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亜人と歩む ~瑠璃色王のレクイエム~  作者: 夏カボチャ 悠元
第1章……人獣転生……全ての始まりへ
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運命の出会い

 その日、コウヤは普段よりも早く目を覚まし何時ものように手探りで窓枠に手を掛け窓を開く。

 朝の澄みきった空気を吸い静かに吐き出す。


「よし、今日は楽しむぞ!」と声に出し笑みを浮かべている。


 朝から興奮している理由は年に一度の村祭り。


 その日、コウヤは初めてロナと一緒に村祭りに行く事になっており、前日から興奮が収まらず眠りも浅かったが其よりも“楽しみ”と言う気持ちがあふれだしていたのであった。


「本当に大丈夫なの、やっぱり母さんも行こうか?」


 何時ものように包帯を交換するミカはコウヤの事を気に掛けながら、心配そうに呟く。


「大丈夫だよ、それにロナも一緒だから安心してよ母さん」


 心配そうに見詰めているミカは包帯が取れぬように再度、結び目を確認する。

 

 そんなミカも、元気な声と共に扉が叩かれ、ロナが迎えに来ると少し落ち着いた様子で笑みをつくる。

 それから軽い挨拶を済ませ、杖をコウヤに渡すと二人を祭へ笑って送り出し手を振るミカ。


 外に出るとロナは鼻唄を歌いながらコウヤの横で上機嫌であった。


「ほら、コウヤ行くわよ。早くしないと“りんご飴”なくなっちゃうよ?」


 そう言われ早歩きで坂の下に向かって歩くコウヤ。

 坂を下りると川沿いの道があり、道なりに進めば村祭りの会場がある。


 村祭り当日は、道化師や明るく陽気な音楽が鳴り響き、普段コウヤが聞いたこともない様な楽しい音の世界が其所には広がっていた。


「コウヤ待っててね。直ぐに戻るから、絶対に動いたら駄目よ!」


 そう言うと露店へと駆け足で向かっていくロナ、それと同時にコウヤの耳から足音が段々と周りの音に掻き消され分からなくなっていく。


「何処まで、いったのかな?」


 目が見えないコウヤが体感する時間の感覚は、通常より遥かに長く感じられ1分が数分にも感じることするあった。

 何年たっても慣れる事のないコウヤの悩みの1つでもあった。


 そんなコウヤに酒に酔った男が、よろめきながらぶつかっていく。


「こんな所に居たら邪魔だよ! 危ないだろ?」


 全身から浴びたように漂う酒の香り、かなり酔っていると即座に分かる程の男にそう言われ、コウヤはゆっくりとその場から歩いて移動する。

 杖だけが頼りのコウヤは、今年から会場が変わった村祭りの会場で自分の居場所が分からなくなってしまっていた。


「ロナーー! ロナーー! お願いだから来てよ……」


 必死に声をあげるコウヤ、しかし、誰も居ないかのような静けさだけがそこにはあり、途方に暮れていた。

 その時、コウヤは思っていた以上に村から外れた場所を歩いていたのだ。

 そして、知らない間に進んだ道は森の入り口へとコウヤを誘っていた。


 そんな時、頭上からいきなり、男に声をかけられるコウヤ。


「やぁ少年かな? こんな所でどうしたんだ、迷子か?」


 その声に驚き、一瞬警戒するコウヤ。その声は、聞き覚えのないモノだったからに他ならなかった。


「驚かせてしまったな、すまない。と言うより、眼を怪我してるのか少年?」


「あ、はい。え~と、眼は生まれつきで、実は…… 村祭りにきたんですが友達とはぐれてしまって」


「嗚呼、だが、会場からかなり離れてるぞ? 俺が連れてってやるから安心しろ少年」


 そう言い声の主はコウヤの背中を軽く叩く、コウヤは不安もあったが一人でどうにか出来る状態で無かったこともあり、声の主を信じる事にした。


「ありがとうございます。そう言えば、貴方も村祭りに来たんですか?」


