言い合い2
「守る」という言葉は、妖精の国に来たときから何度となく市原に言われてきたものだ。
そして何度もその言葉通り市原は美玲を守り、助けてくれた。さっきジャニファに捕まっていたときも、だ。
何故だろう、と今までのことを思い返して不思議に思った。
市原はここに来る前まではあまり話したこともない、そもそも意識なんてしたことがない、ただのクラスメイトのはずだった。
「どうして……?」
「だって俺、永倉のこと」
「……?」
意味深なところで途切れた言葉に息が止まった。市原にまっすぐ見つめられて、だんだんと顔が熱くなってくる。
「す……」
次に続く言葉は何だろう。まさか……と期待に胸が勝手にドキドキし始める。
でも市原はかれんが好きな人だから、こんな気持ちになったらいけないのに。
こんな赤い顔をしていたら、何を考えているのかが市原にバレてしまいそうで怖かった。だけど、気のせいか市原の顔も赤い気がした。
「はいはい二人とも、そこまで。けんかはもうおしまいにしよう、ね?」
突然フレイズが二人の間に入って距離を開けさせた。
どうやら回復が終わったらしい。麻痺も解けてポワンに回復してもらった場所から二人の言い合いを止めるために急いできたようで肩で息をしている。
「すっごく心配だって思ってんの!みんなで帰る約束しただろ?だから無茶されると困るし!」
フレイズの手を退けて早口に市原が言葉の続きを言った。
「はぁあ?うちなら全然大丈夫だし!余計なお世話だし!」
「もー、ケンカしてる場合じゃないって」
フレイズが二人の間に立って物理的に距離を置かせた。
「だから、ケンカなんかしてないし!」
「だって二人とも顔が真っ赤だよ。一旦落ち着いて、ね?」
「赤くなんかなってねーし!」
「そうだよ、フレイズの勘違いだし!」
そう言いながらも美玲も市原も頰を隠すように手で包んでいる。
「そうなの?」
「そうなの!もー、ジャニファ追いかけなきゃなのに!」
「あ、おい永倉、待てよ!」
フレイズの後ろで心配そうに見ていたポワンにも聞こえるように大きな声でそれだけ言うと、美玲は全速力でかれんたちの方へと走りだした。





