紅い瞳の魔導師ザハール
いつもありがとうございます(〃^ー^〃)
ーー深い夢の中……僕は今、何処にいるんだろう?ふわふわとした感覚……凄く眠いんだ……僕はなんなんだろう……
「君、君ってば!もうコウヤ」
コウヤは、夢の中なのに起こされ動揺した。
ーー無意識に体外魔力を発動していたらしい。
普段、寝る前に意識が無い状態でも、体外魔力を集めるように集中し、更に解けないようにコウヤは暗示を掛けていた。
しかし、暗示無しでも、まるで呼吸するように体外魔力を発動出来る迄にコウヤは成長していた。
コウヤ自身もその事実に驚いていた。
「コウヤ? 聞いてるの?」
ーー僕を起こした声……
声の方へ振り向くと赤髪の女性が大樹の枝からコウヤの身体を紐の様なもので繋いでいた。
「あれ……これは!うわぁぁぁ、何これ僕の身体に何かついてる!」
コウヤが慌てていると、それを見て赤髪の女性が笑った。
「今取ってあげる。コウヤじっとしてて」
そう言うと直ぐに身体ごと枝に引っ張られていく。
コウヤの身体に巻かれていたのは大樹の蔓であった。
「コウヤ、落ち着いた?」
その質問にゆっくりと頷くコウヤ。
「ミーナ先生なの?」
赤髪の女性が頷く。
「やっぱり、分かってなかったのね? 初めて会った時に気づいてると思ったのに?」
ミーナは、当たり前のように答えた。
普段のミーナと今のミーナは、まるで見た目が別人であり、見ただけでは、まず気付けない。
「ミーナ先生、少し聞きたいんですが、いいですか?」
「構わないわよ。でも、先生は無しって約束でしょ! で、何を知りたいの?」
そう言うとミーナは僕に笑いかけてから空に浮かぶ月を見ていた。
「今のミーナは何故、普段と見た目が違うの? それに何で僕が見えてるの、それに……」
コウヤは聞きたいことを全て聞こうとしたがミーナが待ったをかけた。
「そんないっぺんに聞かれたら、私だって答えられないわ、1個ずつ答えるから」
最初に姿が違う事について、ミーナは魔力が多くなると髪が魔力で赤くなると、簡単に説明をしてくれた。
獣人には稀にいるらしい。
コウヤは、それから何故姿が見えるのかを聞いた。
ミーナはコウヤの体外魔力と自身が扱う体外魔力が、この大樹の部分で繋がってしまい互いに姿が“リンク” しているのだとコウヤに教えた。
リンクは、かなりレアなケースで普通は体外魔力の波長が合うなど、先ず有り得ない事だと言われた。
人それぞれに別の波長があり、それがリンクする存在が同じ時代に生まれる事はほぼゼロであり、ましてや体外魔力を使える者となれば尚更であり、天文学的数字であった。
そんな中でミーナとコウヤは、同じ波長が合わさって互いを認識しているのだから、コウヤからしても、ミーナからしても、驚くべき事であった。
過去にこのケースは2回だけ確認されている。
どちらも国家魔導師クラスの者達で最初に確認されたのは1279年も昔の話だと言う、最初にリンクした二人は王国に捕らえられ魔術の発展のために実験材料にされたと言うのがこの話の結末だ。
しかし、話には続きが存在するとミーナがコウヤに語った。
この実験材料にされた二人のうちの一人は、国家魔導師であり、国の為に身を捧げてきた男だった。
そして、もう一人は自身の幼い娘であった。
男の名はザハール、生まれつき無意識に体外魔力を集められる為に自分の娘が実験材料にされるなど、ザハールには堪えられなかった。
幼い我が子を守るために自分だけを犠牲にしようとしたがそれを王国は許さなかった。
王国はザハールの目の前で娘を実験材料にしたのだ。
愛する娘が泣きじゃくる姿をみせられ、そして娘が弱りながら泣かなくなる姿、静かに息をするのを辞める姿を目の前で見た、ザハールは血の涙を流した。
元々綺麗な紅い瞳は血の涙で更に紅く染まった。
そして、その強大な魔力と体外魔力を全身に集め一気に解き放った。
実験室のあった王宮を中心に王国が震動したと同時に王宮から放たれたザハールの魔力は、王国の全てを吹き飛ばしたのだ。
ザハールは、勇者によって討たれる紅い眼の悪魔として今も語られる存在だった。
更に、ザハールに与えられた悲劇こそ、勇者の存在であった。
ザハールを討ち取った勇者は、ザハールの長女であり愛すべき家族であった事実をミーナから告げられた。
ザハールは娘の為に悪魔になり、もう一人の娘の手により葬られたのだ。
コウヤは、話を聞き、悲しみに包まれ、心が痛くなり酷すぎる結末に心が泣いていた。
感想やご指摘等ありましたら。よろしくお願いいたします。(〃^ー^〃)
読んでいただきありがとうございます。
誤字などありましたらお教えいただければ幸いです。
ブックマークなども宜しければお願い致します。




