言い合い
強く掴まれた手首を引かれ、美玲は強引に市原の方へと体を向かせられた。
「行くな。永倉はここにいろ」
肩をつかむ手から逃れようとするが、全く動けない。
「なんでよ!てか、離して!」
「いいから聞けよ。お前の水の力はジャニファと相性が悪すぎるんだよ」
「なんでそんなことわかるの?!」
妖精でも魔法の専門家でもないくせに、と市原を睨むと、市原は美玲の強い視線なんて気にならないかのように、美玲の肩に乗せた手に力を入れた。
「水属性は雷属性に弱いってのは、ゲームでは常識だからな」
「は?」
何かすごい理由があるのかと思えば、そんなことかと力が抜けた。
「はあ?意味わかんない。これゲームじゃ無いし。それに、そんなこと言っている場合じゃないでしょ!かれんたちに何かあったらどうするの!」
肩をつかむ市原の手を振りほどいてかれんたちの元へ向かおうとするが、足の速い市原にはすぐに追いつかれてまた捕まってしまう。
「待てよ危ないって!濡れた手でコンセントに触るなって言われるだろ!あれと同じ。だから雷を使うあいつと水のお前は相性悪いんだって!」
「そうかもしれない……それでも、何もせずに見ているだけなんてできないよ!またかれんたちが連れて行かれたら嫌だもん!!」
女王を目覚めさせて一緒に帰るとみんなで決めたのだ。そして今、うまく力が使えなかった二人は紅の泉で力を使えるようになって戻ってきた。
あとは女王を目覚めさせるだけなのに。
ジャニファは美玲を常夜国に連れて行く気は無いと言ったが、今まで操っていた二人は連れて行く気があるかもしれない。
すでにジャニファはかれんのすぐそばまで辿り着きそうだ。
「じゃあ俺のそばから絶対離れるなよ!いいな!」
「は?何でよ!」
「永倉を守るために決まってるだろ!」
怒鳴り返された市原の言葉を聞いた時、美玲の中の時が一瞬止まった。
「あたしを、守る?」
「そうだよ」
ぶっきらぼうなその言い方にぽかんと口を開けてまじまじと市原を見ると、乱暴な言葉とは違うその真剣な表情にどきりとした。





