新たなる大陸その名ジュレム3
太陽が眩しく海面に反射し、船には海の香りをまとった潮風が吹き付ける。船旅と言うには余りに小規模な旅を満喫しつつ、セテヤ大陸を彼等は目指していく。
セテヤ海域に入ると海に巨大なモンスターが姿を現していた。
コウヤも船長に言われて知ったのだが、魔物とモンスターは似て非なる物だと言われた。
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モンスターは自身の体格などは種族で決まる。
魔物は魔力の量でそのサイズが変わるのだと言われた。
見分け方は魔物は魔眼等で魔力の流れを調べれば、体内に存在するコアが特定できる。
逆にモンスターは体内ではなく全身を魔力の膜が覆うように見える為、見分けるのは簡単である。
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船長に前金の金貨を渡していたキャスカは残りは船の護衛で手を打たないかと相談したのだ。
セテヤとバライムの間の短い数百メートルの間を抜けられずモンスターの餌になる船は少なくはなかった。
そして、船をセテヤの海域において最悪の海のモンスターが襲おう姿を現したのだ。
海底から姿を現したのは巨大なイカのモンスターであった。
「な、何で……イカルゴラが……」
現れたモンスターを見た船長は護衛をする代わりに船賃を半分にすると言うキャスカからの条件を受け入れた。
「コウヤ交渉成立よ! 遠慮なく叩くわよ。朝御飯まだだし、それからモンスターで海物焼きでもしましょうよ」
「師匠、船でそんな巨大な火を使うつもりですか? 刺身とかで我慢してください」
「師匠は無しだって言っただろ、その……キャスカって呼んでくれて構わないからな」
目の前に現れた巨大イカモンスターの食べ方を話し、更にノロケ合う姿を見て船長は呆然と立ち尽くしていた。
モンスターの長い触手のような手が無数に船へと迫り、船長を襲おうと振り翳された瞬間、船長は震えて動けなくなり、即座に死を覚悟した。
「ひぃ、もう終わりだ……」
船長の顔が青ざめ足は震えて立っているのがやっとであった。
「イカイカルゴーラ!!!」
イカルゴラが船長に襲い掛かる瞬間、一発の魔弾と流星の如く鋭い剣が襲い来る腕を粉砕する。
「イカイカ? イカーー!」
自分の腕か数本無くなった事実に驚いたのかイカルゴラが船から逃げようと海を進み始める。
「船長さん、林檎一つ借りますよ!」
コウヤが林檎を一つイカルゴラの頭目掛けて投げつける。
「テレパス! セイヤァァァァーー!」
イカルゴラの頭上に投げられた林檎とコウヤの位置が一瞬で入れ替わる、空中からコウヤが刀を使い急所を貫いたのだ。
少しの間、苦しんだように暴れていたイカルゴラが絶命したのを確認するとかコウヤがキャスカと船長に合図を送り、イカルゴラをロープに縛り船で運んでいく。
イカルゴラの手足を船長に頼み、刺身とイカルゴラソーメンにしてもらい、朝食として美味しそうに食べるコウヤとキャスカ。
そんな、二人に船長が慌てて声をあげた。
「大変だ! 巨大なビッグシザーが凄い勢いで船目掛けて突進してくる!」
船長の言葉に甲板へと急ぐ二人が目にしたのは、ビッグシザーと更に船に縛られたイカルゴラの血に引き寄せられた、三つ首大ウツボであった。
船長の顔から血の気が引き、真っ白に成る中、先に迫り来る三つ首大ウツボを仕留めに掛かるコウヤとキャスカ。
「僕は右の首を狙います!」
「私は左を切り落とすよ」
互いに軽く頷くのを確認すると左右に走りだし、狙った頭に目掛けて刃を振り払う。
鋭い刀の刃に強化魔法を掛けたコウヤの一撃と二刀を手に襲い掛かるキャスカ。
三つ首大ウツボの喉元を同時に断ち切ると真ん中の頭が『ギャアァァァアアア!」と悲鳴を上げて天高く首元を去らした。
互いに握った刃を左右から振り抜き、三つ首大ウツボから頭を三つ叩き落としたのだ。
「次はあれだね? しかし、デカイね。あと一年か、二年でキングシザーに成長しそうなサイズじゃないか?」
キャスカの言うキングシザーとは、シザーは脱皮を繰返しそのサイズと名前が変わる。
因みにビッグシザーの前はライトシザー、スモールシザー、リトルシザーと言う形になっている。
「あれ? 誰か乗ってる」
コウヤが体外魔力を使いビッグシザーの背中を確認する。
「あぁぁぁ! マズイ……!」
焦るコウヤが見たのは楽しそうにビッグシザーに乗るシャーデと必死に掴まりながら船を睨むミーナとディアロッテ、その後ろを飛行するキュエルとベルミの姿であった。
「キャスカ……ラシャ以外の皆が……ビッグシザーに乗ってるんだけど?」
「まさか……! ディアもいるのかい」
そう聞かれ頷くコウヤ。それを知り青ざめるキャスカ。
二人を見つけたシャーデは更にビッグシザーを船に近づけていく。
「コウヤ発見! あぁぁぁ! キャスカもいる」
その言葉を聞いた瞬間、ディアロッテが一気に前に出る。
「何を……! 考えてるんですか! キャスカ様ァァァァァァ!」
その雄叫びにも聞こえる声に青ざめる二人を見て船長は神に祈りだしていた。




