仕掛けられた策略。ジュネルバの罠1
ミカソウマとユウインダルスが同盟を結んだ話を耳にしたジュネルバは焦り、先手を打つように飲み物を室内に運び入れた。
高級な酒に果物を使ったジュース、見ているだけで時間が過ぎていくような、多種多様の銘柄が揃えられていた。
わざと嬉しそうに微笑み適当にジュースと酒をディアロッテが選ぶと残りは持ってきたメイドに持ち帰らせた。
選ばれたのはジュースが三本と酒が二本であり、酒に関してはディアロッテが毒である可能性の高い物をあえて選んでいた。
この世界の毒には無臭の物は存在しない。人間の嗅覚で感じられないような微細な匂いすら、獣人の嗅覚でならば嗅ぎわける事が出来る。
そして、毒の入っていない事が確認済みのジュースを人数分に別けて配る。
「さあ! 皆ジュースで乾杯しよう。ミカソウマとユウインダルスに乾杯!」
「「「乾杯!」」」
一気に飲み物を飲み干す。
「すまないんだが、レクルアの港とジュネルバの門に待機させた部下達に、気を付けるように伝えて欲しいんだ。ヴァイキングは皆……大酒飲みでな、戦いなら負けないだろうが、やはり心配でな」
「わかりました、なら僕が直接行ってきますね」
レクルアの港に残ったヴァイキング達の元にテレパスを使い移動する為に体外魔力を使い港の様子を伺う。
「え……!」
突如として、口にされた驚愕の声とコウヤの表情、ミーナが港の様子を体外魔力を使い確認する。
ミーナが見たものは待機して居た筈のヴァイキング達が酒に酔い騒ぐ姿であった。ヴァルハーレンがその話を聞き頭を悩ませた。
ヴァイキングは止めなければ何処までも酒を飲み、酔い潰れるまで酒を堪能するのが酒の席での飲み方であり、大勢のヴァイキング達の横に山積みにされた空の樽が全てを物語っていた。
ミーナの方も同じように酒に酔い、うたた寝するヴァイキングの姿が体外魔力から確認する事が出来た。
余りのタイミングの良さに一行の危機感は更に強まっていく。
ヴァイキングを倒せない代わりに戦闘不能にした、ジュネルバとレクルア、二国が手を組んでいる事実は明白であった。
コウヤ達を含む20名のみが動ける状態であった。
人間の20人ならば今の状況は絶望的であっただろう。しかし、20人と言うのはあくまでも頭数であり戦力を表したものではなかった。
事実、コウヤが本気で魔導銃に魔力を込めて体外魔力を注ぎ続けたならば、無限に射たれ続ける魔導銃の輝きが一国と言わずに大陸ごと蒸発させる事すらも叶うだろう。
簡単に国を引っくり返す力を秘めた者達をジュネルバに閉じ込めたと未だに気付いていないジュネルバ、全てを知ることになった時、国が動く事になる事実をこの時ジュネルバ国内に居る誰もが予想だにしなかった。
「しかし、何故だ? いくら何でもレクルアに停泊してる船の乗組員全員を酔わすとなれば、あり得ない程の酒を必要とするぞ」
ヴァルハーレンの言う通り、全船の乗組員は数百ではなく、数千と言う途方もない人数であり、その全てが酔って寝ているとなればただ事ではなかった。
本気でヴァイキングを酔い潰すならば、一人辺りの酒の量は樽ならば、2樽。瓶ならば約600本、グラスならば、約2400杯に相当する。
そう考えるならば、普通の酒を口にして酔っ払ったとは考えられないと言う結論に達した。
ヴァルハーレンは正面で酔い潰れているヴァイキング達を救出に向かい、コウヤ達テレパスを使える数人はレクルアへと急ぐ事にした。
シャーデとキュエル、ベルミも空からレクルアを目指し飛んでいくのであった。




