コウヤとミーナが里帰り。洞窟の中1
朝陽が二人を優しく照らし静かな朝の風が髪を揺らした。
川原で野宿をしたからだろうか、体の節々が怠く、全身に軽い痛みが走った。心配だったミーナは、まだ寝ている。コウヤは起こさないようにミーナのおでこを触り体温を確かめた。
「よかった、熱は下がったみたいだ」
スヤスヤと寝息をたてるミーナを見てホッとしていた。
「僕に兄弟はいないけど、妹がいたなら? こんな感じなのかな」そんな事をつい、口ずさんでしまう程にあどけない寝顔がそこにあった。
ミーナが起きる前に朝食の用意をしたいと考えたコウヤは直ぐに川の一部分に石を置き狭くすると、予め持ってきたネットを沈めた。果物なとを取る際にキャッチするための物だが、思いのほか、網目が細かいので魚を取るには最適だった。
流れが急になる部分に罠を仕掛けたため、意外にアッサリと魚が掛かっているのにビックリした。
キノコを炒めてから、獣人の村で貰った不思議な種『米』と言うらしい。
初めて使う食材であったが、洗っただけでは駄目なようで白い水が無くなるまで4回ほど洗ってみた。むしろ、洗ってよかったのかすらわからないような食材を選んだ事に少し後悔していた。
それを水と一緒に煮付け塩などで味をつけたスープ。
「水を入れすぎると煮崩れしちゃうから、水は後で足していけばいいな!」
スープの下ごしらえを終え、次は魚を取り出す。シンプルに、腸をとり塩焼きにしてみた。
そんなこんなでバタバタと料理をしていると、ミーナが眼を覚ましたのだ。
「ミーナ、起きて大丈夫?」
「コウヤ……私のせいで、ごめんね時間無駄にさせちゃったね」
「構わないよ?元々ワットのお陰で大分早く着く予定だったんだし、それに、ミーナの方が大切に決まってるじゃん」
ミーナは、その言葉を聞いていきなり泣き出してしまった。
「ミ、ミーナ? いきなりどうしたの泣かないでよ」
「違うのよ……違うの」
「えっと?お腹いたいとか?それともどっか別の場所が痛いの?」タライムを抜けてからのミーナはやはりおかしかった。
「コ、コウヤ……私……コウヤ……に」
ミーナが言葉を発した瞬間に一粒の雫が空から降ってきたのだ。その雫はコウヤの鼻に当たった。
「冷た?」
そして瞬く間に空は黒く染まり先程までの日の光は嘘のように雨雲にかきけされた。
「ミーナ、走るよ! ワット荷物を食わえてきて!」
ミーナの手を引き、片手に鍋と魚を掴むと走り出した。丁度いい穴を見つけると直ぐに中に入った。
ワットも入れる程の穴で奥は洞窟のようになっていた。そして、雨が凄まじい音と勢いを増して降り始める。
「参ったな? 流石にこの雨だと先に進めないな?」
流石にバケツを引っくり返したような雨の中を今のミーナと進む訳にはいかなかった。
「ごめんね、私がグズグズしてたから」
ミーナはさっきより、更にへこんでいた。悩んだ結果、コウヤは作り掛けだった朝食を完成させる事にした。
「とりあえず火を起こしてっと」
その時だった。ピガシャン!
凄まじい雷鳴が鳴り響き洞窟の中にまで鳴り響いた。そして、コウヤが洞窟の入り口を見ると其所にやけに頭がデカイ人影が立っていたのだ。
「おやおや、先客がいましたか?いきなり失礼してしまい。申し訳ございません。ヨホホホホホ」
やけにテンションの高い笑い方をしながら、その男は洞窟の中に入ってきた。
「お前は誰だ!」
「いきなり失礼ですね? 見てわかりませんか?」
そう言うと男は更に洞窟の中に歩いてきたのである。
「それに相手に誰かを尋ねるならば、自分から名乗るのが礼儀ではないですか? まぁ、ビックリさせてしまったので此方から名乗りましょう」
そう言うと男は、頭をペコリと下げた。
「私は、ジャックオー・ランタン。自称パンプキンでございます」
コウヤは言葉を失った。そして数秒の沈黙が洞窟の中に流れた。
「つまり! 魔物と言うより魔族って事だよね!」
コウヤは直ぐに構えをとり、ミーナの前に移動した。
「早とちりですね、確かに魔族ですが。貴殿方と戦う気はありませんよ? むしろ戦う理由がないので、わかりますか?」
「なら! 何をしに来たんだ!」
「簡単な事ですよ。今の状況? 見てわかりませんか?」
デーニ村のアンデットは人間の仕業だと思っていた。だが上級魔導士以外にも、アンデットを扱える存在を忘れていた。
魔族である。魔族は不思議な道具を使い死人すら操ると言われているからだ。
「僕達をデーニから追ってきたのかと?」
「デーニ、あぁ! あの村ですか。確かにいい村でしたね。もう焼き菓子が食べれないのが大変に残念ですが」
コウヤはやはり追ってきたのではないかと警戒を強めた。最悪の場合は、ミーナだけでも逃がそうと覚悟を決める。
洞窟の中に現れた魔族。その名もパンプキン。
魔族を前に、コウヤは覚悟を決めた。
ミーナとコウヤの旅に新たに混ざり合う運命とは?
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