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真実と現実3

 ザリアとゼロはザハールの復活までの数年を共に過ごす事となる。


 その間にも、ザハールの行方を探し続ける討伐部隊、そんな外の様子をゼロから聞かされるザリア。


「ゼロ、1ついい? ザハール軍、どうなったのかな……父さんがいなくなった後の討伐軍の話ばかりで、他の情報も良ければ知りたいの」


 ゼロは重い表情をするも、ザリアに真実を語った。


「ザハール軍は主とするザハールを失い、ザハールの国【クラシオン】は討伐軍により陥落しその姿を消した。残った残存部隊は討伐軍と最後まで戦うも惨敗した」


「逃げた紅眼達は……」とザリアは恐る恐る尋ねる。


 ゼロは深い溜め息を吐き、話を続けた。


 紅眼達は国を失いながらも魔界を目指し進んだ。

 しかし、討伐軍も其れを予測し、多くの追撃部隊を差し向けたのであった。


 魔界を軽んじた人間の行動に魔族達は激怒し、逃げる紅眼を追う討伐軍に対して、その刃を向けた。


 それが切っ掛けとなり、紅眼達は魔界を目指し更に無理な移動を開始する。


 人間の国々で危機感が高まる最中、魔界では人間の紅眼狩りに対して、紅眼を人間族と別の人間族とする事が決まる。


 魔界は紅眼の受け入れを人間に対して告げ、其れを不服とした人間の王達は愚かにも其れを拒絶したのだ。


 魔界と人間の長きに渡る戦いがこうして始まりを告げる。


 同時に各国の王達は魔界に姿を現さないザハールが未だに人間の領域に潜伏していると考え、全ての紅眼を根絶やしにしても探し出すように命令をする。


 しかし、その命令の内容は余りに非人道的であり、多くの者を悩ませた。


 ・紅眼を匿う事を禁じる。

 ・紅眼を見つけたら、直ぐに報告すべし。

 ・紅眼を匿う者は同等の処罰がくだされる。。

 ・紅眼を見つけ、報告しなかった者は同等の処罰がくだされる。

 ・紅眼を出産し、育てる事を禁止する。

 ・紅眼を出産した場合、その場で処刑をしなければ、同等の処罰がくだされる。

 ・この命令に背く者は一族全てを対象に反逆者として拘束し、全ての財産と地位の剥奪、処刑の対象とする。


 ゼロから渡された命令の書かれた紙を読み、壊れたような笑みを浮かべるザリア。


「あはは……父さん、「世界の平和は統一される事で叶う」って言ってたのに、世界は統一されたよ……紅眼を憎む事でさ、でも……こんな事がなんになるの……人間は紅眼を根絶やしにする事を考え、魔界と人間は戦争になった! 平和なんて、何処にあるのよ……父さん」


 ザリアは悲しみの中、ゼロにある願いを口にした。


「ゼロ……父さんを復活させないで……あと、私、もう疲れたよ」


 ザリアはそう言うと自身の首にナイフを当て、迷う事なく切りつけた。


 ゼロの視界が紅く染まり、ザリアは「ごめんなさい……」と小さく呟いた。


「それが君の答えなのか、ザリア……まるでレナンドの再来じゃないか……君を生かしたい……不思議とそう感じるんだ」


 ゼロはザリアを抱えると空いていたカプセルの中に優しく寝かせた。


 そして、ゼロはザリアのカプセルを起動させる。


 蘇生が開始されるとゼロは、安らかな表情でカプセルを見つめる。


「ザリア……初めて自分の意思で動いたあの日、ボロボロの君達、親子にあったんだ。最後まで見届けさせてくれ、君達の運命を……」


 次の瞬間、ゼロの意識が霞んでいく。


 ゼロの背中に突き立てられた鋭い刃、その切っ先から滴る血に染められ、透明な足が露になる。


「誰だ……」


「我々はチェルバラン様の命令にて、ゼロ、貴様を処分する。チェルバラン様は感情など不要だと判断されたのだ!」


 そんな中、チェルバランの部下は驚きの声をあげる。


「こ、コイツはザハールだ!」


 カプセルの中に入っているザハールを見て、驚く様子を眼にしたゼロはある確信を抱いた。


 チェルバランはザハール達がアトランティスにいる事実を知らないのだと。 


 ゼロを囲むようにロストアーツで姿を消したチェルバランの部下達が姿を現し、再度ゼロに刃を突きつける。


 その瞬間、ゼロは自身の存在が無になる事を悟り、這いずるようにカプセルへと近づいていく。


 チェルバランの部下が笑いを浮かべ眺める最中、ゼロもバレないように笑みを浮かべる。


 カプセルに触れたゼロは最後の力を振り絞り、ザハールとザリアのカプセルを起動させる。


「チェルバラン……貴様に二人は渡さない……残念だったな……防衛システム起動……敵を排除せよ……」


 カプセルが起動すると中に入っていた二人の身体は溶けだし、数秒で泡となる。

 慌てる兵士達、そして、ゼロは自身とチェルバラン以外の物が侵入した際に起動する防衛システムを起動させる。


 ザハールとザリアの記憶と知識はゼロを生み出す際のデータとして記憶される事となるが、チェルバランはその事実を知らぬままに、部下を全滅させられる事となった。


 このザハールとチェルバランの戦いこそが、後の敗北へと繋がる事になるなど、チェルバランは思いもしなかっただろう。


 こうして、ザハールはその亡骸を見つけられる事はなく、時は、ザハールを悪魔とし、ザリアと言う存在は名も無き勇者として、世界が紅眼を憎み絶望が世界に広がるようにと笑みを浮かべる、チェルバランにより、語られる事になる。

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