 コウヤは今の状況において声の主を頼るしかなかった。

 その為、出来るだけ好意的にしゃべる事にしたのだ。


「まぁ、そんな感じだ、それより少年? 生まれつきと言っていたが全く目が見えないのか?」


 不意にそう聞かれたがコウヤは、小さい頃から聞かれ続けていた質問であり、あっさりと返答をした。

「まあ、そうなりますね」


「そうか、生まれながらに大変だったな! 少年偉いな」


 そう言うとコウヤの肩を“ぽん”と叩いた。

 いきなりの行動に流石に戸惑いを隠せなかったが悪い人では無さそうだなっと思いコウヤは安心した。


「それより此処は何処ですか? 自分の居場所が分からなくて困っているんです」


「そうだったな? 簡単に言えば森の入り口なんだが、因みに……このまま道なりに行くとな、大きな木があるんだがって言っても分からないよな?」


 そう言われコウヤも苦笑いを浮かべる事しか出来なかった。


「少年いきなりだが、もし景色や人の顔が見れるとしたら君は嬉しいか?」


 その問いにコウヤは直ぐに反応した。


「ええと、それが出来たら嬉しいです、そんな事出来たら……でも、叶わないんです」


 残念そうに答えるコウヤに男は笑いながら口をひらいた。


「それが叶うんだなぁ! 特別に頑張る少年に教えてあげようじゃないか、君は魔力とは何かを知っているか?」

 そう言うと男は魔力と“体外魔力”について語りだした。


 魔力とは世界に流れ出した全ての生命から作り出される生体エネルギーが形を形成せずに漏れだしたモノだと言われた。

 初めて聞く言葉にコウヤの頭の中は混乱していく。


「そうだな? 例えば魔力を水に置き換えて、コップを人だと考える、コップに水を注ぐと何時かは溢れるよね、その溢れた水はコップには普通なら戻らない。其れはわかるね? つまり1度、魔力がいっぱいになった際に漏れだした魔力は本人の中に蓄えられずに大気中に流れ出すんだ。その流れ出した魔力が自然界にも存在する、つまり木々や植物と言った全ての魔力が世界には溢れているんだ。それが体外魔力として使われる魔力になるんだ」

 

 男はコウヤにも分かりやすい様に説明をしてくれた。


「体外魔力は自然界の何処にでも存在するんだ、今いるこの場所にも樹々から流れ出る体外魔力で溢れているんだ、そこでだ! 少年に魔力操作を教えてやろうじゃないか!」


 今まで体内で作っていた魔力を外から集めるイメージをする様にと言われ、言われた通りにイメージを膨らましていった。

 そして、それを自身の眼に集まるようにイメージをする事で脳は外から流れてくる景色を自身が観たものと認識すると言われた。

 しかし、試しにやってみたが見えるのは掠れた残像のようなものだった。

 確かにずっと暗闇だった視界に何かが見えたのだ。


「今! 確かに見えた。一瞬だけど何か見えた」

「本当に見えたのか、少年!」


 飛び上がり喜ぶコウヤ。その言葉に男は驚いたようにコウヤに問い掛ける。


 その時、後ろからコウヤの名を呼ぶ声が聞こえてきた。


「コウヤーー!! コウヤーーー!!! 何処にいるのコウヤーーーー!!!!」


 それはロナの声であり次第にコウヤ達の元へと近づいていく。


 コウヤがホッとした瞬間、男は姿を消していた。

 辺りに男の気配は無くなってしまっていたのだ。


「コウヤ、よかった探したんだよ、勝手に歩いていったら危ないのよ! しかも森の入り口じゃない早く帰ろう」


 そう言うとロナに連れられ森の入り口を後にするコウヤ。


「森には、危険な魔物が住んでいるから2度と近づいては駄目だ」と村の大人達に言われ村祭りが終わった。

読んでいただきありがとうございます。

感想や御指摘、誤字などありましたらお教えいただければ幸いです。

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