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亜人と歩む ~瑠璃色王のレクイエム~  作者: 夏カボチャ 悠元
第2章 獣人の森 ダルメリア
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旅立ちの朝、ミーナとトンネル

いよいよ、二人は森の外に!コウヤはその先に何を見るのか。

 日の出を待ち、コウヤは一人、ダルメリアに挨拶に向かっていた。


 朝早く、コウヤは旅の荷物の確認をすませるとミーナを起こさないように気を付けながら、荷物を竜馬の小屋に運び、旅の準備を終えていた。


 森の外に行く事が嬉しく、興奮が収まらず動かずにはいられなかったのだ。そんなコウヤは全ての荷物を運び終わると大きく両手を伸ばし太陽を全身に感じていた。


「よしっ! 此れで僕が戻ってから直ぐに旅立てるし、ミーナも荷物を運ばないで済むしバッチリだ」


 そして一人、森を歩いていく。樹々が風に揺れ、葉が擦れ奏でる音色、まるでコウヤの門出を祝うかのように優しく音を奏でながら靡いている。


 ダルメリアの前まで歩き着いたコウヤは靴を脱ぎ裸足になると大地を踏みしめた。


「この土の感触、僕はこの森が大好きだよ。ダルメリア。本当に感謝してるんだありがとう」


 そう言うと、ダルメリアの影から、あの少女が顔を出したのだ。


「多分、君がダルメリアなんだよね?」


 その問いに少女はニッコリと笑顔を浮かべた。

 口を動かして何かを伝えようとするしぐさ、しかし言葉は発せられなかった。


 ダルメリアは最後にもう一度、笑顔を見せ姿を消したのだった。


「結局わからなかったな、でも、ちゃんと帰ってくるからね」


 コウヤは笑ながらその場を後にした。


 ミーナの元に帰るコウヤは家の中から聞こえる泣き声に気づいた。


 コウヤは気づかれないように、ソッとベットに頭を埋めるミーナに近づいていく。


「コウヤのバカ……なんで、一人で行くのよ……ちゃんと約束したのに……私じゃダメなの……コウヤには必要ないのかな……」


 ミーナは、朝早くから姿を消したコウヤが一人で旅立ったと勘違いをしていた。


「僕にはミーナしかいないよ」


 後ろから聞こえた声にミーナは、ビックリした様子で此方を振り向いた。


 その顔は涙が頬に流れ、眼が真っ赤になっていた。


「君は酷いよ……本当に……置いてかれちゃったって思ったよ……」


 今にも、また泣きそうなミーナは凄く幼く、凄い罪悪感を感じてしまったコウヤは手を伸ばした。


「さあ、ミーナいこう」


そんなミーナの手を取り外にでた二人。


 ミーナは外に出ると井戸の水を汲み、その涙を洗い流した。

 ミーナの眼は泣きすぎたのか充血していた。


「僕の為に泣いてくれてたんだね。なんか照れるよ」


「違うわよ、悔しかっただけよ! 君は意外に意地悪よ、コウヤ」


 最初からつまずいてしまったが、ミーナと二人で竜馬のワットの背に乗り、ダルメリアの森を駆け抜けていった。


 竜馬は聞いていた以上に凄いスピードで木々が生い茂る森の中を止まることなく突き進んでいく。


 あっという間に森の出口へと着いた。森の出口には矢倉や小さな小屋などがあり、屈強な獣人達が交代で森の出入り口を、もしもに備えて守っていた。


「森を出るのかコウヤ? 折角、仲良くなれたのに残念だ」


 そう声を掛けたのはダルムだった。


 ダルムは毎日、朝晩と眠り続けていたコウヤの肉体に花を持ってきてくれていた獣人で見た目はかなり怖いが優しく、誰よりも仲間の事を大切にしている獣人だ。


「直ぐに帰ってくるよ。母さんに会ってくるだけだから心配しないで」


 ダルム達に見送られ、いよいよ森の出口から外に1歩を踏み出した。


 出口を過ぎるとそこは何もない、だだっ広い草原が広がっていた。そして、その先にデカイ屋敷と立派な門が現れた。

 コウヤが草原だと思っていたのは、この屋敷の庭だった事に気付く。


 ミーナは、屋敷の門の前で通行証のような物を見せると門の管理者だろう、その人物が門の鍵を開けた。


「いくわよ。グズグズしないで門が閉じちゃうから、早く」


 門を潜る際は、皆、歩かねばならない。コウヤとミーナ、そしてワットはゆっくりと門を歩いていく。


 門を通り抜けると古いトンネルが姿を現した。


 その遥か先に光が見える。


「このトンネルを抜けると山の中に出るわ。其所から、村を目指すのよ」


 そう言いミーナがトンネルに入ろうとしたが、何故かミーナの足が止まった。そして、その足は震えているようにも見える。


「ミーナ?」


「だ、大丈夫よ、さあ、いきましょう」


 だが、その一歩が踏み出せていなかった。


「ミーナ、ちゃんと掴まっててね」


 コウヤは替えの包帯をミーナに巻くと視界を塞いだ。そしてミーナの手を握りゆっくりとトンネルを歩いていく。その間もミーナはずっと手を握り続けていた。

 トンネルを抜け山にでた頃には、昼過ぎになっていた。


 ミーナの事もあるので、日がくれる前に山を降りたかったが無理をする事はないと判断し、ミーナをトンネルから離れた場所で休ませ、野宿する場所を探したのだ。


 そして、焚き火をしながら持ってきていた食材を使い晩御飯を作っていく。


「ミーナ具合は大丈夫?」


「ごめんね、コウヤ……コウヤ一人なら、山を降りれたのに」


「構わないよ、それにミーナと旅が出来るんだよ? 僕は楽しくて仕方ないよ」


 笑いかけるとミーナはあることを口にした。


「私ね、トンネルが怖いの……」


「え?」


「トンネルが怖くて仕方ないのよ……」


 そして、ミーナの口からトンネルが何故、怖かったのかを聞くことになる。

 ミーナの過去の闇をコウヤは知ることになるのだった。

コウヤと出会う前のミーナの身に起きた恐怖が語られる!


読んでいただきありがとうございます。

感想や御指摘、誤字などありましたらお教えいただければ幸いです。

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