ミカソウマ……ブラッドマン2
ミーナの姿を目の当たりにしたブラッドマンは困惑するようにコウヤから後退りをする。
「貴女は……ソルティーさん……そんな筈は、貴女はいったい!」
ブラッドマンの口から出たソルティーの名を聞き驚くミーナ。
「何で母さんの名前を! 貴方、母さんを知ってるの!」
ミーナの言葉に顔面を片方の手で覆うブラッドマン。
下を向きながら、数回笑うと覆っていた指の隙間からミーナを見つめる。
「クックックッ、なんと言う悲劇でしょうか……ソルティーさん、ベルモさんの娘だと言うのですが! ならば何故……何故! ダルメリアの森を消滅させたコウヤ=トーラスと居るのです!」
怒りと困惑、複雑に絡み合う心境にブラッドマンは混乱していた。
ミーナは真っ直ぐにブラッドマンを見つめると、質問を口にする。
「なんで、アンタが両親の名を? 二人は生きてるの! もし、何か知ってるなら教えなさい」
質問をしながらも攻撃を警戒するミーナ、そんな姿にブラッドマンは一言だけ口を開いた。
「御二人は私の目の前で死にました……それが答えです」
ブラッドマンの言葉にミーナは怒りを露にする。
目を見開き、真っ直ぐにブラッドマンを直視するミーナ。
その表情に微笑みたい気持ちを必死に堪えるブラッドマンは手をミーナに向けると手から液体を一気に発射する。
「ミーナッ!」
コウヤの叫び声、その瞬間、ミーナを守るように植物が壁を作り出し、更にブラッドマンにカウンターを行うように鋭い木々が剣となり、ブラッドマンを包み込んでいく。
悲鳴すら上げないブラッドマン、ミーナの攻撃に対して防御すらせず、両手を開き全てを受け入れる。
ブラッドマンの手足は木々により切断され、体には無数の木々が突き刺さり背中を貫通しており、かろうじで動くブラッドマンの口から語られるミーナへの言葉。
「私の、役目は……此処まで……です。ソルティーさん、ベルモさん……すみません。ミーナさんと言いましたね……最後に、会えてよかっ……」
ブラッドマンの瞳から光が消える。
肉体は次第に風化し灰のように姿を変えると中から、ひび割れたロストアーツが姿を現し、ブラッドマンの敗北を受け入れるように砕け散っていく。
不器用な生き方しか出来なかった一人の男が戦場に散った瞬間であり、同時に戦場を赤く染めし悪魔と称されたブラッドマンが死んだ瞬間であった。
ブラッドマンは人を憎み、戦争を憎む中で敵を屈服させる快感に溺れていったが、恩人であるソルティーとベルモの存在を忘れた事はなかった。
戦場で出会う敵兵士達が家族の名を叫び死んでいく姿に心を痛めた事もあった、その度にソルティーとベルモの死を思い出し感情を殺してきたのだ。
そんなブラッドマンの目の前に姿を現したミーナの存在はブラッドマンの積み上げてきた全ての憎悪を溶かし、最後のミーナへと撃ち出した液体は只の水であり、ミーナに攻撃するように仕向けた物であった。
ブラッドマンの攻撃が只の水だと気づいたミーナは複雑な表情を浮かべていた。
「コウヤ、ブラッドマンの最後の攻撃ね。只の水だったの、私……小さい頃に両親から人間の少年の話を聞いてたの、頑張り屋で不器用で……私は……」
傷だらけのコウヤはミーナを優しく抱き締めると無言で頭を撫でる。
それに対してミーナは口に出来ない複雑な感情を必死に整理し涙を流した。
ソルティーとベルモはミーナに対して語っていた事がある。
「ミーナ、人間の中にも見捨てられないくらい、純粋でドンくさい子がいるのよ、ミーナも危なっかしいけど、そんな人間の存在を知ったらさ、未来が楽しみになるよね」
「オイオイ、ソルティー、ミーナには内緒にするんじゃ無かったのかい? 外の世界はまだまだ危ないんだからさ?」
「あら? ベルモったら! 今から偏見を無くさないと駄目でしょ。それにさ、人間と獣人の架け橋になるような存在になって欲しいじゃない。あの子にもミーナにもね」
そんな二人の会話を思い出すミーナ。
「話とは違うけどさ……不器用すぎるのはあってる。ブラッドマンに何があったか分からないけど、多くの仲間を殺した貴方は赦せない、でも罪は死をもって償われたわ……」
ミーナの言葉に歯を食い縛り、只うつ向くコウヤ、そんな二人を上空から見つめる存在がいた。
クウヤとレイシアである。
「ブラッドマンの奴……最後に勝手な事をしてくれたわね。感情に流されて死んでたら世話ないわ!」
「そう言うなよ。レイシア、男には退けない意地があるのさ、最後までブラッドマンらしいじゃないか?」
傷を癒したクウヤとレイシアはブラッドマンの加勢をする為に急ぎ戦場に足を運んで来たのである。
そんな二人が到着した際にブラッドマンとミーナの会話が始まり、更にブラッドマンの攻撃とミーナのカウンターが交差したのであった。
本来ならば、クウヤの能力で助けられたブラッドマンをあえて助けないと言う選択をしたクウヤ。
ブラッドマンの最後の意地と生きざまをその目に焼き付けるとコウヤ達に対して声をあげた。
「やぁ、随分と暴れてるね? どうかな魔王コウヤ、君の命1つで大陸の者達を助けてあげるよ!」
クウヤの勝手な発言に耳を疑うレイシア。
「なに勝手に決めてるの! クウヤはバカなの、死にたいの? そんな言い分アルディオ達が赦すわけない」
「アルディオには僕から話すよ。それよりどうかな? 君の命が何万の命を救うんだ素敵な提案だろ?」
再度、コウヤに向けてクウヤが喋り掛ける。
そんなクウヤに対して突如、巨大な炎が襲い掛かる。
炎が飛んできた先に居たのはランタンであり、大鎌をクウヤに向ける。
「ヨホホホ、御話し中にすみません、コウヤさんがどんな選択をするか分かりませんが、交渉人が居なくなれば其は無効になりますよね? ですので! この場で散っていただきます!」
ランタンからの宣戦布告にクウヤは笑みを浮かべる。
「やっぱりダメか? まぁ……予想はしてたけどさ、なら魔王退治の前にお化け退治をさせて貰うよ!」
クウヤがランタンと向き合うとレイシアはコウヤとミーナに対して攻撃を開始しようと向かっていく。
そんなレイシアを突風が襲い、レイシアの体に切り傷が刻まれる。
「うわぁぁッ! クソが、いったい誰だ!」
攻撃に怒りながら辺りを見渡すレイシア。
そんなレイシアの前に姿を現す、キュエルとベルミ。
「大丈夫ですか、コウヤ様、ミーナ様、敵は私達が引き受けます! 今のうちにミーナ様はコウヤ様の回復を!」
レイシアはその言葉に対して拳を握ると海面から次々にゴーレムが作成されていく。
「鳥人間がッ! 私を嘗めるな!」
キュエルとベルミをゴーレムの巨大な拳が一斉に襲い掛かっていく。




