瑠璃色の輝き 襲い来る最悪
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今回も作者なりに頑張ってます。
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ラシャは、禁忌の森に対する攻撃がいきなり止んだことに違和感を感じ始めていた。
「此処のところ、人間達が静かだ」
「そうですねぇ、ラシャ様の恐ろしさが分かって。やっと諦めたんですかね?」
ラシャとアルカの何気ない会話。同じようにミーナとパンプキンも同様の違和感を感じずには要られなかった。
この場にいる全員が人間の貪欲さを知っていたからだ。
人間は自分の欲を満たす為の執着心は他の種族に類を見ない程に貪欲である事実は否めない。この世界に人間より貪欲な生き物などいないからだ。
皆が深刻な表情を浮かべる最中、コウヤが走ってきた。
「ねぇ見てみて! ゴブリンとオーク達と取ってきたんだよ!」
コウヤは未だに記憶が戻っていなかった。そんな無邪気な少年に戻り森から果物をもいで帰ってきた。余りに無邪気に笑うコウヤを見ているとラシャ達の人間に対する敵対心も和らぐ様であった。
「コウヤ! あれ程、この果実を勝手に取ってはダメだと言っただろう! 此れは危ない物なのだぞ?」
「ラシャちゃん、ゴメンね…… でもスッゴく! 美味しいんだよ」
「コウヤ、食べたのか!」
ラシャは凄い勢いでコウヤに迫り壁まで追い込んでいく。
「た、たべた……」
逃げ道がなくなり素直に白状するとラシャは少し困った表情を浮かべた。
「コウヤ…… はぁ、今日は大人しくしておるのだぞ、よいな?」
少しキツめにラシャはコウヤに釘を指した。
「ラシャ、あの果物はなんなの?」
ラシャがコウヤに対して余りに過剰な反応をしたのが気になっていたミーナはそっと果実がなんなのかを尋ねた。
「あれは、魔力が低い魔物や魔種族と言った、ゴブリンやオークが食べる果物だ」
ミーナはそう聞いて更に不思議そうな顔を浮かべた。
「1つ食べれば魔力を大幅に上げることが出来る魔力の実と言う果実でな、果実が食べれるように成るまで10年は掛かる……しかも森を凍らせた際に殆どの果実がダメになってしまった」
「つまり、ゴブリン達の分をコウヤが食べちゃったのね、悪いことしたわね」
話を聞きミーナから謝罪の言葉が出たがラシャは溜め息をついた。
「はぁ……違うのだ。自身の持つ基本魔力値を超えた魔力を手にすると魔力の暴走が起きるのだよ。つまり、この果実自体、管理下でしか与えられない危険物なのよ」
ラシャは直ぐに果実を取りに言ったゴブリンとオークを探し始めた。幸い直ぐに果実を取りに言ったゴブリン達は見つかった。オークとゴブリン達もラシャに果実を返そうと王宮に向かっている途中だったのだ。
コウヤと共に果実を取ったゴブリンとオークの子供は幸いにも無罪放免となった。本来ならば果実泥棒は死罪も有り得た。しかし、コウヤが泣きながら彼等を庇ったのだ。
「ラシャちゃん、ボクが悪いの! ボクが二人に果物を取りに行こうって言ったのだから二人を許してあげて!」
そんなコウヤの横の部屋にいた二人もまた、同じようにコウヤを庇った。
「違うんです! コウヤは悪くない……俺たちがち ゃんと果実の種類を知らなかったのが悪いんです、だからコウヤは許して下さい!」
ラシャが呆れる程にコウヤの周りには多種多様の種族が集まるようになっていた。
そして、ラシャ達エルフも知らぬ間にコウヤを中心に物事を考えるようになっていたのである。
「不思議なものだな、ランタン。あのコウヤと言う人間に我等、禁忌の森の住人すべてが魅了されてしまっている」
ラシャの言葉にパンプキンは頷いた。
「コウヤさんは“瑠璃色の王”なのですよ」
「瑠璃色の王、何だそれは?」
ラシャの聞き覚えのない言葉だった。
「ロストアーツの1種です、ラシャの持つパンドラと同様の力があると言えば、分かりやすいでしょう」
パンプキンの語る『瑠璃色の王』
瑠璃色の王は数多の種族を従え災いを消し去る種族を超えた王であり、種族の数だけその輝きを力にし、民を助ける神の使いである。しかし、瑠璃色の王は遠い過去に消滅したロストアーツの一つであり、今は語り継ぐものは僅かになった失われた王であり人間界で知るものは殆どいない。
「コウヤが皆の中心だからって、その“瑠璃色の王”だって決めつけるのは軽率ではないか?推測で物を言うタイプでもあるまいに、ランタンらしくもない」
「コウヤさんは間違いなく、選ばれた王ですよ。我等、魔族が待ち望んだ存在です」
その言葉にラシャは妙な説得力を感じた。推測だけでは物を語らないのがランタンと言う存在であり、コウヤが持つ瑠璃色の石がその証だと確信していた。瑠璃色の石には既にコウヤの意思とは関係無く魔力が溜まり始めていたからだ。
コウヤの魔力を蓄えた瑠璃色の石がゆっくりと覚醒していくのをパンプキンはロストアーツを通して感じていた。
パンプキンとラシャが話をしている最中、アルカが慌てて部屋に飛び込んでくる。
「ラシャ様! 大変です。三方向から人間達が禁忌の森に侵入、森の民と交戦しながら王宮に向かってきています」
クレアルバディア共和国、デノモルグルド帝国、そして、アグラクト王国は一斉にエレに向け侵攻を開始したのであった。ラシャ達の恐れていた一番最悪な状況が現実になりエレに襲い掛かったのだ。
瑠璃色の王の事実を語るパンプキン、そして三国からの魔の手。
物語も段々と真実に近づいていきます。
次回も読んで下さいね。(*^^*)
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