医務室のミーナ先生
意識が薄れ目が覚めるとそこには!
ーー自分の死を受け入れる……こんなにアッサリと人は死ぬんだな? 身体は痛いままなんだな、死ぬって痛みとかから解放されるんじゃないのか?
まぁ初体験だから、わからない事だらけだし、仕方ないか、体外魔力も集められないみたいだし、死んでる自分の姿を見てみたかったんだけどな?
むにゅ!
ーーん? 頭になんかぶつかる感覚……何だろ? 凄くいい香りがして、落ち着く……そう言えば女神様の姿が見たかったな、残念だな……
「女神さま……死にたく……ない」
ーーやった! 少し声がでた。ん? 声がだせる?
「良かった、あんまり眼を覚まさないから心配したのよ?」
優しくそう呟く女性の声に返答えしようと口を必死に動かすが、中々声を出せずにいた。
「無理しなくていいわよ? それよりこんな可愛い子が居たなんて知らなかったわ」
そう言うと女性が近付き、いきなりコウヤを抱きしめたのだ。
その瞬間、先程の感触の正体がわかったのである。
ーーち、窒息する……
「そこまでー! ストップ!」
凄まじい勢いで医務室の扉が開いた。
聞き覚えのあるその声は担任のラスタであった。
そして、ラスタが慌てて室内に入ってくる。
「貴女って人は! 眼を離すと直ぐにそうなる! ミーナ先生! 今度と言う今度は許しませんよ!」
「あら可笑しいわね? 私はこの子が魘されてたから、心配で側に来たのよ、それよりそんな想像をする、ラスタ先生のが欲求不満じゃないのかしら?」
ベッドで横になってる生徒の存在を忘れて火花を散らし合うミーナとラスタ。
ーーはぁ、僕の存在忘れられてるなぁ……
「とりあえず! 生徒に手を出さないように、わかりましたね! これだから獣人はまったく」
ブツクサと文句を言いながらラスタはその場を後にした。
ラスタ先生は変に堅物で、普段は生物を教える教師でありコウヤの担任でもあった。
クラスの生徒からは人気はあるが変に厳しいところもあり、上級生からは余り人気はない教員だ。
「ごめんなさいね? 邪魔が入っちゃったわね、ふふ、私を女神なんて呼んでくれたのは、あなたが初めてよ嬉しかったわ、さっきの冗談のせいかしらね?」
ミーナはそう言うと、おでこにキスをした。
ーー今まで入った事の無かったけど、医務室なんだよね? さっき、おでこにキスをした女の人が女医のミーナ先生か…… 僕、キスされたんだ!
ミーナ先生は猫の獣人と言う事しかコウヤは知らなかった。今、分かっているの事は、柔らかで、ふわふわのいい香りのする女神様のような人だと言う事だった。
「君、今からヒーリングを掛けるからね?」
コウヤが首を縦に振る。すると身体がポカポカと温まっていく感覚に驚かされた。
「どう、気持ちいいでしょ? 君、一気に魔力を放出し過ぎたのね、無理は良くないわよ?」
段々と肉体から痛みが消え、体内に沸々と魔力が沸き上がるような感覚にコウヤは気持ちいいと素直に感じていた。
「あ……がとう……ます」
まだ声はかすれているが大分ましになってきていた。
「もう少しね? ふふ、まさかこんな小さな子に、これ程の魔力を注ぐ事に成るなんて思わなかったわ」
ミーナはこの学校の専属医療魔導士である。
医療魔導士は魔術による疲労や肉体の負担、更に傷の回復もでき、魔力を移動できる事も出来る存在であり、本当ならば国の主要機関等に配備される。
この小さな学校の専属に成るなどあり得ない存在であった。
だが、ミーナが獣人であるが為に国は、その才能よりも自分等のつまり、人間のメンツを優先した結果、ミーナは才能はあれど何処からも受け入れて貰えない存在になってしまっていたのだ。
そんなミーナは偶然立ち寄ったこの村で学校の理事長と出会う、理事長は全ての者は平等でなければならないと言う考えの持ち主であり、ミーナの話を聞き、ミーナにうちに来ないかと声をかけたのだ。
そして、ミーナは女医として、この学校の専属医療魔導士になることになったのだ。
「まあ。そんなこんなで、今はこの学校に御世話になってるの。あら、私ったらいけない、自分の事ばかり話してごめんなさいね? でも話してる間に魔力の供給が終わったわ」
ーーそう言われて初めて気が付いた。以前より遥かに体が軽い。
「ありがとうございます。ミーナ先生」
「ミーナでいいわよ。この学校で私を先生って、思ってる人は殆んどいないから」
少し悲しそうなミーナの表情をみて、コウヤは少し悲しくなってしまっていた。
「ミーナ……先生、それでも僕は感謝してるんです。ありがとうございます」
「最初は半信半疑だったけど、君みたいな子が居るなら、この学校に来て良かったって思うわ。
此方こそありがとう、えっと? コウヤ君だったわね。感謝してるわ」
ミーナは少しだが、気持ちの支えが取れていた。
初めて会う少年に心を赦した訳ではなく、ただ何かを語りたかったのだ。
不思議とコウヤと言う少年には、すべてを話したくなった、ミーナはそう感じていたのだ。
そうしてる間に授業終了の鐘がなった。
コウヤは、四時限目に気を失ったので丸々一時間寝てたのかと思うと少し驚いたが、ミーナとの出会いをとても嬉しく感じていた。
そして、廊下を凄まじい勢いで足音が此方に向かって走ってきた。
足音は医務室の前で止まると扉を一気に開き、ロナとガストンが医務室に入ってきた。
「大丈夫? コウヤ、お姉ちゃん心配で心配で!!」
「コウヤ、さっきは悪かったな、具合大丈夫か……!!」
二人が凍り付いた、コウヤは上半身下半身を下着のみを残して裸同然だったのだ。
「な、な、何してるのよ! コウヤ」
ロナがすごい声をあげた。
「え?」
ロナに声に、直ぐに自分の体を確かめるとズボンがなく、上半身は何も着けていなかった。
コウヤは、今の状況に凍り付いた。
「あら? 外に医療中の看板だしてたんだけど、鍵はかけない主義だから、コウヤ君ごめんなさいね?」
ヒーリングをする際になるべく肌に近い状態でかけるのが一番効率がいい、その為、意識を失ってる間に服を脱がされていたのだ。
慌てて二人を外に出したミーナは直ぐに服を取ってくれた。
「僕はもう……お嫁にいけないかも知れない」と冗談を言うと、ミーナはクスクスと笑っていたのだろうか?
「その時は私で良ければ貰ってあげるわ」と返されコウヤは顔を赤く染めていた。
ロナは外で凄い荒れようだったと後でガストンから言われた。
とりあえずガストンとも、ちゃんと友達になれたのが嬉しくて仕方ないコウヤであった。
読んでいただきありがとう1日一人でも読んでくださる方がいるならば頑張ろうと思っております。(*≧∀≦*)これからもまだまだな、作者ではありますがよろしくお願いいたします
感想や御指摘、誤字などありましたらお教えいただければ幸いです。
ブックマークなども宜しければお願い致します。




