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亜人と歩む ~瑠璃色王のレクイエム~  作者: 夏カボチャ 悠元
第3章 外の世界 カボチャな魔族パンプキン
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物流都市にて3

皆様のお陰で10000PV突破しました。ありがとうございます。


此れからも頑張りますので、『ボクセカ』をよろしくお願いいたします。

 喜んでいたコウヤ達の元に聞こえてきた赤ん坊の泣き声

「おギャーオギャー」


 直ぐ近くでもう一つの叫び声が聞こえコウヤは耳を疑った。


「あ、紅眼だーー! 紅眼が産まれたぞーー!」


 その声は雑貨地区の裏にある居住区の方からであった。コウヤがその声に反応して走り出す。


「行っては駄目です! コウヤさん」

「待ってコウヤ! 追うわよパンプキン!」


 二人がコウヤの元に向かうと其所には……


「何で……」


 コウヤはその場に立ち尽くしていた。



 居住区に着き声のした方向に近づいていく。若干の鉄臭さが鼻につく。扉が開けられたままの建物が見え、急がなくちゃ行けないと只其れだけを考え、部屋の中を覗くコウヤ。


 室内には湯が沸かされタライで産まれてきた赤ん坊を洗ったのだろうか、お湯には血を洗い流した後があった。血生臭い香りが鼻に残る部屋の奥に血だらけの女性が倒れ、その横には子供も一人倒れていた。


「大丈夫ですか! 直ぐに医者を呼ばないと」


 コウヤの問い掛けに、母親と思われる女性は反応がなかった。急ぎ少年の側に駆け寄ると何があったかを聞く。 少年は涙を流し、かすれた声でコウヤに訴えた。


「妹が……殺され…ちゃう」少年はそう呟いたのだ。


「君、君ーー! 確り直ぐに診療所に連れていくから!」


 その問い掛けに反応は無かった。


 必死に呼び掛けたが少年の眼がうっすらとぼやけ始めた。コウヤは少年を引きずり、建物の外へと連れ出した。そしてコウヤの眼にある光景が飛び込んできたのだ。

 其処には、産まれたばかりの赤子を押さえつける男と其れを見る野次馬が集まっていた。


「何で……誰も助けないんだ!」


 コウヤは一気に走りだすとその行為を止めに行こうとした。しかし次の瞬間、後ろから肩を掴まれ制止されたのだ。


「御待ちなさい。今行けばコウヤさんも巻き込まれます! 私に任せてください。それと先程の指輪を御貸しください」


 コウヤを制止したパンプキンの言葉を信じるしかなかった。

 コウヤは走ったつもりだったが、足が震えて走れずにいたのだ。赤子を押さえる男の腰にナイフが見えた途端に意思とは関係無く、足が震え冷や汗を欠いている自分に気づかされた。


 急ぎ指輪をパンプキンに渡しその指輪を着けたパンプキンは空高く舞い上がった。


 そして、被っていたカボチャを外したのだ。太陽に重なったパンプキンは、その姿を変えていく、それは誰もが知る、死を司る魔族『メセルイブリーフ』


 怪物のような巨大な姿をした魔族がいきなり現れたのだ。


ーーメセルイブリーフーー


 その姿は野獣と言うよりは、巨大な獣人の様な姿をしている。普段は四足歩行で移動し、そのスピードは竜馬にも劣らない。身長は五メートルを越える。


 特長は鋭い牙と全身を覆う紫の獣毛じゅうもうは、鋼の様に硬くあらゆる武器を無効化する。

更に魔法に対しての耐性が強く上位魔導士であっても、判断を誤れば死に繋がる。

 だが、一番の問題は、その常識外れな回復能力にあった。過去に1つの街がメセルイブリーフの子供を生け捕りにした事があった。怒り狂ったメセルイブリーフの親に襲撃され一晩の内に火の海に包まれ何万人もの死者が出たのだ。

 普通ならば、魔界と人間と間に交わされた契約により、人に与えたダメージをそのまま受ける。

 メセルイブリーフは何万人分の死者が出たにも関わらず自身の持つ回復力だけで戦い抜きそして、子供を助け出し街から姿を消した。


 そんな化物が昼下がりのダンジルに地響きと共にいきなり現れたのだ。


「メ、メセル…イブ、リーフ…」


 男は自身の眼を疑った。だが、それは間違いなく目の前にいるのだ。それに気づいた者達は慌てふためき、その場から急いで走り出す。


 赤子を押さえていた男もその手を揺るためた。次の瞬間、赤子は大声で泣き出したのだ。


「オギャー!オギャアァ」


その声に男は我に返る。そしてナイフに手を伸ばしたのだ。


「ヤメローー!」


 コウヤは無我夢中で男に飛び掛かった。男が体勢を崩すと透かさず、コウヤはダルメリアで覚えた闇魔法を使ったのだ。


「我に力を貸せ黒き夜の加護よーー!」


 その瞬間辺りが一瞬で暗闇に包まれたのだ。その隙にコウヤは赤子を抱き抱えると急ぎ走り出したのだ。


「コウヤ此方よ!」


 ミーナがワットと共に此方に向けて走ってきたのだ。そのままワットに跨がると直ぐに二人その場を離れた。


 その際に男が叫んでいた。


「アイツは紅眼は何処だーー俺のガキが紅眼なわけがねぇーー! 何処行きやがったーー!」


 その言葉に悲しくなった。あの男が赤子の父親だったのだ。


「こんなの間違ってるよ、間違ってるよーー!」


 赤子を抱き締めながらコウヤは叫んだ。


 そしてコウヤ達が走り去ったのを確認すると、メセルイブリーフも黒い霧に包まれた。そして黒い霧は凄い速さで人混みを通り抜けていく。

 人々は慌てて頭を低くして体を丸くした。頃合いを見計らいパンプキンは元の姿に戻り更に指輪の力を使い別人に姿を変えたのだ。コウヤ達を見つけるとパンプキンは指輪を外し急ぎ合流した。


「急ぎ町を出ましょう」


パンプキンはそう言うとコウヤに指輪を渡した。


「そうだね、急ごう…アンデットの事も調べたかったけど、今は直ぐにこの町を出たいや……」


 その言葉に二人は頷いた。


「その前にコウヤさん此方に来てくださいますか、今から此処に入ってもらいます。いきますよ!」


そう言うとパンプキンがポケットにコウヤと赤子を吸い込ませたのだ。


「うわぁぁぁぁ」


 コウヤと赤ちゃんはポケットの中に吸い込まれたのだ。


「あ、あんた! 何してるのよ! コウヤ大丈夫! コウヤーー!」

 ポケットに向かい叫ぶミーナの声はポケットの中にこだました。


悲しかった……でも僕よりも……この子の方が辛いんだよね……哀しいよね辛いよね……でもね、君のお兄ちゃんとお母さんは君を愛してたんだよ……


次回は、コウヤと赤ちゃんがポケットの中で……


読んでいただきありがとうございます。

感想や御指摘、誤字などありましたらお教えいただければ幸いです。

ブックマークなども宜しければお願い致します。

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