真実はどこにある?
ミーナの咄嗟に取った行動はコウヤを奈落の底に突き落とした。
凄まじい罪悪感をどうしたらいいのか、分からないコウヤは次第に罪の意識に涙が溜まっていく。
(僕は最低だ、ミーナ先生の事を知りたかっただけなのに、もしかしたら、今の状況を理解してくれるんじゃないか……只そう思っただけなのに、僕は自分勝手だった。ううん、勝手すぎたんだよね)
そう思うと自然と涙が包帯を濡らしていた。
滲み出る涙はやがて溢れだし包帯の外へと流れ出した。
コウヤ自身が口に出来ない感情、説明できない気持ち、悲しくて辛くて、ただ涙だけがとまらなくなっていく。
心の痛み……これは罪悪感からなのか、それとも情けない自分にたいしてなのか……答えなんて関係無い、コウヤが無意識に口にした言葉。
「ミーナ先生、ごめんなさい……」の一言であった、震えながら呟かれる小さな声は、ミーナには聞こえていないだろう、それでも只謝りたいとコウヤは考えたのである。
「はぁ……わかったから、男の子は泣かないの!」
ミーナはそう言うとコウヤの頭を撫でる。
いきなり頭を撫でられ“ビクッ”と全身を震わせ驚いたコウヤの姿にミーナは逆に驚ろかされる。
コウヤの驚き方は目が見えるものがする仕草とは違い、まるで自身に何が起きたか理解できていないようにミーナの目に映ったからである。
「君? 本当に目が見えてないの、見えてるの、どっちなの?」
コウヤは無言で下を向くことしか出来なかった。寧ろ体外魔力の事を説明するべきかを悩んでいた、しかし、ソウマからむやみに体外魔力の事を話してはならないと口止めされていた為、答えるべきかを決められずにいた。
「黙りか、そうね、見えてるけど、見えてないって感じなのかな? どう言ったら言いか分からないけど、信じるのも教育者の役目だから」
ミーナは口にするとコウヤの額にオデコをくっ付けた。
「な、なに、何をしてるんですか、ミーナ先生!」
余りに意外な行動に動揺するコウヤ。
「静かにして、君の事を私は信じたいの、だから今は静かにしてて」
無言のままに頷いたコウヤの鼓動は高鳴り、ドキドキが止まらなくなっていく。
普段の3倍、いや5倍の早さで動いているのではないかとコウヤが感じる程、心音は早くなっていた。
その時である、コウヤの中に見慣れた景色が流れ込んで来る。
「なんだろう……確かに見える……夜と違う、しっかりと光が緑を照らすその光景……」
無意識に口にする言葉、ミーナはその言葉に頷くように更に額を強く押し当てる。
コウヤの頭の中に大樹の姿が現れると、木の枝に昨日の女性の姿があった。
「私が見えてるのね?」
「僕がわかるんですか?」
昨日の女性はミーナであると改めて認識するコウヤ、そして、コウヤに伸ばされた手を掴んだ瞬間、激しい光に吸い込まれていく。
「君、君、起きて?」
コウヤは知らない間に眠ってしまっていた。
「あれ……僕は確か……」
ぼんやりとする意識、目を覚ましたコウヤは手足の感覚を確かめるように動かすと起き上がる。
「私は君を信じるわ、確かに貴方は嘘はついていない、正直でも無いみたいだけど」
「あの、ミーナ先生、本当に……」
コウヤが謝ろうと声を出そうとすると途中でミーナが言葉をとめる。
「ミーナでいいわ。それより君、名前なんだっけ?」
「ぼ、僕は、コウヤです」
「なら、コウヤ。今から改めて宜しくね。御互いに仲良くしましょ」
ミーナはそう言うとコウヤの頭を撫でる。
頭を撫でられる度にコウヤはドキドキして心臓が羽上がるように激しく鼓動を打ち鳴らす。
「うふふ、コウヤ、顔が真っ赤よ? うぶなんだから」
悪戯な笑い声と共に言われた言葉に余計に赤面するコウヤ。
ミーナとコウヤが会話をしていると医務室の扉が乱暴に開けられる。
「コウヤ! お姉ちゃんを置いて行っただけじゃなく! ミーナ先生と放課後までイチャイチャして! お姉ちゃん怒ったからね!」
いきなりの怒鳴り声にコウヤとミーナは驚かされる。
しかし、ミーナはロナに対して勝ち誇ったかのように笑みを浮かべる。
ロナは真っ赤な顔でコウヤを睨みつける。
コウヤはその視線に嫌な予感しかしなかった。
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