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道具って大事ですよ

 道具は大事というお話です。


 私の働いていた農園は、豚を10頭近く飼っておりました。

 肉を得る為と、糞を堆肥に使う為です。

 豚のエサは、レストランの残飯とバナナの茎を細かくした物を、ドラム缶で煮沸消毒して給餌します。

 灯油ボイラーなんていう近代施設はありませんでしたので、昔ながらに薪で沸かします。


 さて、この薪ですが、敷地に生えている木をチェンソーで伐採し、短く輪切りにし、それを更に斧で小さく割って使用します。

 今回取り上げる、泣きたくなる事態を引き起こした元凶は、この斧です。


 どう泣きたくなったのか?

 この斧、柄が太すぎたのです。

 なんせ、足場を組む鋼管(正確には違うと思いますが、何を利用しているのかは不明)に斧の先を溶接して作った、農園オリジナルの斧でしたから。

 

 鋼管って、太いです。

 握れない太さの柄の斧って、無茶苦茶作業性が悪いです。

 しっかり握れないから手が直ぐに疲れるので、斧が飛んでいきそうで危ないです。

 しっかり握れないから力も入れにくいですし、良い事は何もありません。

   

 因みに、私の実家のお風呂は灯油ボイラーで、薪も使用していました。

 ですので、斧なんて子供の頃から使っていました。

 斧に関しては素人ではありませんので、私の感想に妥当性はあると思います。


 太すぎる柄の斧は使い勝手が悪いです。

 製作者は斧も使ったことが無いのかと、疑うレベルです。

 もしかしたら、私の倍くらいの大きさの手の持ち主という可能性もありますが……


 そして更に、その斧には重大な欠陥があったのです。

 斧にしては刀身が薄すぎたのです。

 タダの厚い鉄板を斧状にして溶接しただけなんじゃ? と思うくらい、薄い刀身でした。


 斧の先が薄いと何が問題なのでしょう?

 木に刃が刺さるばかりで一向に割れないからです。

 

 簡単な例で説明すると、割り箸です。

 割り箸を割る状況をお考え下さい。

 普通、箸の先を指で摘み、それぞれを左右に広げ、割ると思います。

 ここで、爪楊枝入りの割り箸であれば、爪楊枝を箸の間に挟み、台の上で箸を逆さにし、爪楊枝だけを下に下げていく事によって割り箸を割って見て下さい。

 指で割るのに比べ、かなり力が必要ではありませんでしたか?

 というか、割りにくかったのではありませんか?

 爪楊枝をかなり下げていかないと、箸は割れないですよね?


 爪楊枝の代わりにボールペンを使ったら?

 爪楊枝の場合の半分もいかずに割る事が出来ると思います。


 薄い刃の斧も、これと似ています。

 爪楊枝の如く、かなり木に食い込ませないと木が割れないのです。

 しかも、薪は割り箸の様に切れ目は入っていませんから、一から刃を食い込ませ、割るのです。

 それはもう、深く木に刺さらないと割れません。 


 それに加え、刃が薄いと木に刺さります。

 割れなければもう一度斧を振りかぶらなければなりません。

 その為には一度斧を木から外さないといけません。

 木に深く刺さった斧は、なかなかに取れないのです。


 普通は、そこで刺さった薪ごと振りかぶり、エイヤッとばかりに一気に割ってしまいます。

 ですが、何せ相手は一抱え以上の大木を輪切りにしただけの木の塊です。

 斧ごとは持ち上がりません。

 手で転がして運ぶ様な大きさですから。

 それに刺さった斧を取る大変さは、中々です。


 それに加え、この斧、柄が重いだけで刃が軽いのです!

 普通の斧を使った事がある方なら分かると思いますが、斧って重力と遠心力を利用し、出来るだけ少ない力で作業する物です。

 普通の小さな薪であれば、斧を頭上に振り上げ、重力だけを利用して割る方法でもいいです。

 使う力は斧を持ち上げるだけ。

 後は重力に任せ、必要ならば加速度をつけ、割る。

 柄は、インパクトの時だけ強く握れば済む。 

 

 でも、柄が太いと、終始力を入れて握っていないといけないのです。

 柄の方が重いものだから、上手く遠心力を働かせる事も出来ないので、常に全力、といった感じなのです。

  

 それに、柄に刃を溶接しているモノだから、衝撃が直接手に伝わる仕様です。

 無茶苦茶です。 


 いや、本当に、この斧には泣かされました。

 道具って、大事です。

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