人間の罠 森への侵入者
昨日は更新が出来ず、すみません(><
また今日から頑張ります。
コウヤは酷い顔面の激痛で目を覚ました。するとミーナがベットに駆け寄ってきた。
「コウヤ大丈夫、本当にごめんね」
心配して今にも泣き出しそうになるミーナの顔を見て何があったか思い出した。 ミーナの強力な一撃を食らって気絶したのだ。
ラシャとミーナは一時休戦してミーナに遣られたパンプキンとコウヤを王宮に運んでくれていた。
パンプキンは直ぐに意識を取り戻したらしく隣のベットにはいなかった。そして、ミーナは顔面に回復魔法を使い腫れや痣などを治してくれていたのだ。そのお陰で顔面には、傷ひとつ残っていなかった。
コウヤが起きたのに気づきソウマ達が次々に部屋の中に入ってくる。その中にラシャの姿があり、少し申し訳なさそうに見ているラシャはパンプキンに背中を押され、1歩前に出てきた。
「あの、ありがとう……いきなりだから、避けられなくて……助かりました……」
そう言い軽く頭を下げるとラシャは、またパンプキンの後ろに隠れてしまった。表情と性格がまるで別人の様に代わるラシャを見てコウヤは少しラシャがどんな人物なのか興味が湧いていた。本当に噂に為るほどの残酷な人なのだろうかと、コウヤからすれば普通の人にしか見えなかったからだ。
パンプキンはそんなコウヤの考えを察したのか、軽くラシャの事を説明してくれた。
「ラシャは自分の中に複数の感情を個別に分けて要るのです。なので残酷な時はより残酷に、明るい時は更に明るく、っといった感じに感情を1つに絞る事でラシャは自分を保ってきたのです」
ラシャはパンプキンと出会ってから、自分がエレに住むエルフを殺してしまった事実を受け入れるようになった。それは幼いラシャにはとても耐え難い程残酷な現実であり、1つ乗り越える度にまた1つ精神が溶けていくような、幻覚と死んでしまった仲間達と目の前で朽果てた父バルドの声に毎晩苛まれていた。
其れから数年後、次にパンプキンがラシャの元を訪れた時、ラシャの精神は既に分担され、感情を上手く出せなくなっていた。幸いだったのは感情の全てが同じ記憶を共有していたことだった。
ラシャは多重人格と違い記憶がハッキリしている事実があればこそ、生き残りのエルフ達も未だにラシャを信用して着いて来ていたのだった。そしてパンプキンはコウヤにある忠告をしたのだ。
「あまり、気に入られないように注意してくださいね、ミーナさんとラシャが喧嘩をすると少々厄介ですからね」
やけに意味深な言葉をパンプキンに言われ、少し気を付けようと思っていた矢先に事件が起きた。
その日の晩に30名程の人間達が結界の中に侵入してきたのだ。ミーナがそれに気づき直ぐにコウヤの元へと走ってきた。
「コウヤ、大変! 森の中に沢山の足音が入ってきた」
慌てるミーナの様子からして、ただ事ではないと直ぐに分かった。
皆の元に急ぎ駆け付けるとラシャとアルカ、そして他のエルフ達が集まっていた。皆が武器を持ち、禁忌の森に入ってきた者達を確かめるべく、心眼を使い森を通してその姿を確めると其れを噴水に写し出した。
そこには黒1色を全身に纏い、中には鎧を装備し腰には剣を携えた屈強な男達が写し出されていた。
「疑う余地はありませんね、侵入者を此れより駆逐する! 一人も逃がすな、逃がせば次は10倍になり、それは100倍にも膨れ上がり我等に襲い掛かるだろう! 我等に降りかかる火の粉は全て消し去るのみだ。行くぞぉぉぉ!」
「「「はいッ!!」」」
ラシャの言葉にエルフ達は次々に森の中へ向かっていった。そしてラシャも皆と共に森に入っていったのだ。しかし其所には、ラシャ達にとって最悪の展開が待っていたのだ。
ラシャ達は侵入者を次から次に始末していった。
禁忌の森に於いてラシャ達以上に戦える種族などいなかった。エルフが活動を開始した途端に森から他種族は全て身を隠し、エルフ達の眼から逃れるように息を殺していた。
名実共にラシャは絶対の女王であった。
そんなラシャ達の前に30人余りの部隊が太刀打出来る訳もなく、呆気なく敵部隊は全滅した。しかし、持ち帰られた彼等の遺体から覆面を剥がしたラシャ達エルフは絶句した。
その覆面のしたにあったのはエルフの姿だった。次々に覆面を剥がすが全てエルフだったのだ。
「な、なんなのよ! 此れは…… いったい…… 何故、エルフが禁忌の森であるエレを襲うのよ!」
ラシャはコウヤ達がいるのを忘れ取り乱し大声を上げながら部屋をずっと歩き回り落ち着きがなくなっていた。ラシャの動揺は無理もなかった。
エルフが他のエルフの住みかを襲撃するなど、前代未聞だったからだ。更に言えばそのエルフ達と会話もせずに殺してしまったのだからラシャ達の精神に与えたダメージは計り知れないものであった。
そんな中に更に森の中に進行してくる部隊があった。
「コウヤ、また森に足音がいっぱい入ってきたわ」
ミーナに言われ体外魔力を使い侵入者達を確認する。そしてコウヤは自分の眼に写る光景を疑った。其れと同時にラシャも心眼を使い侵入者を確認していた。
「今度は覆面無しね、エルフじゃないなら! 容赦しない…… 人間達にさっきの御礼をしてあげなくちゃ…… 」
ラシャの顔付きが変わりエルフ達と攻撃に出ようとしていた。其れをコウヤが引き止めたのだ。
「少しだけ、待って…… 」
ミーナは明らかに動揺するコウヤを見て自分でも体外魔力を発動し侵入者達を確認しすると、そこには紛れもなくコウヤのクラスメイトとロナ達の姿が其所にはあったのだ。
「コウヤ、これって現実よね、何であの子達が禁忌の森の中に入ってくるのよ」
そんな二人を他所にラシャは、エルフの軍勢を今にもロナ達の元にぶつけようとしていた。必死に止めようとするコウヤの言葉はラシャには既に届いていなかった。
「くそ、どうしたらいいんだよ、このままじゃ駄目なのに」
その言葉ではラシャ達を止めることは出来なかった。時間がない中でパンプキンがラシャにある提案をしたのだ。
「ラシャ達が行くまでもありませんよ、人間の始末は人間がつけるべきです。コウヤもそう思いませんか?」
パンプキンがいきなり口にした言葉の意味がイマイチ分からなかったがミーナが直ぐにコウヤの手を引きラシャに向かい口を開いた。
「私達が確りと追い返すわ! 黙って見てなさい。いくわよコウヤ!」
「え、ちょっ! ミーナ」
ラシャに反論の隙を与えないミーナの早業で何とか部屋から出る。そして二人は森の中に走り出したのだった。
コウヤとミーナが向かう先にある真実が次回で明らかに!
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