戦魔祭開催まで!1ヶ月
戦魔祭、つまりは祭りですね!
コウヤが魔界に来て8ヶ月が過ぎようとしたある日。マトンとコウヤはシアンの自室に朝早くから呼び出されていた。
「やぁ、朝から悪いねコウヤ。実はある祭りに君とマトンに参加して貰いたいんだぁよ。因みに拒否権はないんだぁねぇ」
シアンがそう言うとマトンは直ぐに頷いた。
「なら、頼んだよ二人とも怪我がないように祈ってるんだぁよ」
「え、えぇぇぇ!」
部屋を出るとマトンが直ぐに使用人を全員集めた。
「皆、すまない。今日からの次の月の日まで俺とコウヤは暇を貰う事になった」
皆が其れを聞くと歓喜の渦が沸き上がった。
「「「オオオォォォ!」」」
「頑張って下さい! マトンさん」
「凄いなコウヤ坊! がんばりなよ」
「『戦魔祭』頑張って下さい!」
コウヤの聞きなれない言葉、戦魔祭。
「マトンさん、戦魔祭って何ですか?」
「戦魔祭は簡単に言えば魔界の格闘大会だ。そして俺達はシアン様の代わりに出場する事になる」
ーー戦魔祭
10年に1度、魔界の王を決める為に行われる格闘大会。
シアンが魔界の王として君臨したのは今から240年前。当時、今のように祭り等とはしゃぐ者はいなかった。
戦魔祭は、200年前迄は、戦魔対戦と呼ばれ、力に自信の在る強者達が魔界全土で争い、最後の一人が魔王と闘い生き残った方が次の10年を魔王として魔界を支配する。
その為、魔界全土で多大な被害が起きていた。そんな魔界を当時支配していたのは、魔王バルザナム。
バルザナムは、その残忍な性格と強大な魔力を武器に魔界の強者と只戦うことを悦びとし生きていた。そんなバルザナムの600年にも及ぶ支配を止めた者こそ、シアン=クラフトロである。
シアンは、「戦魔対戦のルールを守る義理はない」とパンプキンと共にバルザナムの住む魔王城に奇襲を掛けたのだ。
二人は魔王城に待機していた魔界の軍隊を相手に暴れ魔王城にいた魔界兵を全滅させた。
パンプキンは悩む事無く、魔王城の中心を大鎌を使い叩き斬ったのだ。
流石のバルザナムも魔王城を斬られるなど想定外であり、怒りを露にパンプキンとシアンの前に姿を現した。
シアンは姿を現したバルザナムを見るなり剣先を向けると不適に笑みを浮かべた。
「魔王陛下、いきなりの訪問失礼いたします。私はシアン=クラフトロ。此方は我が友のランタン、時代を動かす為に参りました」
シアンはそう言うと軽く会釈をした。
「ふざけるな! 貴様ら生きて帰れるとは、思うなよ!」
バルザナムの怒り狂う姿を見てシアンは腹を抱えて笑って見せた。
「アハハ、失礼いたしました。魔王陛下が余りに在りきたりな言葉を口にしたものだったので、つい笑ってしまいました」
その言葉に更に激怒するバルザナム。
「魔王陛下、私は貴方を殺しに来たのです、楽しいお喋りは此処までに致しましょう」
シアンがそう言うとバルザナムは魔力を解放しようとした。しかし、既にその時パンプキンはバルザナムの後ろに移動していた。そして、一瞬でバルザナムの背中に斬りかかったのだ。
「な、ぎゃあぁぁぁ! 貴様ら…… 」
いきなりの背中に走った激痛、そしてバルザナムが後ろを振り向いたと同時に今度はシアンが宙を舞う。
バルザナムの頭を斬り落としたのだ。
「魔王としては三流だったねぇ、後は俺達に任せてあの世で寝ててください。御疲れ様でしたぁ~!」
その年、新たな魔王が魔界に登場する。そして、シアンは今の魔界を作るべく奮闘するのであった。
そして4回目の防衛を成功させたその日に戦魔対戦と言う言葉を戦魔祭としたのだ。
ーー
「つまり、シアンさんは200年以上も魔王をしてるの!」
「そう言う事になるな」
更にマトンはコウヤに重大な事実も話してくれた。
「シアン様が最初に魔界で行ったのは選別だ、争いしか好まない魔族達を一掃したんだ。そして選別が終わり、次に開拓を開始した」
元々山岳地帯だった魔界を真っ平らにしたのだ。
その際にシアンは島人達の力と知恵を借りる事になる。
元々魔界のすぐ近くに流れの島人の集落が出来ているのを知ったシアンが言葉も通じない島人達と長年、独自に交流を続けた結果でもあった。
シアンが魔王になると直ぐに島人達が作業の為に魔界に足を運びようになり、80年程の年月を要したが魔界を平地に変えたのだ。
親子2代の者も要れば3代で協力した者もいた。
其れからシアンはある計画を遂行する為に奮闘していた矢先、アサミ=クレストラ=ランタン襲撃の連絡が入る。
ランタンが魔界を旅立った5年後、島人や紅眼の為のある神殿が建造された。
島人と紅眼が二十歳を迎えると入る事の許される神殿の名は、“ タラーム神殿 ”中には“ 時の超越者 ” の欠片が置いてあり、島人達は其れを毎日手に取る事で2年程で不老になる。
シアンは人の寿命が皮膚の再生回数や老化によって起きるとしり、悩んだ末に神殿を建てることを決めたのだ。
「つまり? マトンさんも見た目よりずっと歳上なんですか?」
「そうだな、少なくとも50年は今の姿のまま生きている」
「50年!」
「だが、シアン様が魔王でなくなれば、この平和な魔界は無くなるだろう。その為に俺達は勝たねばならない」
コウヤは余りに重大な仕事を任された事に気づかされた。
ーー僕が負けたら…… 魔界崩壊なの! 責任ありすぎるよ。
「コウヤ、今から特訓だ。準備を整えたら出発するから準備が出来次第、食堂に来てくれ」
「はい!」
そう言うとマトンも自室に1度帰っていった。
「僕も用意しないと急ごう!」
慌ただしく鳴り響くコウヤの足音。戦魔祭迄の間をマトンと過ごす事になったコウヤは直ぐに荷物をリュックに積めるのであった。
シアンの余りに凄まじい計画が次々になされてきた魔界。
しかし、シアンが魔王で無くなれば全てが終わる!
さぁ!いよいよ戦魔祭編ですよ!
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