ラッキ×アンラッキー=正座
キャスカの修行の中身です。
キャスカとの激しい修行が終わりグレイトボアの血抜きを済ませる。その間、キャスカはコウヤにテレパスの基礎を教えていた。テレパスは元々は位置を入れ換える魔法だ。
対象物を互いに異空間を通して入れ換える言わばスタートと出口の場所を入れ換える魔法である。
入れ換えられない場合、片方が出口を見失い異空間に閉じ込められることもあるとキャスカは口にした。
「先ずはこの石と自分を入れ換えるようなイメージをしてみな?」
「はい!」
「物と人、全ての壁を越え互いの居場所を示せ瞬間魔法テレパス!」
コウヤの身体が輝き、一瞬で石と場所が入れ替わった。
「やったあ! 出来ましたよ師匠。あれ師匠?」
キャスカは驚き口を開いている。
「コウヤ、移動魔法は初めてなんだよなぁ?」
「はい? そうですが、どうかしましたか」
「テレパスは、移動魔法の上位魔法だ、簡単に扱えるものじゃないんだよ、人間なら凄まじい年月と魔力を使いやっと出来るような魔法なんだ、まさか本当に発動するなんて?」
テレパスは本来イメージがとても難しい魔法である。入れ換える物や人を確りとイメージしなければ発動する事は出来ない。
この時、コウヤは魔力を使い果たしていた為、体外魔力を使い石と場所を入れ換えたのだ。コウヤからすれば、当たり前の体外魔力がこのテレパス、成功の鍵となった。
キャスカはコウヤが本物の強者になると確信した。そして夕方まで、テレパスや剣術等を語る事でコウヤの頭の中に戦い方をイメージさせた。
「コウヤ? 力入れすぎよ、ほら? 手と足に力が入りすぎてる! そんなんじゃ直ぐに腕を持っていかれるぞ?」
キャスカがコウヤに体を密着させると力の抜き方や刀の角度を手取り足取り教えていく。
その間、真っ赤な顔になるコウヤ。それを見てクスクスと笑うキャスカ。
「コウヤ? お前…… 女に不馴れだなぁ」
「な、なんですか、いきなり!」
いきなり耳元にゆっくりと聞こえるキャスカの声、コウヤが更に赤くなる。
「女が敵ならコウヤは何回死ぬのかなと思ってなぁ? お前の弱点は女なんだょ」
コウヤはキャスカからの指摘に言い返す事が出来なかった。
「男は殺せても、女は殺せないって奴は戦場にゴロゴロしてる、勿論転がるのは首から上だがなぁ」
そしてキャスカが日も暮れ掛けた頃、最後にもう一度剣を交えようと言ってきたのだ。 コウヤは頷き、直ぐに構える。そんな中、キャスカは上の服を谷間まで見えるように引きちぎるとコウヤの前に立ち構えをとった。
「師匠! な、なにをしてるんですか!」
戸惑うコウヤの反応をまるで楽しむように笑うキャスカ。
「コウヤ? どうした、私はただ邪魔だから服を裂いただけだぞ?」
ゆっくりとコウヤに近づくキャスカ。コウヤは何処を見ていいか悩むうちにキャスカからの攻撃が開始される。
結果は完全敗北。コウヤは一日に二度も完全な敗北を経験した。
キャスカはコウヤを側に引っ張るといきなりコウヤを抱きしめた。
「いいかコウヤ、お前は色んな経験が足りなすぎる、優しすぎる男は早死にするぞ? よかったら私が色々と教えてやるょ? 師匠としてなぁ」
「え! あ、あの」
コウヤの反応を楽しむ様に悪戯に向けられる視線。自身が獲物になったような感覚に襲われていた。
キャスカと言う美しい肉食獣がコウヤと言う純粋な獲物を前に我慢の限界を迎えていたのだ。
「其処までです! キャスカ様、お戯れが過ぎます。夕食の時間ですのでお戻り下さい。コウヤさんも帰りますよ!」
其れはディアロッテであった。余りに帰りが遅いことを心配して様子を見に来たのだ。
すると目の前にコウヤを後ろから抱き締めて耳元で囁き、更に視線をあわせ誘惑するキャスカの姿がディアロッテの眼に入ってきたのである。
ディアロッテは直ぐに草むらから飛び出し今にいたる。
「さあ帰りますよ! 飛行魔法」
そう言うとディアロッテはコウヤを掴み先に館に飛んでいったのだ。
「なによ、ディアもコウヤがお気に入りなの? ふふふ」
顔を赤くしたままのコウヤを見て不機嫌なるディアロッテであったがコウヤが無事だった事を思い軽く微笑んだのであった。しかし、館に帰って直ぐにディアロッテはコウヤを正座させると鼻の下が伸びていた訳を問い詰めるのであった。
因みにディアロッテの追及と御説教は2時間程続きました。
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