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向き合う決意

 志田の恐怖の原因はもしかして自分のせいかもしれない、と思っていたかれんだったが、見せられた映像はかれん自身にもショックが大きかった。


 敵から身を守るためとはいえ、志田に怖い思いをさせたのが自分だった確証を得てしまったからだ。


「ごめんね……、志田くんのも、ここの焦げたところも、石板が壊れていたのも全部、私のせいだった……ごめんなさい」


「久瀬……気にするなよ。敵を倒すためだったんだから」


『カレンよ。そのように自分を責めるな。そなたの火の力、わらわにはとても心地良かった。また共に力を使って見たいものよ』


 志田と炎帝イフリートのなぐさめに、かれんは力ない笑みを浮かべ、弱々しく「ありがとう」と言い、ため息をついた。


「あのあと、俺たちはどうなったんだろう?」


 ここにいるということは、あそこで命を落としたわけではないのは確かだ。あの炎がどうなったのか、かれんも知りたいと思った。


 落ち込んでいたって仕方がない。かれんが引き起こしたことの事実は変わらないのだから。


『みるか?』


 炎帝イフリートの問いに、その赤い瞳をまっすぐ見つめてかれんは頷いた。


「俺も知りたい。あの火を見るのは怖いけど、知らないといけない気がする」


 自分たちは以前からこの世界で力を使っていたというが、何故その記憶がなかったのか。


 今までどうしていたのかを知りたかった。そのきっかけが今回見たものの中にあるのだとしたら。


『良かろう、では心してみよ』


 炎帝イフリートの言葉にかれんと志田は頷き、再び光の中に意識を向けた。





 そのころ、見えない壁の向こうでは火と土の部隊長二人が、最強といわれるランドラゴンーREXーに苦戦していた。


 自分たちよりも何倍も大きく、岩のような硬い鱗に覆われているその体にダメージを与えるのは簡単なことではない。


「大地よ目覚めよ!土塊射撃グレイブ・ショット!」


 ジルビアの放った矢が地をえぐり、鋭く尖った岩がランドラゴンーREXーの腹部につきあげた。


「効くといいですか……毒射撃ポイズン・ショット!」


 その塊は固い皮膚に阻まれ、よろけさせることしかできなかった。しかしその一瞬の隙をついて再び今度は毒を持った矢を放つ。


 巨体の中で一番柔らかそうに見える腹部に刺さりはしたが、毒が効いた様子は一向に見えず、ランドラゴンーREXーは威嚇するように、ジルビアに向けて大きな唸り声をあげた。


「グリルさん、やっぱりダメです。あれに毒は効きません……!」


「そうか、ダメか」


 毒で少しずつ体力を削ることも出来ない。


「ここには火と土の要素がたくさんあるが、ここまで歯が立たないとは……」


 四元騎士団の部隊長が二人もそろってなさけない、と拳を強く握りしめた。


「あぁ、もう、また来ます!ぼさっとしないでくださいグリルさん!」


「っなに?!」


 ドスドスという地響きを立て、ランドラゴンーREXーが二人に突進してくる。


 二人は間合いを取るために距離を開けようと走るが、大きな足ではあっという間に崖際まで追いつめられてしまった。


 足元にはマグマが熱気を噴き上げている。


「騎士団隊長を担う我々を苦戦させるとは、さすがランドラゴンーREXーなのです……」


「飛ぶぞ!」


 二人は羽を羽ばたかせ、飛び上がった。弓使いのジルビアが距離を稼げるように、グリルが前に出てランドラゴンーREXーの顔面に向けて飛びかかった。


 グリルは左右に素早く飛び回って撹乱し、ランドラゴンーREXーを惑わせる。そのうちにジルビアは一番遠い石柱の影に身を隠し、矢をつがえてランドラゴンーREXーに狙いを定めた。


地精霊鐘ノーム・チャイム


 ランドラゴンーREXーの足元に打ち込んだ矢はズブリと地中に潜り込み、揺れが起こったと思ったら〈炎帝の微笑み〉が茎を伸ばし、ランドラゴンーREXーの太い足に絡みついた。


「ジル、ナイス!火精霊輪サラマンダーリング!」


 身動きが取れなくなったランドラゴンーREXーへと向かって、火精霊サラマンダーの力を集めた炎の拳を鼻面に向けて振り下ろした。


「くそ、硬いな……だが面白い、徹底的に叩いたらぁあああ!!!!」


 その硬さにうんざりしながらも、炎を纏った拳を連続で叩き込み、ついにランドラゴンーREXーは地面に倒れた。

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