見つかったもの
かれんと志田の二人がやってきたことに気がつくと、グリルとジルビアは花をかき分けていた手を止めて立ち上がった。
「おやおや、サトルはもう大丈夫なのです?」
「まだ休んでいてもいいんだぞ」
グリルとジルビアの言葉に志田は被りを振って、二人からの心配の声に照れたように頭をかいた。
「大丈夫です、それに人数が多い方が早く見つかるし」
グリルの言葉に少し引っかかるものを感じたかれんだったが、確認する間も無く志田に「な?」と同意を求められ、慌てて首を縦に振った。
すると志田の言葉にジルビアが何かを思いついたようにポンと手を叩いた。
「人数……ハッ!そうでした!!いい方法がありました」
「痛い痛い、何だよ」
いいアイデアが思いついたことで興奮したのか、グリルの肩をバシバシと叩きながら言うジルビアの目はキラキラと輝いている。そしてグリルは連打を繰り出してくる細い腕を止めて彼女に言葉を促した。
「地精霊たちに頼むのです!そうすればすぐに見つかります」
腕を止められたのでずいっとグリルに顔をよせ、いいアイデアでしょう?と言っているその顔は少し鬼気迫る雰囲気で怖かった。
「なら、はやくしろよ」
「はい〜!さーて、地精霊ちゃんお願いしますよ〜」
グリルから手を離されたジルビアはウキウキと手をこすり合せると、その手のひらを地面にピタリとくっつけた。
しばらくの間、静けさが辺りを漂う。辺りからは溶岩の中に岩が落ちる音しか聞こえてこない。
「ふふふ、どうして早く思いつかなかったのでしょうね……みつけました!あそこです!地精霊!」
不敵な笑みを浮かべて叫ぶと、まるで「ここにある」と知らせるようにひときわ大きな花の茂みがガサリと音を立てた。
そして花がお辞儀をするように身を低くすると、そこには黄色と赤の精霊石がはまった石板が倒れていた。
その石板には所々に黒く焦げたような煤けた跡が付いているのが見える。
「ありゃ。倒れてその上に花が増えたら見つからないよな」
苦笑してグリルが石板を起こして地面に残っている折れた部分に載せると、それをジルビアが地精霊を使って再び固定した。
「これで私たちは何をするんですか?」
「力を使えるようになるにはやっぱり、実戦が一番だからな」
かれんの質問に手についた土を払いながらグリルは爽やかな笑みを浮かべた。
「じっせん……ってなんだ?」
「戦うってこと?」
「大丈夫ですよぉ、グリルさんと私もいますから〜」
まるでおばちゃんのように手を振りながらジルビアがニコニコといい、かれんと志田の不安を無くそうとする。
「ここの守りに使われている、ランドラゴン達とちょっと戦うだけですから」
「ラン……ドラゴン……?!」
「無理、無理ですよ!」
ジルビアが親指と人差し指を丸め、「ちょっと」という幅をしめしたが、ランドラゴンという名前にかれんと志田はちぎれそうなくらい思いっきり首を振った。
ネフティが連れていたような大きなものと戦うなんて、力もまともに使えないのにできるわけがない。
「危なかったら俺たちが守るから、まあ頑張れ」
「えぇ〜〜〜っ?!」
白い歯を光らせ、親指を立てながら爽やかな笑みを浮かべるグリルたちにかれんたちの不服の声は聞こえないようだ。
「火精霊よ来たれ」
「地精霊よ来たれ」
グリルの言葉に赤い石が、ジルビアの言葉に黄色い石が反応して光りだし、その輝きはだんだんと強くなってくる。
「あらら?なんか変ですよグリルさん……」
「あ、ああ……いつもならここで……」
その光に反応するように、かれんのバトンと志田のグローブについている精霊石も強い光を放ち始めた。
「え?何、これ……?!」
「とにかく続けましょう……我らが力を鍵として、小さきものの力を大きなものに」
「冷たきものを熱きものに、今こそここに、姿を現したまえ!」
そしてジルビアから言葉を継いだグリルが命じると、まるで運動会のスターターに使うピストルのような音に驚いたかれんはとっさに耳をふさいだ。
「グリルさんやっぱり、変……っ!」
「ジル、カレンとサトルを守れ……っ!」
ふさいだ耳の向こうからグリルとジルビアの焦る声が聞こえてくる。
だがやがて目を開いていられないないほどの光が神殿内にあふれ、かれんと志田の二人は強く目を閉じた。





