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救出

 ジャニファが開くよりも先に開いたドアの向こうにいたのはかれんと志田だった。


「ミレイ様!まあ、なんてこと!!」


 志田の後ろにいたポワンは美玲が捕まっている様子を見ると蒼白になって今にも倒れそうになっている。


「美玲!」


「火の娘と地の少年か……!」


 二人に注意を向けたジャニファの隙を市原は見逃さなかった。


風射撃ヴェントス・シュート!」


「何っ?!」


 市原が放った風の矢はジャニファの腕に命中した。


 その痛みで美玲を拘束する腕の力が緩み、矢を放った後すぐに風の力で跳躍してきた市原によって抱えられて、ようやく美玲はジャニファから解放された。


挿絵(By みてみん)


 そして美玲の無事を確認したフレイズは落としたままの剣を素早く拾うと、ジャニファが腰から下げている、記憶の書が入っているであろうカバンをめがけて右下から左上に向けて薙いだ。


「欲張りはいけないな、松の妖精よ」


 だがその剣はジャニファの短剣によって阻まれた。


「大丈夫か、永倉」


「うん……ありがと」


 ジャニファから離れたところに降ろされたが、修練場のことを思い出して市原の顔がまともに見られなかった。


 赤くなった顔を誤魔化すように美玲は扉の方に目を向ける。


 かれんに赤い顔を気付かれていないか心配だったが、かれんは想い人の市原よりもジャニファを凝視していた。


「永倉、あのさ……」


 何か言いたそうにした市原の声を遮ったのは、鋭く低い金属音だった。


「くっ……!」


 それは風の矢を受けた痛みがあるはずなのに、ジャニファは余裕の笑みを浮かべてフレイズの剣をはじき返した音だった。


「やられたのが利き手じゃなくてよかったよ」


 ジャニファは姿勢を低くして下からフレイズの剣を突き上げ、がら空きになった腹部に蹴りを入れようとした。


 フレイズは鞘をベルトから素早く抜くと、ジャニファの蹴りを受け流し、まるで二刀流のように鞘を扱い、ついで繰り出されたジャニファの流れるような斬撃をかわしていく。


 そしてジャニファは短剣だけではなく、格闘技のような動きも使い、その身軽さもあってフレイズを翻弄する。


 まるで二人の戦いは時代劇のクライマックスで始まる大立ち回りのようだ。


針葉斬撃ルチル・フォリウム・アクセント!」


星円鏡ステラ・ミロワール


 連続して繰り出される突きを、ジャニファは円形の盾を出して防ぐが、扉を背にしたフレイズが強打を繰り出しどんどん扉から遠ざかっていく。


「くっ……」


「きみをこのまま帰すわけにはいかない!」


「ふふ、出来るものならやってみろ!」


挿絵(By みてみん)


 盾が消え、鍔迫り合いになって二人は至近距離で睨み合う。


 そしてジャニファはフレイズの言葉に不敵に笑うと短剣を払い、互いに距離を取った。


 だが二人はまたすぐに距離を詰めて激しい斬り合いをはじめた。


「すごい……」


 ジャニファと戦っているときのフレイズは、普段の物腰の柔らかな様子からは想像もできないくらい荒々しく、物々しい気配をまとっている。


 アイーグと戦っていた時とは全然違う。


 それほどジャニファは手強いということなのだろう。


 二人の戦いに手を出してはいけない。


 そんな重苦しい空気が四人にただの傍観者としていることを強制させていた。


 その時、ジャニファがちらりと扉を確認したのを美玲は見ていた。


 かれんたちが入ってきてから扉はまだ開いたままだった。


 ジャニファは逃げる気だ。


「かれん、閉めて!扉、早く!」


「あ、うん!」


 慌てて叫んだ美玲の言葉に、固唾を飲んで戦いを見ていたかれんたちは慌てて扉を閉めようとした。


「そうはさせるか!」


 ジャニファは後ろに跳び、フレイズから距離を取ってから黒い羽を羽ばたかせ、扉に向かって飛び立った。


「待て!」


「松ヤニみたいにしつこい奴だな!雷斬撃トニトルス・グラディウス!」


 短剣に雷をまとわせ、長剣に変えたジャニファが、床を蹴り飛び立ったフレイズに向けて衝撃波を放った。


「っく!」


 飛び立った直後でかわすこともできず、まともにそれを受けてしまったフレイズは墜落してしまった。


「俺は、大丈夫……」


 駆け寄ろうとした美玲たちに手のひらを向けて大丈夫だと静止するが、雷をまとっていた衝撃波のせいで痺れがあるのか、フレイズはまともに立つことができないようだ。


「フレイズ!」


 たまらずポワンが志田の後ろから飛び出してフレイズの元に向かう。


 途中ジャニファとすれ違ったが、ジャニファは逃げることを優先にしているのか、彼女には目もくれずに一目散に扉を目指していた。


「フレイズ!」


 ポワンは鞘を支えにやっとの事で膝で立っているフレイズの傍に座り、労わるように背中に手を当てた。


「ポワ……ン……」


「もう、無茶しないでよ」


 怒るポワンにフレイズは苦笑した。


「そういう……わけにはいかない。俺が、騎守ら……ないと……」


 力ない笑みを浮かべながらそう言うフレイズにため息をついて、ポワンは目に浮かんだ涙を拭うと、これ以上涙が溢れないように表情を引き締めて美玲と市原を見上げた。


「フレイズはこのポワンにお任せを。蓮花王冠ロータス・クラウン


 そういうとポワンはフレイズに治癒術を施しはじめた。淡いピンク色のハスが現れ、フレイズを包み込み、周囲を光が舞う。


「ミレイ様とナイト様はあの妖精を止めてください」


 フレイズが扉から引き離したのに、ジャニファは長い通路を飛び、どんどん扉に迫っている。


 扉はすでに閉じているが、彼女は力ずくで開けようとするだろう。かれんと志田が危ない。


「そうだね、記憶の書を取り返さなきゃ……」


「永倉、待て!」


 その時、駆け出そうとした美玲の手首を市原が掴んだ。


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