瑠璃色の希望2
静かに目覚めるコウヤ、その目に飛び込む無数の笑みと多くの涙にコウヤ自身も涙を浮かべ微笑みを浮かべた。
「皆、心配を掛けてごめん、こんな時、何て言うのが一番良いのかな……」
コウヤの言葉に皆が驚くと同時に、笑い声が溢れ出す。
「コウヤ、まったく君は何回、私を泣かせれば気がすむのよ……本当に心配したんだからね」
そう口にするとコウヤに抱きつこうとするミーナ。
「コウヤぁぁぁ!」
ミーナの背後からコウヤに飛び掛かるシャーデ、それに続くようにベルミとキュエルも飛び込んでいく。
「うわぁぁぁぁ!?」
抱きつかれ押し倒されるコウヤの姿にミーナとラシャが慌てて3人を押さえに掛かるとそんな5人の姿を呆れて見ながら微笑む、カカ、キャスカ、ディアロッテの姿がそこにはあった。
そんな光景にランタン達が声をだし笑うと、コウヤは座ったまま体勢を整えると口を開いた。
「ちょっと待って、皆の気持ちは嬉しいけど、先ずは喋らせて、言いたいことが沢山あるんだ」
その言葉に慌てて姿勢を正すミーナ達、ランタン達がコウヤを見つめ、視線が全て集まるのを見計らいコウヤは語りだした。
「皆、本当に心配を掛けたね、僕自身の甘さがこの結果を招いた事は理解してるつもりだ……本当にごめん」
コウヤは両手を床につけると深々と頭を押し付ける。
その瞬間、その場に居た全員が号泣した。
「コウヤ、本当に真面目なんだから、仕方ないわね」
「ヨホホホ、実にコウヤさんらしい、ですが安心しました」
ミーナとランタンは涙を拭いながらそう言うと静かに頷く。
「コウヤさん、我々は貴方の復活を心より望んでおりました。お帰りなさいと言うべきなのでしょうか、些か言葉に悩みますが」
「たく、まどろっこしい奴等じゃ! コウヤ坊、ビシッと言葉を言わねば纏まるもんも纏まらんぞ!」
ランタンと源朴の言葉に頷いたコウヤは思うままに言葉を口にした。
「皆、ありがとう! 迷惑を掛けたけど、僕は目覚められたよ。本当にありがとう」
飾り気のない、只真っ直ぐな言葉。
しかし、その言葉を皆は待ち望んでいた。
その日、本当の意味でミカソウマは再び一つになったのだ。
その日の晩は宴が模様され、コウヤ復活まで禁酒とされていた者達は、ランタンのポケットの中身が空にせんとコウヤの復活をつまみに語り、笑顔を浮かべて飲み明かしていく。
そんな宴の席に、ミーナ達に支えられたコウヤの姿があり、その目の前にはゼロの姿があった。
互いに真っ直ぐな眼差しを向ける二人、そんな二人は目の前に置かれた酒の注がれたグラスを手に取り、軽く口をつける。
ゼロはコウヤに軽く頭を下げると会話が始まり、コウヤはゼロの話に耳を傾ける。
「コウヤ王、此度の生還、本当に嬉しく思います。私はNo.ゼロ、貴方を知らぬ存在です」
「僕の事は既に聞いてると思うけど、改めて、僕はコウヤ=トーラス。島人の子で紅眼の存在、今はミカソウマの王をしているんだ、僕自身は皆に助けられてばかりなんだけどね」
自身の弱さをアッサリと口にするその姿に疑問を感じるゼロ。
「御謙遜を、私はチェルバランと言う世界の最悪を知る存在です。少なくとも……チェルバランを完全に消し去った事実を私は聞いた事がなかった、コウヤ王、貴方は瑠璃色の王の伝説の再来に他なりません」
ゼロはそう語ると再度、グラスを口につけると酒を口にする。
「コウヤ王、失礼を御許しください! 貴方は本来、存在しなかった存在に感じます、そして、貴方の名、“トーラス”と言う、その名が気になりました。私の記憶が正しければ、トーラスと着く紅眼の戦士がザハールにより未来に飛ばされています。心当たりがあるとは思えませんが……」
「すまない、僕の父の事も、祖父の事も僕は何も知らずに生きてきたんだ。確かにトーラスは珍しい名だけど、繋がりがあるのかはわからないよ」
コウヤはそう答えると静かにグラスを口に運んだ。




