紡がれる世界5
優しくも繊細に奏でられる音楽はダンスの開始を意味し、広く設けられた会場の中央に皆がパートナーと移動を開始する。
そんな最中、ミーナ達がコウヤの元に駆け寄り声を掛ける。
「お話中、失礼致します。宜しければ踊っていただけませんか?」
不馴れなぎこちない言葉遣いでそう口にするミーナ。
その後ろで頷くディアロッテ、キャスカ、カカに対して、バレないように笑うラシャとシャーデ、そんな様子を眺めるベルミとキュエル。
コウヤはミーナに優しく笑みを浮かべ「よろこんでお受けします」と手を伸ばす。
王と妃が踊るとわかると皆が中央を譲るようにリズムとステップを刻んでいく。
ワンステップを刻む度、周りが騒ぐ中、軽やかにステップを刻むミーナ。
それに合わせるようにぎこちない動きながら、ステップを刻むコウヤの姿がある。
一曲が終わる頃、周りには多くの笑みが浮かべられ、皆がダンスを楽しんでいく。
代わる代わるに妃であるミーナ達と踊るコウヤの姿があり、時間が経つのを忘れて皆がパーティーをたのしんだのだった。
零時の鐘が鳴らされ、パーティーが終わるとゆっくりと帰っていく人々の中を反対に進んでくる一団がいた。
シアンを筆頭にブラッドマン、マトン、源朴の四名とその後ろにボルト、ガザ、テルガの三名が堂々たる歩みでコウヤの元へと進んでいく。
「いやぁ! 実に素晴らしいパーティーをありがとう。久々に楽しく飲めたぁねぇ、でも、飲み足りないんだぁよ! そこでコウヤも一緒に飲もうじゃないかぁねぇ」
シアンはそう言うと片手の指に挟んだ3本の酒 瓶を垂直にすると上から流れる3本分のワインを呼吸する事なく飲み干して見せる。
その光景に皆が驚きを露にすると源朴が一升瓶を片手に一気に飲み干し、勝ち誇ったかのようにシアンに笑みを浮かべる。
まるで子供の早飲み合戦のように手持ちの酒を空にしたシアンと源朴が笑いながらコウヤを連れて城の中庭へと案内する。
中庭に造られた無数のテーブル席、その周りで酒を飲み比べしている男達、その周りには数多の種族が笑い1つの輪が出来上がっていた。そんな中、コウヤは男達の声を耳にすると微かに震える。
「ガッハハハ。ヴァイキングにグラスも瓶も要らん。樽で勝負といこうじゃないか! 鬼の王よ」
「アハハハハ。その自信が後で崩れるくらいに、俺は酒が強いんだよ。ヴァイキングの王に鬼の血を、そしてアルバーンの凄さを教えてやるってな!」
中庭の真ん中で樽を手に競い合うヴァルハーレンとガンドラの姿があり、コウヤの姿に気づいたヴァルハーレンが声をあげる。
「コウヤ王! 挨拶が遅れた。此度の戦は力及ばず、戦場を共に駆けられなんだ。赦して欲しい」
その言葉に続くようにガンドラも口を開く。
「コウヤ、情けないってもんじゃないな……本当に色々と悪かったな。記憶が重なるってのは敗北を認めるようで不快だが、俺はコウヤとまた会えた事が嬉しくて仕方ないや」
コウヤを前にそう語る二人、その背後から、シアンが手を叩き、皆の視線を集める。
「さあさあ、コウヤが来たんだから、話し合いと行こうじゃないかぁねぇ。皆がコウヤの考えを聞きたいと待っているんだぁよ」
シアンはそう口にすると皆の意見を書いた紙をコウヤに手渡した。
内容は【戦魔祭】【食の祭り】【魔弾電池の向上】【世界の統治】……多くの意見や考えが書き込まれていた。
そんな最中、ミーナ達、八人の妻がコウヤの前に立つと一枚の紙を突き付ける。




