遮るもの
しばらくしてまぶたの向こうに明るさを感じなくなり、かれんは恐る恐る目を開いて辺りを見回した。
「カレン、サトル、大丈夫ですか?!」
目を開くと駆け寄ってきたジルビアが、何かに阻まれ、額をうちつけ、そこを抑えてうずくまった。
勢いよくぶつかったため、〈ポヨーン〉という大きな音がしてそれに驚いたグリルはゆっくりとその場所に触れてみた。
「いたた〜……、何なのです?」
「何かあるな」
ペタペタと触るそこには、透明な、目に見えない壁のようなものがあるようだ。
声は届くが進めない、透明な壁は叩いても壊すことができるような手応えはなく、間の抜けた音だけが響く。
「グリルさ〜ん、その音、力が抜けるからやめてくださいなのです〜」
「む……ふたりとも、離れてろ」
その見えない壁が立てる音を少し面白がっていた様子のグリルは我に帰ると、取り繕うように咳払いをして、かれんと志田に指示を出した。
「灼熱拳撃!」
そして二人が言われた通りに見えない壁から離れると、炎を纏った拳でその壁をたたきこわそうとしたが、ひときわ大きな間抜けな音がするだけで壊れる様子はない。
「何だよ、これ?!」
連続で拳を叩き込んでも〈ポヨンポヨン〉とバネが弾む時のような音を立てるだけある。
「あーもう、この、気が抜ける!!」
やけくそのように叩くと、ひときわ大きな音で〈ボンヨヨヨヨ〜〜〜ン〉と響いただけだ。
『老公、聞いたか?あの音はやはり愉快であろう?』
ククク、と少し低い女の声が突然神殿内に響いた。
『小娘、かようなことは悪趣味と言うのだ』
次いで聞こえてきたのは、やれやれ、と苦虫を噛み潰したように若い女をたしなめる、しわがれた男性の声だ。
「炎帝……?」
「地王……なのです?」
壁の向こうのグリルとジルビアが、かれんと志田の背後に向けて、驚きに目を見開いている。
彼らの視線を追って振り向くと、そこには炎を身に纏い宙に浮いている炎帝と、その足元でのんびりとあくびをする地王の姿があった。





