真実と現実4
全てを簡単にまとめ、語るゼロ。
話か終わると同時に長かった休憩も終わりを告げる。
カカ達はゼロを連れ、コウヤの元へと歩みを進めていく。
多くの真実が露にされ、更に多くの謎が姿を現す結果となったが、少なくともカカはゼロを殺ろそうとはしなかった。
ゼロをコウヤの待つ臨時拠点まで案内する最中、皆がカカとゼロに視線を向け、不安を感じながら肝を冷やしていた。
しかし、カカは移動の道中、「私が居ると心配みたいね?」と口にするとディアロッテ、ラシャの部隊を残し、自身の部下を引き連れ先に臨時拠点へと向かっていったのだ。
「行かせてしまって、よかったのですか?」と兵士の一人がディアロッテに尋ねる。
「カカを本気で止めるなら、此方は被害を覚悟しなければなりませんよ? カカは自身の行いを後悔したのでしょうから、今は一人にしてあげましょう」
そう語り、優しく笑みを浮かべるディアロッテ。
「本当に気難しい奴じゃ、まあ、カカの気持ちもわからなくはないがのぉ、妾とて、ゼロをコウヤに会わせるべきか未だに悩んでおるからな」
そう語るラシャはゼロに対して鋭い目線を向ける。
「妾は夫であるコウヤに害を為すものを赦す気はない……カカも妾も、いや、全てのコウヤに従い、歩む者達は同じ気持ちであると信じておる。其だけは肝に命じて欲しい、よいな!」
ラシャに頷くと笑みを浮かべるゼロ。
「なんだか、羨ましいです。僕の中にある色んな人々の記憶に刻まれた暖かい家族と言う存在を改めて感じました。そして、僕が僕自身に与えた目的を話すべきだと思う」
ゼロの発言にその場にいた全員が注目の眼差しを向ける。
「ゼロ、貴方の目的とは何ですか?」とディアロッテが口にするとゼロは悩まずに返答する。
「チェルバランの“抹消”です」
その瞬間、ゼロの全身から流れ出す凄まじい殺気、ディアロッテは即座に距離をあけると魔導銃を構える。
「動かないでください!
魔導銃の砲身がゼロに向けられた瞬間、ディアロッテは自身の眼を疑った。
ゼロの眼はコウヤと同じ紅眼へと変化し、全身の殺気に混じる凄まじい魔力は皆の動きを一瞬にして硬直させた。
「驚かせてすみません。僕の中にはザハール、ザリア、他にも多くのチェルバランが集めた存在の力が宿っているんです。そして、僕はその記憶を保ちながら今に至りました。改めて御願いします。貴女達の王、コウヤに会わせて頂きたい」
真っ直ぐにそう語るゼロを前にディアロッテは魔導銃を下ろす。
「初めから会わせるつもりです。ですが、この場にいる私達より、更に強者の方もいらっしゃいますので、今のような行動はお控えください。少なくとも、私が魔導銃を構えなければ、貴方の首は地面に転がっていたでしょうから」
ゼロはその瞬間、ラシャが両手に刀を握り、襲い掛かろうとしていた事実を知る。
ラシャはディアロッテの放った言葉が自身に向けられた事に気づき、思い止まったに過ぎず、ゼロはその事実に驚きを露にするのであった。
ゼロを連れたディアロッテ達が臨時拠点に辿り着くと、カカが主要メンバーと共に出迎える。
ランタンを筆頭に集められたメンバー達はゼロをコウヤに会わせる前に話を聞きたいと口にする。
「初めまして、私はジャックオウ=ランタン、パンプキンとコウヤ王から呼ばれているミカソウマの将の一人です」
ランタンは軽く挨拶を交わし、ゼロを臨時拠点の中に作られた広いテントに案内する。
そして、ゼロはテントに入ると集められたメンバーにカカ達に話した話を再度行うのであった。




