明日から旅立ちます。
祭りが終わり、賑わいがまるで嘘のように静まり返る翌日の森をゆっくりと歩く二人。
ミーナが止めるのも聞かず、コウヤは目覚めて二日目にして、外へ向かうことを決めた。
自分の足で歩きたかったのだ。 もし、理由を聞かれたら皆は何と答えるだろうか……コウヤの答えはだだ、草木の感触を足で感じたい。外を歩きたい。そんな当たり前を過ごしたいただそれだけであった。
そんな思いもありコウヤはミーナにワガママを言って付き合わせてしまっていた。
「ミーナありがとう、あとワガママに付き合わせてごめん」
「いいのよ。それに君の目覚めた事を知らせる為にコウヤのお母さんへ、手紙を出そうとしてたから、丁度いいわ」
「ミーナ! 母さんに手紙出せるの?」
「え、ええ、出せるわよ? 途中の町まで持っていけば後は普通に人間のポストマンが配ってくれるわ」
「僕も書きたいんだけど、ダメかな?」
「参ったわね、筆は出すときにサインが要るから持ってるけど紙がないわ、そうだ、これを使って」
そう言うとミーナはハンカチを取り出した。
「いや、流石に悪いから大丈夫だよ」
「もし、私が母親なら子供からの知らせをずっと、心待ちにしてる、わかるコウヤ?」
「ありがとう、ミーナいつか新しいハンカチをプレゼントするから」
「期待してるわよ。さあ、急いで書いて、急がないと手紙を出しそびれちゃう、手紙は月に1度しか持ってかないの急いでコウヤ!」
ミーナに急かされながら、ハンカチに手紙を書き込んだ。
『愛する母さん、いなくなってごめんなさい。
僕は今ミーナと一緒にいます。
まだまだ思い通りには、動けないけど努力します。
そして、ちゃんと帰ります。
だから心配しないでください。コウヤ=トーラス』
簡単な内容であった。むしろ気づいたら4年もの年月が過ぎ去っていたのだから、コウヤが戸惑うのは当然だった。
だが、コウヤは自分の手で書いた手紙を間違いなくミーナの手紙と共に母に送ることが出来たのだ。
それから更に森の中で数ヵ月の日々を過ごしていた。あっという間に季節と時間が流れていく。しかし、コウヤは森から出ることは叶わなかった。
森の外に出れば、精神と肉体はバランスを失う。
そうなれば今度は本当に歩けなくなるだろう。
確りと身体と精神が一体化するまでは、森を出るのを禁止されたのだ。
理由が理由だけに仕方なかった。むしろ、無償でコウヤのために尽くしてくれているミーナ、そんな二人に優しく接してくれるアルタやダンダの存在、獣人達の優しさが沸々と伝わってきていた。
ミーナとの生活にも慣れ、半年程の月日が過ぎた頃、コウヤは自由に歩けるようになっていた。
ミーナは相変わらず心配して側を離れようとはしないが、其れが凄く嬉しいと感じてしまっているコウヤの姿もそこにはあった。
「ふふふ、本当に夫婦みたいだね? お似合いよ」
「ああ、本当にな、むしろミーナが小さくなったから余計にそう見えるんだな。確かにお似合いだな」
アルタやダンダに最近は、こんな感じにからかわれている。だが、そんな時の顔を真っ赤にして怒るミーナが可愛くて仕方ないと感じるコウヤ。
「いよいよ明日ね、コウヤ怖くない?」
明日の朝、森を1度出る事にしたのだ。
一月程前の始まりの日に、全ての森に住む獣人達が、ダルメリアの心の声を聞いたのだ。ダルメリアが、もうコウヤの精神と肉体は一体化し森から出ても大丈夫だと判断したのだ。
そして、コウヤは明日、母の待つ村に1度、帰る為に旅立つ事を決めた。
勿論、ずっとダルメリアに居たい気持ちはあった。それでも一目でいいから母に会いたいと願う気持ちを押さえられなかったのだ。
そして、ミカからの手紙に書かれていた真実を確かめたかった。
「ミーナ、明日から少し大変だけど? 大丈夫かい」
「勿論よ私に任せて。ちゃんと案内してあげるわ」
ダルメリアの森から村までは“竜馬”と言う動物に乗り向かうことになる。
ダルメリアの森には幾つか牧場が存在しており。卵から竜馬を育てているのだ。時には人間の街などに売りに行くこともある。
コウヤの目指す村までは三日から、遅くても4日程の距離になるだろう。普通の馬ならば7日は掛かるが竜馬はそれを遥かに越えるスピードで走る。
元々、戦場などで活躍する動物であり所有しているのも貴族や騎士ばかりの高級な乗り物だ。
二人と旅をする竜馬の名前はワット。ミーナが卵から孵化させ育てた1頭であった。
「明日から頑張るわよ! ワット」
「グリャァ! グリャァ!」
楽しそうにミーナの声にワットが反応し声を出した。
その日の晩、ミーナは新しい包帯をコウヤに巻いた。そして、明日の為に二人は眠りに着いた。
いよいよ、森を後にする事になりましたが?
手紙に書かれていた!コウヤの確めたい事とは?
そして、ミーナと二人旅、1頭の竜馬に乗り二人は村へと突き進む!その先にある光景!コウヤの眼にうつる真実とは?
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