ジュネルバの王 アスライナ=ジュネルバ七世1
コウヤの知らないジュネルバの闇……事実を知らぬままに馬車は進んでいく。
「どうしても腑に落ちないんだよなぁ……」
馬車に揺られながら空を見上げるコウヤがそう呟くと皆も頷いた。
「このジュネルバって国……あまりいい国に思えないわ……スゴく嫌な感じがする」
「ミーナもそう思うかい? 私もだ、どうにも見えてる部分と見えてない部分の温度差に凄い差があるように感じるんだ」
ミーナとキャスカの会話を静かに聞いていたガザが再度馬を止めた。
「少し馬を休ませましょう、流石に大型の馬でも、水分補充は必要ですから……」
ヴァルハーレンの指示で一斉に馬の水分補給をさせるヴァイキング達を横目に、ガザがコウヤ達、先頭の馬車に乗っていた顔触れを集める。
「先程の話ですが……皆さんには、ジュネルバと言う国がどう見えますかねぇ? 正直、いい国とは言えないでしょう?」
淡々とそう語るガザはジュネルバの資金源の二つをコウヤ達に語り、城の中にも多くの奴隷が鎖に繋がれ、太陽の光すらも射し込まない牢獄に繋がれていると口にした。
「いけねぇ、いけねぇ。つい喋り過ぎちまったみたいで、そろそろ馬も水分補充が終わったようなので行きやしょうか」
ガザはジュネルバの真実を語り、更に城の王のみが入れる地下牢が存在し、売りに出せない奴隷がいると言う噂があると語ったのだ。
一行は馬車に揺られながら、ただジュネルバとは何なのかを考える事になっていた。
コウヤはバデルイヤでの戦いを思い出し後半の馬車において終始無言であった。
冷えきった雰囲気が一行を包み込んだまま、ジュネルバの城へと到着する。
ジュネルバ城は通称『グレーキャッスル』と国民から呼ばれている。
外壁を含む城全体が灰色を基調としており、城の上部から下に向けて掲げられた純白のジュネルバの国旗がより一層、灰色の城を際立たせていた。
「灰色の城……!」
コウヤの目の前に聳え立つ禍々しい灰色の城は中に入ろうとする者に無言の威圧感を与えるような雰囲気を醸し出していた。
城の中に入る前に一行は武器等を持ち込まないようにガザから言われ、渋渋ではあったが武器を馬車に置き、城内へと足を踏み入れる。その際にミーナがラシャに報告して来て欲しいとディアロッテに願い出た。
「構いませんよ、それに私とコウヤさんの魔導銃は一度、ミカソウマに運びます。流石に馬車に置いておける品物ではないので」
ディアロッテにミーナがもう一つラシャへの頼み事を言付けると数分でディアロッテが一行の元に舞い戻り、ミーナに小さな小袋を渡した。
「此れで準備万端よ!」と口にするミーナに頷く一行は持ち物検査の後にジュネルバ城の中へ入っていく。
外装と違い違い中は豪華絢爛に彩られ、入った瞬間に金の装飾品と巨大な王の自画像が一行の目に入る。
全てが金色、神々しいを通り越して嫌みにすら感じさせる内装に言葉を失う。
そんな中、奥の王座の間に案内された一行。
大きな扉の先に、宝石を散りばめた王座、其処に腰掛ける全身に金の装飾品を身に付けた人の良さそうな老人が一人。
ジュネルバ王である。
ーージュネルバ王。
アスライナ=ジュネルバ七世。
「遠路遥々、よくぞ、ジュネルバに御越しくださり、嬉しく思います。して、違う大陸の二人の王が何故に此のような辺境の大陸までお越しになられたのか?」
そう口にした。ジュネルバ王を瞬きもせずに真っ直ぐ見詰めるコウヤ。
「このジュネルバに買われた僕の妹を取り戻しに来ました……今も妹を捜している最中です」
コウヤの鋭い眼光、其れを目の当たりにしたジュネルバ王の眉が一瞬動いたのを確認するコウヤはそのまま話を続けた。
「ジュネルバ王、初めて御逢いするのに此のような無礼を御許し頂きたい。僕の妹、アイリ=トーラスを今すぐ見つけて頂きたい」
「本当に無礼な物言いですな……一国の王と王の会話とは思えぬ、御粗末さ、不快に感じますが……それも必死に思う兄としての優しさとしておきましょう」
「協力していただけるのですね?」
「無論です、このジュネルバの地に一国の王族が助けを待っているのならば、心から協力をするのが人の道、出来る限りの協力を惜しみ無くいたしましょう」
そう言い、笑みを浮かべた後に謁見が終わり、来賓ようの部屋へと一行は案内される。
「あの狸、腹の中は真っ黒よ? どうするのコウヤ」
「ミーナのお陰で全部筒抜けだったから、わかってだけど、あんなにすらすらと嘘をつくなんて……」
コウヤとミーナは必要ならばリンクを使い互いの思考、音、気持ち等を一人の人物のように共有できる。其れを利用してミーナは、ディアロッテに頼みラシャから借りてきて貰ったロストアーツ『心眼』を使いジュネルバ王の真意と心意の両方をそのまま、コウヤにリンクさせたのであった。
「好きに遣らせて貰うさ……協力は惜しまないみたいだしね」




