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亜人と歩む ~瑠璃色王のレクイエム~  作者: 夏カボチャ 悠元
第1章……人獣転生……全ての始まりへ
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僕は知りたくて仕方ない

 朝の目覚め、一階へ向かいミカに挨拶を済ませるとコウヤは朝食も食べずに慌てて学校に向かっていく。

 普段ならば、ロナを待ってから一緒に学校へと向かうが、コウヤは昨晩の事が気になりどうしてもミーナ本人に確認したいと考えていたのであった。


 コウヤは知りたかったのだ、昨日の夜に出逢った女性が本当にミーナだったのかを考えていた。

 体外魔力が曖昧な状態であれば夢と混同している可能性があったからである。


 しかし、夢と現実が混ざった可能性を考えるよりもミーナに直接確かめた方が早いと考えたのだ。


 学校に通常より一時間程早く到着したコウヤ。


 普段から体外魔力を使い通学路を進めば学校迄の道のりは大した事は無い。

 しかし、ロナと普段登校する際は体外魔力を解除して行動していた。

 ロナに体外魔力の存在を知られるとややこしい事になるとコウヤは考えていた。


 ソウマはコウヤに対して「誰にも言ってはいけない」と口にしていた。


 コウヤの脳裏に浮かんだのはロナとガストンの怒る姿であった。


「負けず嫌いなロナやガストンはきっと「本気で戦え」とか「手加減してたな!」とか、色々と言うだろうなぁ……今は本気で戦える程、放出魔力コントロールが上手い訳じゃないから、それは流石に避けたいや」


 そんな事を口ずさみながら、コウヤは医務室の前に立っている。


「いざと成ると緊張する、何故かドキドキが止まらないや、僕って“根性なし”だな……悩んでも仕方ないよね、いくぞ! 失礼します」


 コウヤは覚悟を決めると医務室の扉を開け医務室の中に足を踏み入れる。

 しかし、医務室の中にミーナの姿は無く、薬品とアルコールの匂いだけがコウヤの鼻から体の中へと入っていく。


「あれ、変だな? 鍵は閉まってなかったんだけど、職員室かな、それだとワザワザ見つからないように早く来た意味がなくなるなぁ、どうしよう」


 仕方なく職員室に向かう事を決めたコウヤは、医務室を出ようと扉に手を掛けた瞬間であった。


 “カタっ”と医務室の奥にある扉から物音が聞こえる。

 あまり深く考えずに音の鳴った方へと歩いていくコウヤ。

 医務室の奥に付けられたもう1つの部屋の扉に手を伸ばしていく。


 扉に手を掛けたコウヤ、しかし、勝手に扉の中に入ればミーナに叱られる可能性があると考えたコウヤの手はその場で停止していた。

 ドアノブに触れた手に嫌な手汗が滲むと、コウヤは出直すべきだと決断し、そっとドアノブから手を離し後退りをする。


 医務室を後にしようと廊下に出ようとした時だった、奥の部屋から叫び声が聞こえる。


「きゃッ!」


 ドアの先から聞こえた声はミーナの物であり、コウヤの耳には短い悲鳴のようにすら聞こえた。


 悩んでいられないと考えるコウヤは直ぐに奥の扉を開けて部屋の中に飛び込んでいく。


「大丈夫ですかミーナ先生!」


 扉の先でコウヤを出迎えた光景は着替え中のミーナの姿があった。


「え! 何? 君は確か昨日の!」


 慌てて服を掴み、全身を覆い隠すミーナ。


「えーと、大丈夫です……か……ミーナ先生……」


 体外魔力を全力で使ってから飛び込んだコウヤ、その眼に入ってきた光景は下着姿のミーナであり、コウヤの顔が明らかに赤面した瞬間、そのまま意識を失うコウヤ、刺激が余りに強すぎたのだ。


「き、君! 大丈夫、ちょっと君ってば!」


 授業開始の鐘の音が響き渡り、うっすらと意識を取り戻す。

 コウヤは医務室のベットで目を覚ます事になった。

 そんなコウヤを鋭くも悪戯な目を向けるミーナ。


「やっと起きたわね、いきなり倒れたからビックリしたわ?」


 コウヤは刺激的な光景に意識を失った事を思い出し必死に理性を保ち、自身が見た光景を必死に振り払おうと頭を左右に振る。


「君? 聞いてるの!」


 少し強めの口調でミーナが喋りかけてくる。


「は、はい、聞いてます」


 コウヤの反応を見てミーナが楽しんでいるのは明らかであり、コウヤは不安で頭の中が混乱していた。


「それより、何であんな時間に医務室にきたのかな? 確り説明してもらうわよ!」


「じ、実は、その……聞きたいことがあってきました」


「聞きたいこと? つまり私の下着姿より大切な事があったと」


「いえ、その下着を見てしまった事は謝ります。すみませんでした」


 その言葉を聞き、ミーナはニヤリと微笑みをコウヤに向ける。


「見えたのね? 私の下着姿」


 簡単な誘導尋問にあっさりと引っ掛かるコウヤをまるで悪戯をした仔犬を見るような目で見つめるミーナ。


「見てません、僕の眼は見えないんで、それに包帯を巻いてますし、見ることは叶わないんです」


「ふ~ん、そうなのかなぁ?」


 ミーナは疑いの目を向けている。


「わかった、貴方は確かに眼が見えないみたいだし?」


 そう言うとミーナはコウヤの眼の前で上半身の服をたくしあげようとする。

 とっさに顔を隠す仕草をするコウヤ、咄嗟に取ってしまった行動はミーナに確信を与えた。


「やっぱり君?……見えてるのね!」


 コウヤの嘘はあっと言う間に暴かれる。

 ミーナはこの事実を知り少し残念そうであり、それでいて、悲しそうな複雑な表情をしていた。

 その顔に罪悪感を感じるコウヤ、しかし、ミーナから向けられる表情は更に罪悪感をコウヤに与えていく。

読んでいただきありがとうございます。

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