりんを開始ししはじめた。

ラシャの周りにも被害が出始めていた。


「くそッ!! 人間が調子にのるなァァァ! ハアァァァァ!」


 ラシャが次々に敵を仕留めていく中、気配を消しながら王宮に近づく部隊があった。彼等は全身に気配を消すロストアーツの布を纏い、エルフ達の眼を誤魔化しながらゆっくりと確実に王宮へと進んで来ていた。

 王宮の守りをエルフ達に任せたパンプキンがラシャの救援に王宮を飛び出すのを偶然にも確認した彼等はチャンスとばかりに進行速度をあげていった。


「まさか、あのカボチャ頭が要るとは、急いで探し物を手に入れるとしよう」


 彼等は布を取り王宮の中に侵入したのだ。侵入した部隊はユハル=カサナム 本人が指揮する部隊であった。

 ユハルは、ディノスからの緊急連絡の真意を確める様にアグラクト王からの命令を受け訪れたカルトネで偶然、感じたコウヤの持つロストアーツ、“瑠璃色の石”を先に奪いに来たのだ。


「全員ぬかるな! 王宮の警護エルフは手強い筈だ。行け!」


 ユハルの掛け声に直ぐに兵士達は王宮内のエルフに奇襲を掛け始める。王宮内には警護のエルフの他は女、子供ばかりであり、他に戦える者はミーナだけであった。


 ミーナが異変に気づき地下の扉を少し開き王宮の様子を確認すると廊下には倒れたエルフ、ゴブリンやオークと言った戦えない者達迄も容赦なく斬りつける人間の姿が眼に飛び込んできた。ミーナは直ぐに扉を閉めると鍵を内側から施錠した。


 既に、上の人達は全滅したとそう思っていた。だが、逃げるような足音が扉に近づいてくる。


「助けてぇぇぇ、やだよ! 誰かぁ」


 子供の声だった。必死に逃げている足音が段々と此方に向かってくる。


「く……見捨てる訳にはいかないよね、コウヤならきっと扉を開く!」


 直ぐに扉を開くと逃げていたゴブリンの子供の手を扉の中に引き入れた。


「早く下にいきなさい。静かにしてるのよ」


 子供は頷くと下に向かっていく。


 しかしミーナが扉を開くのを人間に見られていた。そして、ユハルは直ぐに地下室の扉を破壊するように命令を出した。


 激しく魔法がぶつけられ始めるとミーナも急ぎ、コウヤ達の元に向かった。階段を下まで降りた辺りで扉が壊された音が地下に鳴り響く。そして直ぐに人間達は地下に降りてきたのだ。


 皆が震え、怯える最中、ミーナは一人落ち着いていた。コウヤ達に絶対に声を出さないように言うとミーナは防壁魔法を使いコウヤ達の前に壁を作り出していく。


「ミーナちゃん! 何するの、ミーナちゃん!」


 壁が完成するまでのたった数秒コウヤの声がミーナに向けられる。ミーナはニッコリと笑った。


「大丈夫よ。きっとまた会えるわ」


 そして、防壁に塞がれたコウヤ達に無音の魔法を発動した。それにより、コウヤ達の声は外にもれない。


 ミーナは“ライエス”を使いパンプキンに伝言を残した。


『コウヤ達を迎えに来てあげて…… 此処は何とか食い止める』


 パンプキンが其れをしり直ぐに王宮に戻ろうとする頃。地下室の壁の隙間からコウヤは必死に人間と戦うミーナの姿を観ていた。


 声を出しても届かない、壁を叩いても壊れない。

 必死にミーナに向けて叫び続けていた。


 次から次に倒しても現れる人間にミーナの体力は限界であった。そして……人間の一人が剣を抜きミーナに斬りかかろうとした瞬間、コウヤの時間がまるで停まったように遅くなった。目の前の光景はまるでスローモーションの様にゆっくりと動いていた。


『お願いだ…… ボクはもう逃げないから、君を一人にしないから』


『お兄ちゃん、ミーナちゃんを助けて、ミーナちゃんが死んじゃうよ…… 』


『わかってる。ボクと君は1つの存在なんだ、さあ、一緒にミーナを助けよう』


『うん! お兄ちゃん、ミーナちゃんをよろしくね』


 二人のコウヤが手を繋ぐと感情が1つになり、記憶が繋がっていく。しかし既に、剣はミーナの直ぐ目の前まで迫っていた。


「まだ間に合う! ウオォォォォォ!」


 コウヤが体外魔力を集めた瞬間に瑠璃色の石が輝きだしたのだ。そして、時間の流れが緩やかに変わった。


『あなたは力を望みますか?』石の中から女の声がした。


「今は其れどころじゃない! 後にしてよ」


 子供達からすれば、いきなりコウヤが独り言を言い始めたように見えたことだろう。


『あの者を助ける力が欲しいですか?』


「ああ、助けたいよ! だから今はボクに喋り掛けないでミーナを助けるんだ」


『わかりました。貴方の望む力をあたえましょう。

人を恨む者よ、汝もまた人間であった事を忘れないで下さい』


 その瞬間、体外魔力を遥かに超える魔力が体内に流れ込んできたのだ。そして、コウヤは直ぐに正面に迎い、風魔法を発動した。風は刃となり、防壁を切り裂き、そのまま一直線にミーナを斬りつけようとした人間の腕を縦に切り落とした。


 人間は何が起きたか気づいていなかった。降り下ろした腕が軽いと違和感を感じ見た瞬間に自分の腕が風と共に無くなっていた事実に気づかされた。


「うわぁぁぁぁ腕が俺の腕が!」


 そして、壁の向こう側にミーナと人間達の視線が向けられた。砂埃が舞い散りよく見えないがそこには確かに人影が立っていた。


コウヤにいったい何が!


次回コウヤの感情が燃え上がります!

読んでいただきありがとうございます。

感想や御指摘、誤字などありましたらお教えいただければ幸いです。

ブックマークなども宜しければお願い致します。

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