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亜人と歩む ~瑠璃色王のレクイエム~  作者: 夏カボチャ 悠元
第2章 獣人の森 ダルメリア
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目覚めて分かる温もりと

 周りには沢山の獣人が目覚めたばかりのコウヤを暖かい目で迎えてくれた。


 そして、一番支えてくれた存在。それがミーナだ。


 長い眠りから覚めた体を声のする方にゆっくりと向ける。だが、そこにコウヤの知るミーナの姿は無かった。


「あ、あんまりジロジロ、見ないでよ……」


 一瞬言葉を失った。


 コウヤの知るミーナはスタイルがよく程好く伸びた髪の大人の女性と言うより、頼れるお姉さんと言う感じの女性だった。


 だが、目の前いる女の子は間違いなく声はミーナだが見た目は8歳程度にしか見えなかった。


「え、えっと……ミーナ……だよね?」


 ミーナは泣きそうな顔でコウヤを見た。


「そ、そうよね……わからないわよね……君の知ってる姿と違うもんね……」


 ミーナは下を向き黙ってしまった。それを見かねた、獣人の一人が口を開き訳を話してくれたのだ。


「いきなり御免なさいね、私はアルタ、ミーナのまあ、幼馴染みね」


 話し掛けてきたのはアルタ、女の獣人でミーナの幼馴染みであった。


「ミーナは皆が止めるのも聞かずに、貴方に人生で2回しか使えない回復魔法を使ったのよ」


「言わないで、アルタ……勝手に私がやったのよ、コウヤに責任は無いわ」


 コウヤに真実を語ろうとするアルタにミーナは下を向きながらそう呟いた。


「いえ、ダメよ。だからこそ彼にはちゃんと聞いておいて欲しいの、わかるわねミーナ?」


 アルタはそのまま話を続けた。


 周りに居た獣人達もその場に座り、ミーナも黙ってその場に腰掛けるように座った。


「獣人には、その生涯に2回だけ特別な回復魔法を使えるの、いえ、蘇生魔法といった方がいいわね。

ミーナは貴方に自分の生きてきた人生を与えたのよ。

君がこの森で過ごした1年で、ミーナは3才分を貴方に捧げたの、君が過ごした4年間でミーナは12才分の年月を逆行したのよ。

本来ならば、ミーナは22才の筈だったけど、10才になってしまったのよ。

記憶も知識もあるけど、魔力も体力も若返った分だけ落ちたわ。

それでも、君を救いたいとミーナは君が目覚めるまで魔法を解除する事はしなかったわ、途中で停止すればミーナも一時的に魔力を使えなくなるの、それをミーナは嫌がったのよ。

何故か分かる?

君が迷わないように、寂しくないように、ただ其だけが理由よ。

魔力が失われる1週間をミーナは拒絶したのよ。

そして、もし次にこの魔法を使えば、ミーナは死ぬわ、君に魂の半分を分けたのとかわらないの。

だから……ミーナを泣かせないであげて、お願いだから」


 アルタの話を聞き、コウヤは何て事をミーナにさせてしまったんだろうと言う罪悪感と自身がどれ程、愚かなのかを理解した。


 下を向きながら眼をギュッとつぶるミーナ。


「ミーナ、僕の為に、ご…………」


 謝罪の言葉を口にしようとしたコウヤ。しかし、そんな言葉を口にする前にミーナが声をあげた。


「謝るの禁止!」


 ミーナは言葉を途中で遮りそう口にした。


「い、今謝られたら……私……本当に……バカみたいでしょ、仕方ないじゃない……君に生きて欲しかった、生きてて欲しかったんだもの!」


 小さなミーナが、いっぱいいっぱいに出したその声は部屋に響き渡り、その声は部屋に居た獣人全員の耳に響いた。


 そして一番響いたのは、コウヤであった。


 獣人達が下を向き雰囲気は暗くなってしまっていた、しかし、コウヤは自分の言いたい言葉をミーナに伝えたかったのだ。だからこそ、コウヤも声を口に出した。


「僕の命はミーナの物だよ。ミーナこんな僕でごめん、でもミーナと生きていきたいんだ」


 見た目など関係なかった。コウヤはただ、ひた向きに真っ直ぐなミーナを好きになっていたのだ。


「君は本当におバカさんだよ、でも凄く嬉しいよ。コウヤ、私はコウヤと生きていくよ、此れからもずっと」

「うん。ミーナ此れからもこんな僕だけど宜しくね、ずっと一緒だ」


 部屋に居た獣人達はそのやり取りと発言に驚いていた。


「まるでプロポーズね?」

 アルタがそう言うと、ミーナは顔を真っ赤にした。


 コウヤも、その発言に顔から火が出そうになっていた。そして、獣人達は話し合いが終わり解散すると、ミーナの家を後にした。


 夜には、コウヤの復活と歓迎の祭りをする事になり、獣人達は大急ぎで準備をしてくれていたのだ。


 コウヤが目覚めた部屋はミーナの家であり、そして二人きりになった部屋の中には、少し照れくさいような、気不味いような、曖昧な空気が流れていた。


「えっと……コ、コウヤ、そのとりあえず、包帯かえるわね」


 そう言うとミーナは、救急箱から包帯を取り、手慣れた手つきで包帯を交換してくれた。


「私なんかでごめんね、コウヤ……今の私は、胸もペッタンこで君は悲しいでしょ?」


「僕は、ミーナだから一緒にいたいんだよ、それに、そう言うのよく分からない」


 そう言いながら真っ赤な顔をするコウヤ。


「君は、素直じゃないぞ? でも嬉しいよ。ありがとうコウヤ」


 二人は、クスクスと変な笑いを浮かべていた。


「お姉さんに任せなさい! コウヤ」

「ミーナ今は同い年だよ?」

「それもそうね? あはは」

 ミーナの笑顔と笑い声が暖かく部屋に響き渡り、心に温もりが伝わる。


ーー目覚めた瞬間に、僕はいきなり10才か……そして、僕の隣には10才のミーナ……


 そう考えながらコウヤはミーナの方を見詰めていた。

 ミーナの綺麗な薄いグリーンの瞳は変わらず美しく輝いていた。

読んで頂きありがとうございました。(*≧∀≦*)


ブックマークして下さった読者様並びに作家様ありがとうございます。

日々、読者様に感謝です。

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