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亜人と歩む ~瑠璃色王のレクイエム~  作者: 夏カボチャ 悠元
第二部 魔界偏 新に掴むべきもの
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集まりし者達

 コウヤは山の入り口から山道の形を変えた。

 人間達がダルメリアまで辿り着けない様にしたのだ。


「獣人ならば匂いだけでダルメリアまで辿り着けるので、なんら問題ない」とダルム達はコウヤに告げ、山の形を変える事を承認した。


 全ての山道を複雑に絡み合わせた後にダルメリアへのトンネルに木々を被せ人間の眼からは、只の鬱蒼とした森にしか見えるようにする。

 全ての作業が終わるとコウヤ達は一旦館に戻った。


 館にはキャスカとシアンが待っていた。


「やぁコウヤ、たったの数日で再会になるとは思わなかったぁよ、それでどうかね? 人間達はもう来ないと思うかい?」


 シアンが真面目な顔でコウヤをじっと見つめる。


「多分、また来ます。次は更に大人数で彼等を捜しに来るでしょう……」


「そうか、ならばどうする? ダルメリアを放棄するか、人間と戦うか、前者ならば、魔界はダルメリアの者を全員受け入れる用意がある。しかし後者であれば、魔族は手助けが出来ない」


 魔族と人間の契約がシアン達魔族を縛っている実情は皆が知る事実であり、ダルム達も其れをあえて口に出すような真似はしなかった。


「魔王殿、御気持ちは有り難いですが我等獣人は今まで人間からの不当な扱いにも我慢してきました。しかし、もう限界なのです。我等はダルメリアの獣人であり戦士です」


「あくまで、守り人としてダルメリアを守るつもりなんだぁね?」


「はい、少なくとも俺は其のつもりです!」


 ダルムの言葉に獣人達は頷いた。


「獣人の意思は決まってるみたいだねぇ、ならば魔界に逃げてきた獣人の面倒を見ることを約束しよう、全てが終わればダルメリアに帰すと言う事で言いかぁね?」


「大魔王シアン様の御心遣い感謝いたします」


「いいよ、それとコウヤ、君はどうする?」


「僕は皆と残ります! ダルメリアを人間の好きにさせる気も獣人の皆を奴隷にさせる気もありません!」


「妹を助けるんだぁろぅ? 死んだらどうするつもりだい」


「もし、生きて妹を助けられても、今この場から離れればきっと後悔します。後悔して一生、生きるのはもう嫌なんです! 僕の大切な者をこれ以上奪われたくない……失いたくない!」


 コウヤはシアンに思いの丈をぶつけた。其れは余りに当たり前で在り来たりな言葉であったが確りと皆の心にコウヤの思いが伝わる。


「なら、よかったよ! 皆其のつもりで準備してきたからねぇ」


 シアンはそう言うと指を“パチン”と鳴らす。その瞬間に光魔法が解除され、シアンの後ろからギルホーンに跨がったオークやゴブリンに武装したエルフ達が姿を現した。


「まったく勿体つけおってからに、安心しろコウヤ! この私、ラシャ=ノラームが勝利に導いてやる!」


「もう! ラシャ、皆で戦うのよ! コウヤ、私もダルメリアの獣人なんだから一緒に戦うわよ」


 ワットに跨がるミーナとギルホーンに跨がったラシャが皆の先頭に立っていた。


「え、これは!」


 驚くコウヤの顔を見てシアンが口を開く。


「皆、君の為に集まったんだぁ。それとその後ろを見てごらん」


 シアンに言われオークやゴブリンの後方を見ると島人と紅眼の者達が混じっていた。


「彼等もコウヤの為に来てくれた、人間と戦う覚悟を決めた者達だ」


 獣人達は島人や紅眼を見て身構えたが直ぐに仲間だとわかると武器をおろした。そして、直ぐにダルムとシアンが互いの戦力を確め合うとある結論が出た。


 持久戦になる。

 人間がダルメリアへの道を見つけて侵攻してきたら其処までで全てが終わる。人間をダルメリアに入れないことが勝利の鍵になる。


 しかし『トンネルの中の戦闘になれば、犠牲を気にしない人間の戦い方と仲間を庇う獣人の戦い方では勝負にならないだろう』とシアンが口にした。


そんな時、ラシャが声を高々にあげる。


「ダルメリアと違い我等エレは人間と争いながら生きてきたのだ! トンネルは我等エレの者にまかせよ」


 ダルム達も其れを仕方なく受け入れた。実際に人間との戦いに慣れたエレの戦士達とダルメリアの獣人達、どちらも戦闘になれば強者だが戦い慣れしている分ラシャ達に分があった。

 そして、獣人達の耳に確りと響く下から山を上がってくる足音。10や20ではなく、遥かに其れを超える凄まじい足音が次々と山道を登ってきていた。


 コウヤが直ぐに体外魔力を使い山の中の状況を確める。そこには鎧を着た兵士の姿があり、更にコウヤが倒した元将軍ディノスと共にエレを攻めてきた騎士の姿があった。何よりコウヤを驚かせたのは、騎士の横に武装したロナの姿があった事であった。

読んでいただきありがとうございます。

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